7月15日から東京ビッグサイトで開催されているテクノフロンティア2026(モータ技術展)において、大同特殊鋼とニッパツ(日本発条)は、電動車(EV・HEVなど)の駆動用モーターに向けた次世代ローターを共同出展した。最大のトピックは、調達リスクのある重希土類(Dy:ジスプロシウムなど)を完全排除した大同特殊鋼の磁石と、ニッパツのローター構造技術の融合だ。
従来比約1.5倍となる「約3万rpm」の超高回転を実現した高出力SPMローターに加え、モーター廃棄後のリサイクル性までを見据えた環境対応型のIPMローター技術が公開され、次世代モビリティの課題を一挙に解決するソリューションとして注目を集めている。

SPMローター:材料ロスを極限まで抑え、CFRP補強で3万rpmの超高回転へ
展示の目玉の一つが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いたSPM(表面磁石型)ローターである。

一般的に、SPMローターに使用される磁石はブロック形状で製造された後、ローターに貼り付けるために機械加工で円弧形状に削り出される。しかし、この機械加工は材料ロスが非常に大きいという課題があった。 そこで大同特殊鋼は、形状および磁気回路設計において高い自由度を持つ独自の「重希土類フリー熱間加工磁石」を提案。使用形状(三日月型など)に近い形で直接製造するニアネットシェイプ成形により、材料ロスの大幅な削減を実現した。
さらに、この熱間加工磁石をニッパツのCFRPによる補強技術と組み合わせることで、遠心力に対する強固な耐性を獲得し、約3万rpmという過酷な高速回転をクリアした。両社の技術の特長を最大限に発揮できるこの構造により、従来品を凌駕するモーター出力を実現。駆動用モーターのさらなる小型化と、モビリティのエネルギー効率向上に道を拓くものとなっている。
IPMローター:リサイクル時のCO₂削減と歩留まりを両立する「板ばね固定機構」
今回の共同開発でもう一つ特筆すべきは、廃車(ELV)後の資源循環プロセスを見据えた画期的なアプローチである。

一般的に、IPM(磁石埋込型)ローターに使用される磁石は、スロット内に樹脂で強固に固定されている。そのため、リサイクル時には樹脂を除去するための加熱工程が必須となり、多大なCO₂が排出されることが業界共通の環境課題となっていた。
ニッパツはこれに対し、樹脂の代わりに「板ばね」の力で磁石を固定し、使用後の磁石を容易に取り出せる新構造を考案した。しかし、板ばねを取り付けるためには磁石側に溝加工を施す必要があり、加工に伴う新たな材料ロスが発生してしまう。 このジレンマを解決したのが、大同特殊鋼の熱間加工技術である。熱間加工磁石の異方化工程(熱間成形プロセス)中に、同時に溝形状を付与する独自技術を開発。これにより、従来工程を大きく変更することなく溝付き磁石の製造が可能となり、生産効率を維持したまま材料ロスの大幅な低減に成功した。
サプライチェーン強靭化とサステナビリティの完全な両立
地政学的リスクに晒される重希土類からの脱却は、自動車産業のサプライチェーンにおいて喫緊の課題である。大同特殊鋼が打ち出す「脱・重希土類」の熱間加工磁石と、ニッパツの高度なローター技術のシナジーは、単なるモータースペックの向上にとどまらない。
歩留まりの改善による製造コストの抑制、高出力化によるモビリティの省エネ化、そして板ばね構造によるリサイクル時のCO₂削減——。資源の採掘から廃棄・再利用に至るまで、真にサステナブルなモビリティ社会を実現するための基盤技術として、業界内外から熱い視線が注がれている。