帝人含む6者の災害時応急復旧対応可能な汚水処理実証事業(B‐DASH プロジェクト)
国土交通省は下水道事業の低炭素・循環型社会の構築やライフサイクルコスト縮減、浸水対策、老朽化対策等を実現、また本邦企業による水ビジネスの海外展開を支援するため、平成23年度より下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト※)を実施している。今回は、帝人フロンティアを含む6者の共同研究体が提案した「災害時に応急復旧対応可能な汚水処理技術の実用化に関する実証事業」を紹介したい(令和2年度実施事業)。
※ B-DASHプロジェクト:Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project
災害時の下水処理を衛生的に安全に
近年では、豪雨や地震などの自然災害で下水処理場が被災し、その機能を失う状況が多発している。未処理の下水が流出した場合は、周辺住民の衛生・安全・財産にかかわる重大な事態につながる恐れがある。帝人フロンティア、エステム、積水アクアシステム、日新技術コンサルタント、豊橋技術科学大学、愛知県田原市の6者は共同で、国土技術政策総合研究所より委託を受け、迅速な施工・設置により水処理の復旧が可能な技術開発に向けた実証事業を実施した。
同実証事業は、実施フィールドを提供する田原市、公共下水道維持管理の実績および特殊繊維担体を用いた水処理設備の設計・施工の実績を有するエステム、特殊繊維担体を提供する帝人フロンティア、パネルタンクを提供する積水アクアシステム、下水道設計、システム構築、下水道の災害対策のコンサルティング実績を有する日新技術コンサルタント、微生物叢の解析を テーマとする研究実績を有する豊橋技術科学大学の6者で構成される。この共同研究体により、災害時に移設可能な革新的水処理 システムの技術確立を目指す。実証期間は、令和2年度〜令和4年度。
この実証事業では、特殊繊維担体とパネルタンクを組み合わせたユニット型水処理システムを設置し、実下水の処理機能を早期に確立させるため、ユニット型水処理システムの組み立てから4ヵ月以内に放流水の BOD 濃度を 15mg/L 以下、大腸菌群数 を 3,000 個/cm³ 以下にすることを目標にしている。
実証技術の概要及び実証結果
まず、上述したユニット型水処理システムを、田原浄化センターの最初沈殿池横に設置する(反応槽50m2×2基、沈殿槽27m2×2基)。設置後、水路から取水した実下水をBOD容積負荷0.6m3/日を目標としてこのユニット型水処理システムへ送水した。凝集沈殿処理、固形塩素剤による消毒処理を行い、放流可能レベルにまで処理する。
今回の実証技術は、災害発生時に運搬、現地での組み立て、運転の立ち上げ、維持管理、撤去が容易に実施可能で、迅速な応急復旧に対応するユニット型水処理システムを用いるもので、
①調達が容易で可搬性に優れたパネルタンクを用いることで迅速な施工が可能、
②運搬・組み立てが容易で下水処理の運転の立ち上げが早く解体撤去も容易、
③省スペース、変形スペースで設置が可能、
④ユニットの組み合わせにより流入水量、流入水質に対して柔軟な対応が可能、
⑤高耐久かつ高負荷運転が可能で、運転管理が容易な特殊繊維担体を使用、
⑥運転管理にはクラウド装置を使用して遠隔監視を実施する、といった特長がある。
この実証事業で用いる、帝人フロンティア提供の「特殊繊維担体」は断面形状が異形の特殊な繊維担体を用いることで表面積を大きくし、微生物の付着量を増やすことで、高負荷運転を実現、既存の水処理施設にも取り付けられ、担体は洗浄せずに使い続けられるという特長を持つ。
実証の具体的な目標とその成果をいくつか挙げておくと、まずユニット型水処理システムの組立開始から水張完了までの期間を実働30日以内としたところ、成果として、実働26日で達成、また水処理装置の組立開始から4ヶ月以内に放流水質BOD15mg/L以下、大腸菌群数3,000個/cm3以下にする目標では(放流水質の安定)2.5ヶ月で達成した。
テイジン/災害時に応急復旧対応可能な汚水処理技術の実証(YouTube)
■連絡先
帝人フロンティア株式会社
担当:西川知宏
nishikawa-to@teijin-frontier.com
(IRuniverse kaneshige)
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