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崖っぷちの国内LiB市場を救え 吉野彰氏、国家戦略的取組の必要性を提言

2021.06.14 16:06

 今月11日、安倍前首相をはじめ、自民党有志議員から成る「未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」が発足。議連設立総会では、LiB開発の功績によりノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏(旭化成株式会社名誉フォロー)による特別講演が行われた。講演で同氏は、バッテリー産業振興について政府への提言を述べた。

 

→(関連記事)バッテリー議連発足 国内LiB市場の競争力強化に向け、安倍前首相などが呼びかけ

 

 以下は、講演内容の一部を要約したもの。

 

 

国内にEV市場がないなかでも日本の電池メーカーは健闘している

 「現在、世界のLiB市場はモバイル・IT向けからEV向けに移行。日本にはEVマーケットが無いながらも、国内電池メーカーならびに電池材料メーカーは意外と健闘している。とは言え、顧客はすべて海外企業頼みという崖っぷちの中、必死で世界を相手に戦っている状態だ。」

 

 その健闘している状況は以下の吉野氏が参考資料としてあげたB3社のデータでも明らかである。

 

 

●EVの販売台数推移(地域別)最新

グラフ

 

 

● EV用LiBのサプライヤー別最新市場実績(全世界)

 グラフ

 

 

●正極材料(グラフ左)、負極材料(同右)サプライヤ別シェア(全世界)

グラフ 

 

 

●セパレータ(グラフ左)、電解液(同右)サプライヤ別シェア(全世界)

グラフ 

                               (出典:B3 Corporation Report)

 

 

車載用LIBをESS向けに

 「ESS(Energy Storage System)用のLiBマーケットも大きく成長している。ESSとは、太陽光発電した電力を定置用電池(蓄電池)に貯めるシステムのこと。脱炭素化社会の実現に向け、再生可能エネルギーを普及させるためには蓄電池の利用は絶対に必須だが、現在の消費電力をすべて再エネで賄おうとすると、発電コストはギリギリのライン。その上、さらに蓄電池システムを新設するのはコスト面で到底不可能だ。

 しかし、実はEVに搭載しているLiBとESSで使用されるLiBは全く同じものである。大きさもほぼ一緒。そう考えると、車載用LiBをESSの目的にも併用しようという発想は当然のこと。元々はEV用として作られたバッテリーなわけであるから設置コストはゼロとカウントされる。しかも乗用車というのは普段は全体の約9割が駐車場で遊んでいるのが現状で、それらの車を使った蓄電システムを国が確立できれば一気に問題は解決するだろう。」

 

 

グラフ

                 (出典:経済産業省「蓄電池産業の現状と対応の方向性について」)

 

 

 吉野氏は政府への提言として5つのポイントを挙げた。

 

1 日本国内のEVマーケットを早急に確立させるための施策

 

2 E V搭載の電池を活用して再エネ電源の普及を加速させるための施策

 「単にEVの普及促進だけでなく、車載バッテリーを再エネの蓄電池として活用させる広い視点からの施策が重要。これにより、再生可能エネルギー普及が大きく発展し、2030年CO2 排出量46%削減に向けて前進することができる。」

 

3 日本の電池メーカー、電池材料メーカーへの支援策

 「今後、メインプレイヤーは中国からEUへと移行し、米国も追随する予測。これらの国々では、電池メーカーへの研究開発・設備投資補助など、政府による様々な支援策を背景に急激にコスト競争力を拡大している。日本だけがガラパゴス状態で危機的状況な中、熾烈な競争に必死で耐えている国内メーカーを何とかして守ってやらなければならない。」

 

4 産業界、大学、研究機関が一体となったオールジャパン体制

 「国内市場がないため、研究員も方向性を見出せず苦労している状況にある。大学や研究所での基礎開発力を復活させるために、人・資金・施策を集中させなくてはいけない。」

 

5 次世代モビリティ社会に向けて日本が先行するための施策

 本講演で、吉野氏がどうしても話したかったというのがこの五番目の項目だ。

 「バッテリー産業において日本が三歩前進するために必要な視点は、ある程度EVが普及した社会という前提で、未来の車社会を想定していくこと。自動車にAIが搭載され、自動運転の実用化や車自身がスマホのように世界中の情報を持つようになると、EVはシェアリングという理想的な姿になり、持続可能な社会形成において非常に大きな力となる。既にAppleやファーウェイによるEV開発のニュースが報道されているが、これからIT企業がEV産業にどんどん参入して巨大マーケットとなるのは確実。このような社会の大きな変化の中で日本が先行するためにも、先を見据えたバッテリー政策が取られることを期待する。」

 

 また、質疑応答で「人や資金に限りがある中、バッテリー産業においても注力する部分・捨てる部分を吟味し優先順位をつけるといった戦略も必要なのでは」といった意見に対し、吉野氏はこう答えた。

 「私はそこまでは悲観していない。確かにスマホなどモバイルビジネスにおいて日本は壊滅的。しかし、モバイルの基幹部品は圧倒的に日本製が強い。自動車も同じで、例えばEVで使われている部品の1つは、その世界シェア8割を京都のメーカーが製造している。やはり理想は中身の基幹部品も抑えつつ、外側の分野も頑張ること。

 今、LiB市場の崖っぷちで踏み留まっているのはハイエンド品。どうしても国産の材料、国産の技術でなければ特性が出せないような、高品質の製品開発を維持しようと各メーカーは必死で頑張っている。しかし、安かろう悪かろうのマーケットももちろん存在していて、そこでは完全に日本メーカーは締め出されている状況だ。」

 

 講演のテーマとはややズレるがと前置きし、吉野氏は最後にこう締めくくった。 

 

 「蓄電池システムの普及に限らず、日本の再エネ利用を一番邪魔しているのは東日本と西日本の電圧の違い。まずこれをなんとかしないと話にならない。明治維新の負の遺産なので、国の責任で解決することを期待したい。」

 

 吉野氏からの提言内容と同じ観点からまとめられたバッテリー議連による緊急決議は、今月18日に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針」へ盛り込まれる予定だ。

 

 

(IRUNIVERSE EMI KUROKI)

 

 

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