SUSscrap MarketWatch 2023#1 POSCO購入再開も起爆剤にはならず需要減で弱含み続く
年明けの国内ステンレススクラップマーケットは12月のニッケル相場高騰にも反応せず12月比横ばいで推移している。韓国ポスコ社のスクラップ購入再開も数量は限定されていることで影響少なし。むしろ国内ステンレス、特殊鋼メーカーの1-3月の減産で市況は弱含みというところ。
国内の304スクラップ市中実勢はキロ当たり210~215円で変わらず。依然として中国勢優位。韓国向けでは5日に久々にポスコ社が価格を決めたが、韓国向けシッパーはキロ5円上げとした程度(304系でベース205円前後)。
そのポスコ社の韓国国内価格は304系でキロ当たり2400ウォンとなり、現在の為替レートによる円換算では250円どころとなっている。316系はMo高もあり3980ウォン、円換算で415円。
POSCO社 SUSスクラップ価格の推移
SUSscrap関連指標相場の推移
*23年1月は5日現在までの平均値および数値
高炭素フェロクロムBM価格の推移 lb/¢
また、ステンレスメーカー向け高炭素フェロクロムの23年1Qのベンチマークは欧州、日本とも前期比横ばいで決まっており、欧州149セント、日本は157セント。
再びスクラップの話に戻るが、LMEニッケルが3万ドルまで走っても304系スクラップが210円そこそこ、というのはLMEニッケルが高すぎるのか、スクラップの需要が低いのかだが、今はそのどちらも該当する。言うなればニッケル相場無視のマーケットになっているが指標になりえないほど現実離れした高値であるがゆえにパスしているといった状況であろうか?かつてはニッケル相場の10%が304スクラップ価格といわれてきたが、それはいまはもう通用しない。むしろニッケル銑鉄価格のほうがステンレスマーケットには即している。現在はNi1%当たり1300~1350元(同183~193ドル)で取引されている。
ニッケル銑鉄価格の推移(Ni10~15% RMB/mtu)
スクラップの需給面でいえば、この210円前後という価格は正解、といえる。最大手の日鉄ステンレスはじめ日本冶金も1年前とは打って変わって「受注難」に苦しんでいる。日鉄の1-3月期の月間平均ステンレス生産高は26,000~27,000トンと3万トンを割り込んでいる。日本冶金も22,000~23,000トンと低位に甘んじている。特殊鋼メーカーも自動車の減産影響をもろに受けて大幅な減産。ゆえに原料としてのスクラップも必要以上には欲しくない、ゆえに相場も上がらない、というシンプルなロジックで結論される。従ってこの冴えない展開は少なくとも3月一杯までは続くことは確実視されている。
316系もモリブデン相場高ではあるがきわめて控えめな相場で推移。こちらもステンレスメーカーの需要が芳しくないため実勢キロ350~380円どころで推移している。クロム系は60~63円どころ。
(IRUNIVERSE YT)
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