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中国のネオジム磁石メーカーは対日規制にどう対応しているか——テクノフロンティア2026

2026/07/16 16:33
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中国のネオジム磁石メーカーは対日規制にどう対応しているか——テクノフロンティア2026

7月15日から17日まで東京ビッグサイトで開催されているTECHNO-FRONTIER 2026(モータ技術展)の会場で、複数の中国系磁石メーカー関係者に取材した。焦点は、中国政府が推し進める中重希土類の輸出管制が、対日輸出の現場でどう運用されているかという点だ。政策の建前と、現地の実務運用との間には、想像以上のギャップがあった。

中国が握る磁石生産の8割

会場を回ると、出展していた磁石メーカーの多くが中国系企業か、中国国内に工場を持つ企業だった。日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公開する分析資料によれば、ネオジム磁石の世界生産量に占める中国のシェアは約84%、日本は約15%(信越化学工業・TDK・プロテリアン〈旧日立金属〉・大同特殊鋼など少数の企業が担う)とされる。

一方で、日本にも見るべき実績がある。経済産業省の資料によれば、電動車の駆動モーター(磁石そのものではなく完成品モーター)の世界生産では、2020年時点で日本企業が台数ベースで約半数のシェアを占めているとされる。磁石材料そのものの生産規模では中国に大きく水をあけられているものの、川下のモーター製造では一定の存在感を保っている。なお、ネオジム磁石そのものはもともと住友特殊金属が1982年に発明した技術である。

中国側の主要磁石メーカーとしては、金力永磁(3.8万トン)、正海磁材(3万トン)、中科三環(2.5万トン)、寧波韻升(2.1万トン)、大地熊などが挙げられる。いずれも上場企業で、生産能力は各社の開示資料に基づく。

「緑・黄・青」で運用される許可証

中国商務部・海関総署は2025年4月、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの中重希土類7品目を輸出管制の対象に加えた。2026年1月6日には対日デュアルユース品目の管理をさらに強化、2月24日には三菱重工業や川崎重工業の関連会社を含む日本の20社・団体を禁輸・監視対象に指定した。日本貿易振興機構(ジェトロ)の集計によると、2026年5月の対日レアアース磁石輸出量は123トンで、4月の188トンから34.6%減少。重希土類磁石の輸出はゼロが続いている。

しかし現場の実態は、規制の建前ほど一様ではない。会場のJMI(株式会社ジャパンマグネット)ブースに掲示された特性表では、ネオジム磁石の各グレード(保磁力Hcjと残留磁束密度Brの組み合わせで決まるN35〜N56系列)が3色に分類されていた。同じ残留磁束密度でも、要求される保磁力(≒耐熱性)が低いグレードは重希土類を使わずに量産できる「緑」、より高い保磁力には重希土類を用いた従来工程が必要な「黄」、そして粒界拡散技術によって重希土類の使用量を抑えつつ高い保磁力を実現できるが厚みに制限がある「青」に分かれる。

実際、会場で回った中国系企業のブースの多くが同様の特性表を掲示していた。新技術のアピールよりも、コンプライアンスと物流の実務対応こそが各社にとって今の最大の関心事であることがうかがえる。

別の取材先も輸出許可の運用を同じ緑・黄・青の3区分で説明していた。それによれば、重希土類を含まない緑区分の製品は輸出管制の対象外で無許可のまま輸出できる。従来工程で重希土類を使う黄区分は申請自体は可能だが、実際には許可が下りることがほとんどない。粒界拡散技術を用いた青区分は、その技術に対応した特殊な一括許可の対象になるという。両者の証言を重ねると、輸出管制の可否は事実上、磁石の重希土類含有量と製造工程によって決まっている構図が浮かび上がる。

さらに、規制対象外のの製品であっても、税関が該非判定のために最大3カ月ほど留め置いて検査するケースがあるとの証言も得られた。合規品であることは、通関の速さを保証しない。

規制の矛先も一定ではない。担当者によれば、当初は米国・インド・フィリピン向けの規制が最も厳格で、対日輸出はむしろ円滑だった。しかし現在は対日規制が最も厳格だという。対米関係は昨年末の首脳会談後にやや緩和したとされる。担当者らは、規制の運用の厳しさが両国間の政治情勢に強く左右されると口をそろえた。

規制下でも「増収」の逆説

興味深いのは、複数の担当者が業績への影響について「増収」と証言した点だ。理由として挙げられたのは、規制発動前の駆け込み在庫の積み増しと、通関ノウハウを持たない中小の非専業輸出企業の取引からの脱落だった。

対日ビジネスに占める比率が約20%という大地熊の担当者は、「新技術の開発は容易ではないが、日本向けの影響はそれほど大きくない」と話す一方、「以前は原材料が含まれていないと申告すれば通関できたが、現在は二次検査が必須になった」と運用の厳格化を指摘した。正海磁材の担当者は、輸出許可は規定を満たせば取得可能だが、資質を欠く小規模企業は取得できないケースがあると説明。大企業への実質的な影響は限定的だとの見方を示した。

一方で、顧客対応は二極化している。業界大手には優先的に資源を配分して関係を維持する一方、中堅以下の顧客は十分な供給を受けられず、重希土類を使わない設計への切り替えを迫られている。ただし、この転換には代償も伴う。ある担当者は「性能上は確実に影響を受ける」と明言した。

なぜ重希土類が手放せないのか

高性能磁石が重希土類を必要とする理由は、耐熱性にある。研究機関の発表によれば、通常のネオジム磁石は温度が上がると保磁力が急激に低下する。車載駆動モーターや風力発電のように使用時に200℃近くまで温度が上がる用途では、ジスプロシウムやテルビウムの添加により耐熱性を確保する必要がある。

会場で取材したJMI(株式会社ジャパンマグネット)の担当者によれば、駆動モーターやエアコン用圧縮機は冷媒の還流によって磁石の温度が130℃程度まで上昇する。重希土類が不足した磁石ではこの温度域での性能が不十分になり、磁力低下が起きるという。同様の課題は防衛・航空宇宙分野にも及ぶ。米議会調査局(CRS)が2013年に公表した報告によれば、F-35戦闘機1機あたりのレアアース使用量は約417kg(920ポンド)とされるが、近年の分析ではこれより少量とする推計もあり、正確な数値には幅がある。

日本の需要側の脆弱性を裏付けるデータもある。経済産業省が2023年に策定し2025年6月に改定した「永久磁石に係る安定供給確保を図るための取組方針」によれば、ネオジム磁石の世界生産量に占める日本企業のシェアは2021年時点で約15%、ドイツが約1%で、残りのほとんどを中国企業が占める。分離・精製工程まで含めると中国のシェアは90%を超え、対策を講じなければ2025年には日本企業の世界シェアが10%を下回ると同方針は予測していた。国内での用途は自動車(43%)、産業機械(23%)、HDD(20%)、家電(4%)の順に分布する。一般社団法人新金属協会によれば、2023年の日本国内のネオジム・プラセオジム需要は前年比8.5%増の5229トンだった。

経産省は同方針で、2030年までに国内需要を満たす生産能力を確保し、磁石リサイクル能力を2020年比で倍増させ、電動車用の重希土類フリー磁石を開発するとの目標を掲げている。こうした政策的な後押しは、大同特殊鋼をはじめとする日本メーカーの技術開発とも軌を一にする。

日本の対抗技術、中国の代替研究

日本側もこうした調達リスクへの対応を進めている。大同特殊鋼とニッパツは、TECHNO-FRONTIER 2026会場で、重希土類を完全に排除した熱間加工磁石を用いた次世代EV向けローター技術を共同展示した。

関連記事:大同特殊鋼×ニッパツ:重希土類フリーと「資源循環」を両立する次世代ローターの衝撃――テクノフロンティア2026

要点だけ記せば、熱間加工磁石の結晶粒をナノ〜サブミクロン単位まで微細化することで重希土類なしに耐熱性を確保し、材料ロスを抑えるニアネットシェイプ成形と組み合わせて、従来比1.5倍となる約3万rpmの高速回転を実現したというものだ。大同特殊鋼は5月には、ネオジム系より使用希土類が少ないサマリウム-鉄-窒素(SmFeN)磁石材料のラインアップも拡充しており、2030年に年産200トン規模の展開を目指すとしている。

こうした動きについて、取材に応じた中国側の担当者は「日本の磁石メーカーも重希土類フリー製品を研究しているが、生産能力が小さく需要増に追いつかない。原材料調達も依然中国に依存している」との見方を示した。中国側でも2010年代からMnAl系やMnBi系、フェライト系の希土類フリー永久磁石の特許出願を進めてきたが、ある担当者はその狙いを「規制対象国以外に売るための選択肢を増やすため」と説明した。同担当者は、ネオジム磁石の発明からすでに40年以上が経過している技術であり、短期間で大きな技術的ブレークスルーが起きる余地はそれほど大きくないとの見方も示した。

日本はこのほか、南鳥島沖の深海資源開発でも中国依存の低減を模索している。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年2月、南鳥島の排他的経済水域内、水深約5700メートルの海底からレアアースを含む泥の採掘に世界で初めて成功した。もっとも、精錬能力の国内再建や採算確保、中国側の牽制といった課題が残り、商業化までの道のりは平たんではないとみられる。

執行の現場:厳罰と免除の間

中国国内では、規制導入以降、業界関係者の間で運用をめぐる議論が絶えず、実際の処罰も継続的に発生している。輸出管制の執行実態を示す一例として、仏山税関は2026年5月、ジスプロシウムを1.2%含む永久磁石を許可なく輸出したとして、超硬材料メーカーの奔朗新材に91万元の罰金を科したことを明らかにした。

広東省東莞市のある電子部品メーカーでは、従業員が6.05kgのサマリウムコバルト永久磁石材料を携帯で出境させたとして摘発された例も報告されており、規制の対象は大口の輸出貨物に限らないことがうかがえる。

より具体的な事例もある。ある磁石メーカーは2025年5月7日から8月7日にかけて、磁鋼を郵送で中国台湾へ複数回輸出した際、品名を「布地」「鉄片」などと偽って申告した。税関の調査により、実際の貨物はN38H(570枚)、N42H(22700枚)、N35UH(1020枚)、サマリウムコバルト磁鋼(500枚)の4種類で、いずれも規制基準を超えるジスプロシウムまたはサマリウムを含み、両用物項輸出管制リストの対象だったことが判明した。違法取引額はわずか36507.11元だったが、出口管制法第34条は違法取引額が50万元未満の場合でも50万〜500万元の罰金を科すと定めており、税関は同社に50万元の罰金を科した。実際の取引額の13倍以上に相当する額であり、偽装申告による密輸と認定された場合、罰金が貨物価値と切り離されることを如実に示している。

コンプライアンス関連の情報整理によれば、2026年6月だけでも地方税関が公表した稀土永久磁石関連の処罰は複数件に上る一方、軽微な違反で企業が是正に協力した案件では処罰が科されないケースもあるという。規制の執行には、相応の幅があるとみられる。

取材に応じた中国企業は一様に、円滑に製品を輸送できる調達・物流ルートを持つ企業こそが、いまの業界で優位に立つと口をそろえた。

対日輸出規制の行方は、両国の政治情勢に強く連動している。取材に応じた担当者の一人は「日本の産業界は、政府間の関係改善を早期に望んでいる」と話した。中国側企業にとって対日事業は売上構成のごく一部にとどまるケースが多い一方、日本側の受ける影響はより大きいというのが、現地で取材した複数の担当者に共通する見立てだった。

Keikoo

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