NIMSや東北大学、東京大学などの共同研究チームは29日、リチウムイオン電池用正極材料が微生物と自発的に集合し、電源を一切用いずにリチウムイオンを選択的に回収できる新しい原理を発見したと発表した。微生物がマイクロサイズの電源の役割を担い、海水のような低濃度条件でも数時間以内に95%以上のリチウム回収が可能で、従来の技術よりも大規模化や環境負荷低減が期待される。なお研究成果は、同日にNature Communications誌にて掲載された。
研究チームは、リチウムイオン電池正極材料λ-MnO2(ラムダ型二酸化マンガン)のナノ粒子と、自然界に広く存在する細菌Shewanella oneidensis MR-1(シャワネラ・オネイデンシス MR-1)を組み合わせると、両者が自発的にミリメートル規模の凝集体を形成し、微生物が正極材料へ電子を供給する三次元的な「反応場」として機能することを発見した。これにより、配線も電源供給もなしにリチウムイオンを正極材料の結晶構造内に取り込むことに成功している。

微生物が電源(電子供給源)の役割を担うことで、「電源が不要」「低濃度リチウムも回収可能」「広面積電極が不要で省スペース」という利点が生まれる。また従来の電気化学的システムに匹敵する速度で、電源を使わない蒸発法やイオン交換法などよりも、処理時間で桁違いに優れた性能を示すという。さらに既存技術と同等の経済性を保ちつつ、水資源消費に伴う環境負荷を低減できるも同研究の大きな成果といえる。
同研究は、二次元的な構造の電極を用いた従来の反応とは異なり、材料と微生物が自ら作る三次元の凝集体を反応場として利用するため、原理的に大規模化が可能。塩湖蒸発法に伴う水資源・環境への大きな負荷を回避しつつ、増大するリチウム需要に応える持続可能な資源確保の選択肢として、同技術の発展も見込める。
なお、異なる電池系のインターカレーション材料はナトリウムやマグネシウムなど他の金属イオンも結晶構造内に取り込むことができるため、手法を応用することで多様な金属資源の選択的回収や、機能性材料の合成・処理などの材料科学における幅広い応用展開も期待できる。
(IRuniverse K.Kuribara)