磁石同志の会 第10回NS会開催
2007年に磁石同志の会として発足。今回で10年回目の節目となるNS会が8月20日、千代田区神保町の明治大学紫紺館にて開催された。会には45名が参加。
同会発起人の代表である明治大学の山元名誉教授から、開会の挨拶が述べられた。NS会の、この10年を振り返り、発起人の一人であった浜野先生が3年前にお亡くなりになられたことや、佐川先生が日本国際賞を受賞されたことなどの話しがあった。また、現在、南米で開催されているリオ・オリンピックでの日本人の活躍を例に、磁石も本多光太郎先生のK・S鋼に始まって、佐川先生のネオジム鉄ボロンまで、世界に誇る磁石業界であるとのお話があった。
NS講和は、愛知製鋼の御手洗浩成氏(電磁品本部、磁石事業室長)が「Nd-Fe-B系異方性ボンド磁石(マグファイン)の開発」と題して講演が行われた。
まずは、愛知製鋼は、自動織機から自動車部(現在のトヨタ)と製鋼部(現在の愛知製鋼)が分かれてできた。トヨタグループの中でも古い会社。創業精神は「良き車は、良き鋼から」。
1980年代に自動車のエレクトロニクス時代到来に伴い、筆者と10年来の付き合いがある本蔵義信氏(現:マグネデザイン社代表)が電磁品事業部を立ち上げた。現在、電磁品事業部はメッキ、センサー、入れ歯、磁石の4事業からなる。
御手洗氏は1987年に入社以来、サマコバを3年、以降マグファインの研究を続けてきたとのこと。異方性ボンド磁石を手掛けたのは、本蔵氏が1992年2月、TDKの米山哲人氏の解説記事「ボンドの磁力は20MGOe越せば焼結系に大きな打撃」に注目したのがきっかけ。その内容が、①磁力が20MGOe以上になりバルク磁石に近づけば後加工の必要がないボンド磁石の方がコストパフォーマンスで有利になるケースもある。②焼結磁石などバルクは、プロセスで余程の技術革新がないと用途が限定される、といったものだった。
当時のは、ボンド磁石の磁粉を作るのに、三菱マテリアルの水素処理法、新日鐵住金の圧延磁石、日立金属や大同特殊鋼などが手掛けた塑性加工法などいろいろあったが、同僚の三嶋氏が水素処理法が最も潜在力があると提案を受け開発が始まった。
現在は、岐阜県関市で磁粉を生産し、国内は愛知県知多半島に持ってきて、そこでボンド磁石に加工している。海外はチェコのほうで、ポーランドのとの国境に近いリブレッツ市に磁石工場、中国上海から1時間ほど離れたところで磁石を生産している。磁石の売上高は、昨年60億円程度、年間600トン程度生産できるようになってきた。
御手洗氏、三嶋氏など、ほぼ同期の4人が、磁粉技術、加工技術、製造基盤、応用製品に分かれて研究を進めてきた。①温間成型法、②Coフリー磁粉、③4極リング量産プロセス、④Dyフリー磁粉、⑤ロータ一体射出成型技術、などの開発を行ってきた。
2011年には、レアアース危機、その前のリーマンもあり事業存続の危機に見舞われた。分母・分子活動・・・分母活動(原価の改善など)、分子活動(商品力)・・・で、当時の経営陣を納得させるために行った。
今後の展開は、環境技術、安全技術といった面で、パワートレインも多様化していく。愛知製鋼としてはモータの効率化、軽量化などで貢献していく。
懇親会を前に佐川氏からスピーチが行われ、「石器時代、鉄器時代、シリコン時代と変わってきたが、50年には、自動車はもちろん、ロボットが普及し、希土類磁石の時代が来る」と話されていました。
乾電池と永久磁石は、日本人が開発し、世界に広がった製品であるが、乾電池(リチウムイオン電池)は韓国が、永久磁石(焼結磁石)は中国が、それぞれ世界最大の生産国であるものの、佐川氏の言われる希土類磁石の時代に、日本がリーダー的存在であり続けてほしいと願う。
(IRuniverse 井上 康)
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