新着情報

2024/04/24   露ノルニッケル、中...
2024/04/24   生産動態統計(24...
2024/04/24   生産動態統計(24...
2024/04/24   生産動態統計(24...
2024/04/24   山陽特殊製鋼:Sc...
2024/04/24   TREホールディン...
2024/04/24   人造黒鉛電極:財務...
2024/04/24   生産動態統計(24...
2024/04/24   三菱重工と日本ガイ...
2024/04/24   三菱商事とデンカ ...
2024/04/24   POSCOグループ...
2024/04/24   LME、ロシア産金...
2024/04/24   6月19日‐20日...
2024/04/24   欧州からの風:20...
2024/04/24   2024年2月鉄ス...
2024/04/24   中国国家安全部 レ...
2024/04/24   「中国バナジウム・...
2024/04/24   中国の3月の亜鉛鉱...
2024/04/24   中国の3月の銅スク...
2024/04/24   中国の3月の銅鉱砂...

日本発の新技術が生み出す最強半導体とは? 日本の復活への設備投資

MIRUオンラインLiveでベイリンクス・石川氏が力説

 IRuniverseが2022年3月18日に開催した「MIRUオンラインLive『半導体SPECIAL Bayrinks&RSテクノロジーズ TSMCの野望と半導体需要の見通し』」で、ベイリンクス株式会社代表取締役の石川勇氏は「Made in Japan 重なり合う技術が生み出す最強半導体」と題して講演。政府が成立を目指す経済安全保障推進法と世界の半導体地図の中の日本を踏まえて、TSMC熊本誘致を契機に、日本発の新技術「光半導体」と「Bump接合」を結び付ければ「最強半導体」が実現し、日本の復活が見えてくると力説した。

 

 石川氏はまず、経済安全保障推進法制定への背景(半導体に絡む分野に限定)と台湾のTSMC日本誘致の関連について解説した。

 

 

表

 

 

 同法には「半導体産業復活の事前と3段階」のシナリオがあるという。事前の部分は、NEDOに半導体復活基金を設立したこと。こちらではすでに半導体海外ベンダー誘致などの費用として今年度補正予算で6170億円を計上しTSMCを熊本に誘致することが決まった。続く経済安全保障推進法は3月17日から国会で審議が始まった。同法の柱の一つが「クリーンで安全な国産ロジック半導体サプライチェーンの構築」で、そこに至る第1段階では、2024年末にTSMC熊本工場が稼働を始め順次微細化技術の高度化を進めていく。さらにその他の海外半導体ベンダーの誘致も推進し、国内ベンダーの旧型ライン刷新に補助金(最大150億円)を支給する。第2段階では、2025年をめどに国内ファブレスベンダー育成支援を強化し、米国のファブレスベンダーとの連携強化も推進する。第3段階では、光半導体商用化を実現し、順次海外展開を図って半導体サプライチェーンを強靭にする。

 

 こうしたシナリオの中で日本側がTSMCに白羽の矢を立てた理由について石川氏は次のように解説した。――現状、日本のロジック半導体微細化はルネサスが40nmでトップだが、世界ではTSMCのEUV3nm(2022年製造開始予定)が最先端。TSMCがルネサスに10世代14年先行していて日本で独自に高微細化プロセスを稼働させるには時間がかかりすぎる。(ビジネスモデルや企業文化などを根本から変革していく)DX時代には、「バックドア」疑惑のない国産のクリーンな高性能ロジック半導体が大量に必要でもある。そこで台湾のTSMC誘致方針が固まった。TSMCはロジック前工程に最高水準の技術を有していて国内誘致は人材育成につながり、日本半導体産業再興へのカンフル剤になる。実際、ソニー(イメージセンサー/AI)とルネサス(車載半導体)はTSMC熊本工場(JASM)にエンジニアを派遣し技術交流を図る計画を持っている。

 

 

図

 

 

 一方のTSMC側の事情について石川氏はこう説明した。――サムスンとファウンドリ主導権争いのど真ん中にいて近々インテルも加わって覇権争い激化が予測される中、最先端微細化半導体製造にリソースを集中しなければならない。一方で、トップベンダーとして中国南京工場、米国アリゾナ工場、熊本工場、ドイツ工場(検討中)など活発な海外展開もしている。こうした中で弱点なっているのが、ポスト微細化、3D実装、IDM/後工程技術。対策として福岡後工程工場や筑波研究所設立、東大との技術提携、「光電融合」と「Bump接合」の技術導入を進める必要があった。――

 

 

図

 

 

 両者の抱える事情がかみ合っての誘致・進出だが、JASMで製造するのは主に28nm製品だという。巨費を投じて誘致するのになぜ最先端製品の工場ではないのか、という声が日本国内から少なからず上がった。これについて石川氏はTSMCの海外工場進出判断基準に、台湾TSMC本社工場が海外より最先端技術(微細化、3D膜積層/ダイ積み上げなどの革新技術)で優位な立場を維持するとされていることを挙げた。その上で、むしろ28nm製品の方が市場価値は高く経営面では大成功すると予測した。2021年のウエハース(200mm換算)の製造枚数とロジック半導体の売上高の中で28nm製品のシェアはともに1位であること、28nmは品質と歩留まりが安定しコストパフォーマンスに優れて自動車を含む多くの電子機器に使われていることなどをその理由に挙げた。

 

 講演の中で石川氏が経済安全保障推進法制定の背景として強調したのが「Made in Japan半導体サプライチェーンと中国『国家情報法』回避」だ。一般的に、SoCなどの高性能ロジック半導体はチップ検査用の診断回路を内部に組み込んでいる。この診断回路は外部と通信接続機能(バックドア)をもつためサイバー攻撃とデータ抜き取りに悪用されるリスクがある。そのため、ファウンドリとOSAT(後工程、組立・検査受託企業)は診断回路の有無と同回路へのアクセス情報を厳格に管理している。ところが中国は2017年に国家情報法を施行し、中国の内外資企業問わず要請があれば診断回路情報を政府に提供しなければならなくなった(下図参照、石川氏の講演資料から)。世界のロジック半導体の受託製造は80%以上が台湾と中国のファウンドリやOSAT。しかも、TSMCをはじめ多くの台湾ファウンドリ/OSATは中国に外資企業として工場を持っている。台湾からは毎年、1000人以上のトップレベルの技術者が中国に転職。台湾電子工業会の会長は中国の技術顧問でもある。こうした先経後政の「チャイワン交流」も考慮して、日本、米国、EUはロジック半導体国産化政策を推進しているのだという。

 

 

図

 

 

 では、「日本の半導体」は世界の中でどんな動きを見せてきたのだろう。

 

 上の経産省が作成したグラフから見ても凋落ぶりは一目瞭然。官民ともに高度経済成長時代の栄光をひきずったおごりと、先を見据えた戦略の欠如が招いた結果だというのが大方の見方だ。この泥沼を抜け出す秘策が、「官民10兆円設備投資が目指す半導体」だと石川氏は言う。その半導体こそ、日本独自の技術「Bump接合」と「光電融合」を組み合わせた「最強半導体」というわけだ。

 

 石川氏がまず挙げるのはソニーが2017年、画像センサーでウエハダイ3D(Bump接合)積み上げ3層実装を世界で初めて商品化した技術。実験レベルでは12層まで成功しているが理論的には100層まで可能だ。このBump接合技術によってトランジスタ数増加率は通常の12倍から100倍まで向上させることができるという。次いで挙げたのが、NTTが2019年に開発した光半導体(光電融合半導体)。半導体チップ内の電子信号をレーザーダイオードで光信号に変換し、トランジスタのスイッチング(ON/OFF)を毎秒1兆回行うことを可能にした。いわゆる光トランジスタで、これは従来の電子トランジスタの100倍にもなる。さらに消費電力も1/100に低減することもできるという。インテル、IBMなども光トランジスタの開発にしのぎを削っていたが、メタルケーブルと光ケーブルを対象に研究を積み重ねていたNTTが先んじた。

 

 これらの技術を重ね合わせれば、従来製品に比べてトランジスタ性能向上率(増幅/SW高速化)で100倍、消費電力低減率も100倍、トランジスタ数増加率では12~100倍、信号高速向上率なら100倍の最強半導体ができるという。この最強半導体をTSMC熊本工場(JSMC)で28nm微細化製品として製造始めれば2040年には半導体市場規模224兆円の中で17.3%(約39兆円)を占めるまでに成長すると石川氏は予測している(下図参照、石川氏の講演資料から)。

 

 

グラフ

 

 

(IRuniverse 阿部治樹)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る