Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.77最近の中古車輸出のデータから(7)アフリカは減ったか
これまで見たように全体的に2022年の中古車輸出の単価は上昇している。前々回(Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.75最近の中古車輸出のデータから(5)主要仕向地の数量と単価)では特にロシア向けの中古車輸出の単価が上昇していることを確認したが、他の仕向地の単価もロシアほどではないにしろ上昇している。この流れでvol.73で見たように、低い単価の数量の割合は小さくなっている。単価の低い中古車の主要仕向地であったアフリカはどうなったかである。
図1にあるようにアフリカ向けの中古車輸出台数はこれまで増加傾向にあったが、近年は横ばいと言える。全体におけるアフリカ向けの割合は2008年までは10%前後であり、2009年からは20%台前半、2018年以降は25%を超えるようになっている。2019年にはアジアを抜いて最大の仕向地となっている。
2022年のアフリカ向けは前年よりも1.5万台程度の減少であり、対前年比は95%である。全体における同地域の割合も25%弱と下がっている。そのため、アフリカに勢いがあるとは言い難いが、最大の仕向地であることは変わっていない。
図 1 中古車輸出台数の推移(アフリカとその他、単位:台)
出典:財務省貿易統計より作成
注:バス、乗用車、貨物車の合計
vol.74において、単価が20万円以下の中古車輸出台数について主要品目別に見た。同じ20万円以下の数量を地域別に見たものが次の図2である。このうち、2021年と比べて2022年は、全体で14万台程度の減少で対前年比は32%である。このうち、アフリカ向けは4.9万台程度の減少である。
20万円以下の数量におけるアフリカ向けのシェアは、2018年:45%、2019年:33%、2020年:38%、2021年:38%、2022年:44%である。2022年はアフリカにおいても大幅に減少したため、そのシェアはさほど高くなっているわけではない。なお、アジアは大幅な減少はなかったことから、この割合は12%(2021年)から33%(2022年)と劇的に高くなっている。
図 2 単価20万円以下の中古車輸出台数(地域別、単位:台)
出典:財務省貿易統計より作成
注:バス、乗用車、貨物車の合計
図3はアフリカ向け中古車輸出台数について価格帯別に示したものである。先述の通り、2022年は2021年と比べて1.5万台程度の減少である。このうち、低い価格帯の数量が減少し、高い価格帯の数量が増加している。具体的に20万円以下は4.9万台、20万円超50万円以下は2.3万台程度減少しているのに対して、50万円超100万円以下は3.6万台、100万円超は2万台増加している。単価の上昇により、アフリカ向けは大きく減少したわけではなく、排気量の大きいものにシフトすることで数量全体ではほぼ横ばいになっている。
図 3 アフリカ向け中古車輸出台数の推移(価格帯別、単位:台)
出典:財務省貿易統計より作成
注:バス、乗用車、貨物車の合計
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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