日本アビオニクス(6946) 23/3期WEB説明会・有報開示メモ ポジティブ継続
23/3期7.7%減収も6.6%経常増で経常最高益、15期ぶり復配、24/3期も連続最高益予想
株価(7/4)5120円 時価総額163億円 発行済株31916千株
PER(24/3DO予8.0X)PBR(1.39X) 配当(24/3DO予)30円 配当利回り:0.6%
要約
・23/3期7.7%減収も6.6%経常増益で経常最高益更新、利益率も過去最高で15期ぶり復配
・24/3期12.6%増収、5.0%営利増予想も装備品利益率向上などで増額期待
・中計予想25/3期に売上高220億円、営利26億円目標は上振れ達成期待
23/3期7.7%減収も6.6%経常増益で経常最高益更新、利益率も過去最高で15期ぶり復配
防衛用表示機器などの情報関連システムと赤外線サーモモジュールや精密接合機器の電子機器を2本柱に事業展開。NEC発祥も2020年に日本産業パートナーズ傘下のNAJHDがTOB実施し事業運営する。
23/3期は売上高177.54億円(計画比比22.46億円未達、7.7%減)も、営利19.51億円(同計画並み、5.4%増)、経常利益19.25億円(同0.25億円増額、6.6%増)、税引利益18.20億円(同1.20億円増額、12.0増)となった。経常利益は上場来最高額を更新、営業利益率、経常利益率なども過去最高水準を更新した。
セグメント別では情報システムが売上高123.54億円(同2.46億円未達、10.1%増)、受注17.32億円(9.5%増)、営利16.28億円(2.1倍)。同社は防衛庁向けの各種装備品を供給している。23/3期は防衛予算が概算要求時の装備品予算が、補正予算で全数確保が実現、最大売上の主力の艦船搭載情報表示装置で大型プロジェクト等を受注、売上も拡大した。なお売上ではNEC向け42.93億円(16.2%増)、富士通向け4.0%増)とNEC系列から独立した効果もあり、富士通向けの寄与も高まっている。利益は人員再配置、QDC改善などプロセス改善の成果が現れ、営業利益率が5.6ポイント向上し13.2%となり大幅営利増に。
電子機器は売上高54.00億円(計画比26.12億円減額、32.6%減)、受注41.09億円(46.5%減)、営利3.23億円(69.8%減)と大幅な未達成に終った。主力の接合機器が売上高41.42億円(31.0%減)と、アジア向け輸出が26.69億円(45%減)、主力の中国、さらに台湾向け(台湾メーカーの中国現地生産用含む)がサプライチェーン混乱も有り大幅減に。赤外線サーモグラフィーはコロナ特需が剥落し大幅減、電力変電設備向けなどへネットワーク対応サーモカメラを納入するなど非発熱向け等投入も売上高は12.57億円(37.5%減)に。四半期推移では期を追う毎に減少、受注残高も利益面では減収影響が大きく大幅減益に。
全体として期初想定に対し、防衛関連の状況が好転、一方で半導体、電子部品の設備投資の先送り、中国のサプライチェーンの混乱などで電子機器が暗転、結果としては会社想定並みの利益を獲得できた。
24/3期12.6%増収、5.0%営利増予想も装備品利益率向上などで増額期待
24/3期会社予想は売上高200億円(12.6%増)、営利20.5億円(5.0%増)、経常利益20億円(3.9%増)、税引利益19億円(4.4%増)とした。
部門別では情報システムが140億円(13%増)、電子機器60億円(11%増)予想。防衛庁予算が6.8兆円、令和5年度予算は当初予算のみで10.5%増となっている。しかも新装備品の購入及び研究開発を合わせて2割を上回り、現有装備品の維持割合も高めるとしており、今後上乗せの可能性が十分ある。
接合機器はスマートフォンなどの低迷が続く見通しながら、EV向けのバッテリー向け合金タブ溶接、モーター用コイル線接合(フュージング)、EVハーネス向け銅・アルミ溶接などで増加が見込まれる。また前期低迷した水晶デバイス向けでも中国などのサプライチェーンの混乱などが収まる状況で回復が見込める。またサーモグラフィーについては非発熱向けで、ネットワーク監視のサーモカメラの拡大、加えて下期には医用サーモカメラの発売も見込まれ、緩やかな回復が見込まれる。なお会社側では受注予想を開示していないが、電子機器は24/3期末で受注残高が増えるとしており、また電子機器は売上と同程度の受注を想定しているとのこと。
利益面ではR&D6.5億円(33%増)、減価償却費3.5億円(59%増)などの増加を見込み、売上高営業利益率0.75ポイント悪化とみている。但し、防衛省が国内の防衛産業を支えるため、装備品調達で算定する利益率を最大15%にする仕組みを23年度から実施する。従来、防衛装備品は市場価格がなく、防衛省が原価計算を行い予定価格を設定し平均8%にしていた。これを品質や納期に応じ最大10%の利益率を算定、原材料高騰などの調達コストを変動分として最大5%付与する。このような状況で少なくとも電子システムは防衛費の増額に加え、利益率はさらに改善が見込まれ収益の上振れが期待される。接合機器は高額単価のパルスヒート溶接機の需要回復も見込まれ、増収効果で固定費負担増などをカバーし会社予想並みの売上、利益についても増益が見込まれる。
中計目標の25/3期売上高220億円、営利26億円は上振れ達成期待
同社は中期経営目標として25/3期に売上高220億円、営利26億円を掲げている。売上の中身(22/3期株主総会での説明図より推測)は基盤事業の情報システムが横ばいの126億円に対し、電子機器を94億円、この内接合装置を67億円、赤外センシング27億円としていた。しかしこの1年で状況が大きく変化、特に防衛費の大幅な拡大政策を受け、情報システムを150億円に変更している。
情報システムは防衛費予算拡大に追従し、整備計画に沿いターゲットを絞り統合事業拡大を目指す。具体的には既存事業でAI,VR、音声認識など機能・性能・精度向上を進め、防空ミサイル防衛などの強化を推進する。また新規事業領域として、スタンドオフ防衛、無人アセット防衛など高性能なプラットフォームの提供を行う計画。
一方で電子機器を70億円に引下げているが、これはスマホなどの低迷で主力の接合機器の伸び悩みを想定しているとみられる。但し同社は接合装置で4つの接合機を持つ、世界でも類を見ない接合機メーカーという強味がある。特に2次電池、EVモーター等でインバータ式抵抗溶接機、超音波金属溶接機などの需要増が見込まれる他、高シェアを誇るシーム溶接機は水晶デバイスの小型化対応、また自動運転などでの水晶デバイスの用途拡大、センサデバイスの封止などで改めて設備増強が見込まれる。さらに光通信やレーザ加工などでレーザーダイオードの封止溶接、放熱対策で採用が増加しているベイバーチャンバの封止などにも用途の広がりが期待され、収益性も回復が見込める。加えてFRP等と金属の異種素材の接合に対し、パルスヒート接合を利用し従来の接着剤やボルト等による機械的接合の代替として技術開発、小型情報機器や小型精密部品での熱可塑性CFRPと金属接合を可能とし、今後、量産部品製造に採用される可能性も出てきた。
赤外サーモについては医用サーモカメラが国内唯一の医療機器となるため、糖尿病や振動障害などの検査への活用が期待出来る。またネットワーク対応サーモカメラについては変電設備以外でも鉄道河川、ゴミ処理場の自然発火の検知などでも利用が拡大する見通しで、新分野での拡大から売上の再拡大が期待出来る。なおセンシング分野ではNEDOとドローン搭載型サーモカメラの開発中で、橋梁や建物の老朽化などの遠隔点検も視野に入れるなど、建築基準法第12条に基づく定期調査報告制度にも適用できるようにする計画。このような状況を考慮すれば、電子機器についても当初想定していた売上に近づく可能性も十分にあり得る。
全体として情報システムの上振れ分に電子機器の回復を加味し、中計計画の上振れ達成に期待がかかる。株価は24/3期会社予想EPS594.29円に対しPER8.6倍となっている。但し24/3期まで適正税率とはならない見通しで、適正税率で換算した場合PER11.9倍水準にあるとみられる。それでも東証スタンダード電機平均PER13.1倍に対し割安感がある。しかも今後、防衛関連での予算上乗せの可能性も高く、収益の増額期待、自社株買い、25/3期中計予想も超過達成の可能性があり、ポジティブ継続としたい。
(H.Mirai)
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