台湾総統選、半導体産業への影響は? 民衆党候補が来日、「唐沢寿明」交え三つどもえ
2024年1月に投開票が予定されている台湾の総統選挙合戦が本格化してきた。与党の民進党のほか、第1野党の国民党、第2野党の民衆党がそれぞれ候補者を決定し、民衆党候補の柯文哲氏は6月4日~8日に来日する。台湾は言わずと知れた半導体産業の集積地で、選挙結果によっては世界の半導体産業に影響する可能性がある。
■候補者は3人3様
左から、民進党・頼清徳氏、国民党・侯友宜氏、民衆党・柯文哲氏
柯氏は今回の来日で木原稔・衆議院議員らと会談する。民衆党が5月24日に開いた記者会見によると、台湾海峡情勢について日本側と意見を交わすことが目的で、来日の背景として台湾と日本とはテクノロジー分野で深い協力関係が結ばれていると指摘した。柯氏は医師出身で、台北市長を2014年から8年間務め、「柯P」の愛称で愛されている。柯氏の出身地である新竹市は、台湾積体電路製造(TSMC)のおひざ元でもある。
総統選候補のうち、本命は与党・民進党の頼清徳・副総裁だ。医師出身で、台南市長を長く務めた。若いころから「台湾政界の唐沢寿明」と呼ばれたイケメン。親日家でもあり、度々訪日している。かつて「私は台湾独立を志向する政治家です」と発言したことがあるなど、中国とは一定の距離を置く。
歴史的に対中融和策を取る国民党の候補は、警察官僚出身の侯友宜・新北支長。新北市はシャープの親会社である鴻海精密工業(ホンハイ)が本拠を置き、国民党には鴻海創業者の郭台銘氏も在籍する。郭氏は中国事業で成功した「台商」の代表的人物で、台中間の経済的つながりを象徴する存在でもある。一方で、侯氏自身は対中融和については極端な姿勢を避け、穏健な方針を強調している。
■半導体囲い込み巡り米中の思惑交錯
今回の選挙は「中国の脅威という政治的ポリシーを掲げる民進党」と「台中間の経済的つながりを重視する国民党」の争いになりそうだ。一方で、柯P率いる民衆党の人気が高まれば、両党の票をある程度奪う結果となり、混戦も予想される。
もちろん、米中の思惑も絡んでくる。もし国民党が台湾の政権を握れば、中国は重要鉱物の輸出などを通じて台湾半導体産業の囲い込みに動く可能性がある。米国はそれを阻止しようとするだろう。TSMCが熊本県に工場を建設中である日本を含め、台湾半導体産業を巡る神経戦が今後、激しくなる恐れがある。
(IR Universe Kure)
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