何が起こってもおかしくない時代がやって来ました―平林金属
鉄・非鉄・プラスチック・希少金属・古紙まで幅広いリサイクル事業を展開している岡山県の平林金属株式会社(平林実・社長、岡山市北区)は、岡山県民であればだれもが知る創業65年の地元の有名企業だ。SDGsやCEという流れを受け、リサイクル業界が注目されるようになった今、独自の技術を持つ同社の今後の経営計画に興味が沸き訪問させていただきました。以下質問形式でインタビューを載せていきます。
IRuniverse田中(以下田中):「今年を振り返りつつ、来年の抱負や経営計画をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
平林社長:
「コロナ元年である2020年から21年になる2年前は業種に関係なく世界規模でみんながどうなるのだろうと不安でした。21年は資源相場が上がったため、市況に引っ張られる形で業界としてはいい結果を残せましたが、依然としてこれだ!という手ごたえを持てないまま22年に入り、今年は従来より相場の上げ下げの幅が大きい年でした。23年はさらに不確定な要素が増し、より周囲の状況にアンテナを出して経営していく必要があります。アフターコロナを迎えようとする中、金融機関が正常になった時にどの企業が健康体なのか改めて見直す必要が出てきます。また、食糧難・地震・極東アジアにおける軍事的な緊張感が高まる可能性がある中、金属資源の需要供給だけでなく、世界の動向を気にしていく年になるでしょう。」
田中:
「半導体不足が影響する中で、世界的に廃車台数の落ち込みが続いていますが、今後見通しは立ちそうでしょうか」
平林社長:
「半導体不足で新車が作れない、納車されないのならもう一度車検を受けようか・・・、なおかつ国内では人口が減っていることや、若い人が車をもつ意識が落ちていることも影響しているように思います。これからの車の主流は電気なのかハイブリットなのかガソリンなのか、まだはっきりしていない。また、人が乗れるドローンの開発も進んでいます。廃車台数の増減に一喜一憂することなく、経営していかなくてはなりません。経済でもずっと不安なニュースが続いているため、家計の財布はひもを締めるし、若い人が車を持たないことは理解できます。」
田中:
「最近の若い人は車や家をもたない。しかし環境に対する意識が高いと聞きます。自分のために車を買おうとは思わなくても、環境にいいものが売っていて、それが自分の考えに即したものであればお金使うという動きがあると聞いていますね。」
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田中:
「ところで、プラスチックリサイクルの取り組みについてもお伺いしてもよろしいでしょうか。」
平林社長:
「SDGs・CEが製造メーカーで叫ばれる様になり、最近は動脈側の方が真剣に取り組んでいる姿勢を感じます。また、政府がプラスチックに関わる法律を施行するなど、世界中でプラスチック問題が顕在化しています。21年前の家電リサイクル法の開始と同時にプラスチックのリサイクルラインを導入していますが、当時は採算が合う、合わないという経済原則に基づいて限られた数量のリサイクルが行われていました。しかし今はCEが叫ばれる中、多少手間が掛かってもリサイクルをしようという流れになってきています。
コピー用紙を例にしても、はじめは再生紙なんて高すぎて誰も使いたがりませんでした。ところがISO14001に取り組む企業が出て来て、少しでもリサイクルに貢献しようとなると、大量に売れる様になり、技術も上がっていくため品質は上がり、価格は下がって行きました。そうした好循環が生まれることで社会に定着していきます。プラスチックもコピー用紙と同じような展開が予想されます。若い人の感覚では、新品とリサイクル品を比較した時に、リサイクル品の方が地球にやさしくてかっこいいと感じていることが追い風になってくるでしょうね。」
田中:
「今はリサイクル過渡期ですね。そんな中で御社の新たな挑戦・プロジェクトはありますか?」
平林社長:
「SDGs の目標12“つくる責任、つかう責任”として製造メーカーも作り放しではなく、リサイクルに対しての責任を持たなければならない世の中になりました。今後、リサイクラーが技術の向上や働き手の確保ができない場合、製造メーカーが自社でリサイクル工場を運営していく可能性があります。そうならない様に、リクルート活動や技術・フローの開発をしていくことを中長期のテーマとしています。また、新たなチャレンジとして、就労継続支援A型事業所「たからさがし」という子会社を今年の5月に設立し、7月にリサイクルファーム御津第二工場内で事業をスタートしました。就労継続支援A型事業所とは、一般企業等での就労が困難な人に、就労の機会を提供するとともに、知識や能力等の向上のために必要な訓練、その他必要な支援を行う事業所です。「たからさがし」では、金属を選別して宝物を見つけたり、家庭で眠っている人材としての宝が活躍できる場所を提供することで、労働力不足を解消すると共に、人に優しい企業風土をさらに向上させていきたいですね。」
また、同社は公式YouTubeチャンネル「HIRAKIN SOFTBALL TV」を運営しており、累計再生回数は730万回を超えています(2022年10月末時点)。特筆されるのは会社の公式HPに連日約2,000人が訪問してくることです。伝統的な会社でありながらも、柔軟に新しい媒体にも力を入れ、さらに結果を出されているところがさすがだなと感じました。
関連情報
公式YouTubeチャンネル「HIRAKIN SOFTBALL TV」
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田中鮎子(Ayuko Tanaka)
将棋と旅行とYoutube動画作成が趣味。ちなみに将棋で好きな戦法は居飛車穴熊です。
自動車販売店に勤めていたことがあり、自動車のEV化、電池業界と世界のカーボンニュートラル、ガイア理論に大変興味をもっています。
全く人見知りしないことが取り柄で新しい知識を学ぶことやたくさんの人と出会うことが好きです。
ハーブティーとチョコレートが最高のリラックスアイテム。
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