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コンテナ運賃動向(2023年7月)―上向きに転ずるも不透明

 前回6月21日付けの拙稿「コンテナ運賃動向-2023年6月」から1ヶ月以上が過ぎ、海上コンテナ運賃もアジア発米国向けで上昇に転じている。他の航路、例えば、アジア発欧州向けでは未だに下落傾向のまま。また、過去1ヶ月の間にカナダ西岸のバンクーバーとプリンス・ルパートの2港での労使交渉難航からのスト決行、パナマ運河での渇水による更なる通航制限と今後のコンテナ運賃動向に影響を及ぼしかねない状況が発生した。

 

 今回も、ノルウェーのゼネタ(Xeneta)社のコンテナ運賃情報「Xeneta Shipping Index by Compass」(XSI―C)https://xsi.xeneta.com/の情報で対象は40フィート・コンテナのスポット運賃であり、各種サーチャージも含まれたもの。以下は過去4か月のデータ(本稿執筆時引用)を表にしたもので、最新は7月24日付け。

 

(単位:米ドル)

 

 上記の表のように、アジア発北米西岸向け航路では過去3ヶ月に渡り運賃下落が続いていたがここに来て上昇傾向に転じた。

 

 Xenetaとほぼ同日のFreightos Baltic Index (FBX) の世界コンテナ運賃指標で東アジア発北米西岸ルートをみると1,366ドル(7月21日)、Drewryでは1,965ドル(7月20日)とそれぞれ前週比プラスだった。

 

日本発の運賃はどうか?

 

 (公財)日本海事センターが公表している日本発の運賃を見てみると、2月から4月にかけては大幅な下落傾向が続いていたが、5月に入って下落が収まりつつある。

 

(単位:米ドル/40ft)

 

 上の表からも分かるように、日本発の運賃も2月から4月にかけて1月でほぼ千ドルを超える下落幅だったのが、5月では横浜―ロスアンジェルス間では390ドルの下落、横浜―ニューヨーク間では350ドル減と下落幅の減少が明らかに。

 

 日本の荷主・フォワーダーにとっては朗報ではあるが、今後この傾向が続くか否かは不透明だが、前述のXeneta、Freightos Baltic Index (FBX)、Drewryの3指標がそろって運賃上昇を示していることもあり、上昇に転じる可能性もある。

 

カナダ西岸港湾労使交渉が難航

 

 米国西岸港湾労使交渉が暫定合意した直後の7月1日からカナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバーとプリンス・ルパートの2港でカナダ国際港湾倉庫労働組合(ILWUカナダ)による港湾ストライキが発生した。カナダ連邦政府の調停により13日に4年間の労使協約に関する暫定合意に達したと報じられたが、ILWUカナダはこの調停案を拒否し、18日から再びピケを張り、ストを再開。

 

 争点はILWUカナダによる港湾の荷役機器の定期メンテナンス、賃上げ、港湾自動化問題などとされているが、新型コロナ感染症問題を背景に海上運賃が高騰し船社大手が大幅に収益を伸ばしたことに対する応分の分配(賃上げ)要求がILWU側の重要な争点になっている模様。

 

 今回のストでは米国の港湾労働組合(西海岸のILWU及び東海岸のILA)がILWUカナダを支持し、迂回貨物の荷役を拒否している。コンテナ船は通常、米国西岸のロサンゼルス、ロングビュー、シアトル、カナダのバンクーバーと北上して貨物を集荷するが、バンクーバー港での滞船が明らかなことから、同港への寄港を取りやめにする船社も出ている。6月末時点では沖待ち滞船はほぼゼロであったが7月に入って10隻以上が滞船しているとの一部報道。

 

アジア発米国行きの荷動きと運賃

 

 (公財)日本海事センターが米国のPIERS(Port of Import/Export Reporting Service)の統計データをもとに発表しているデータ、「日本・アジア/米国間のコンテナ貨物の荷動き動向」によると、2023 年 6 月のアジア(18 ヶ国・地域)から米国へのコンテナ荷動き量は、20フィート換算で、前年比 11% 減の 161.3万個。1-6 月の累計では、前年同期比 22.7% 減の 867.1 万個。

 

 国別にみると、日本は 3.1% 減となる 5.3 万個、中国は 13.6% 減となる 89.6 万個、韓国は 6.6% 減となり9.7 万個、台湾は 0.5% 増となる 6 万個、ベトナムは 10.8% 減となる 20 万個、インドは0.1% 増となる 8.9 万個。

 

 地域別では、ASEAN 全体では 9.6% 減となる 38.8 万個、南アジアは 6.8% 減となる 11.3 万個。

 

 品目別では、「家具、寝具など」は 20.7% 減の 26.7 万個、「機械類」は 10.6% 減の 17 万 個、「繊維類及びその製品」は 12.7% 減の 16.1 万 個、「電気機器、AV 機器など」は 1.5% 増の 13.6 万 個、「プラスチック及びその製品」は 12.8% 減の 13.1 万個、「玩具、遊戯用具、スポーツ用品」は26.6% 減の 8.3 万 個、「自動車部品など」は 20.5% 減の 8.2 万 個。

 

 何れも20フィート換算だが、荷動きは減少傾向をのまま。

 

パナマ運河、更なる通航制限を実施

 

 パナマ運河庁(ACP)は、7月25日付けで、エルニーニョの影響で渇水が続くため、運河通航時の最大許容喫水を13.41メートルとし、7 月 30 日からは、1 日あたりの通航船舶数を平均 32隻に調整すると発表。 ACPは、ガトゥン湖の水位と今後の気象状況次第では追加の制限処置がとられる可能性にも言及した。

 

 パナマックス閘門(第1と第2閘門)と2016年に拡張されたネオパナマックス閘門(第3閘門)注)の両方を含むパナマ運河の持続可能な最大通航隻数は、1 日あたり約 38 ~ 40 隻で、今まで毎月約 34 ~ 38 隻の船舶が通航してきた。しかしながら、最近の 2ヶ月( 5 月と 6 月)に至っては、それぞれ 1 日あたり平均 32.58 隻と32.13隻に過ぎなかった。今回の通航制限は、2016 年に拡張されたパナマ運河のネオパナマックス閘門(第3)が開通して以来、初めての気候変動による制限。

 

注)ネオパナマックス(Neo-panamax):2016年のパナマ運河拡張工事以降の新設・拡張閘門(第3)を通過できる最大サイズとして作られた船。最大喫水15.2m、船幅49m 以下、載貨重量トン8~12万重量トン位の船。長さは最大366m。パナマックスとは第1と第2閘門を通過できるもの。

 

 ACPはまた、長期間にわたる運河の通航量が減少すると、予約をしていない船舶の待ち時間が長くなる可能性を指摘、ACPの交通予約システムを利用することを勧めている。

 

パナマ運河―今後の懸念

 

 パナマ運河との関連と推測される、アジア発中南米東海岸向けスポット運賃の上昇だ。Xenetaによると、7月24日発表のアジアから南米東岸向けスポット運賃は3,091ドル(40ft)で、先月比6.26%の上昇。この3カ月の傾向として約18%(約500ドル)上昇し、昨年12月以来の高値水準となっている。

 

 運賃上昇に加えて、通行量の減少はパナマ運河庁にとって収入減を意味し、この事態が長期化すると将来的な通行料金の値上げにも発展しかねず、中南米東海岸向けスポット運賃の更なる上昇も懸念される。

 

最後に

 

 本シリーズでは、昨年後半から荷動きの低迷が続いていた国際海上コンテナ荷動きが、2023年の夏頃から回復してくるのではないかという見通しを何度かたてたが、7月に入り下半期を迎えても確たる回復の兆しは見られない。一時的な運賃上昇がみられるものの、まだ不透明感が残る。

 

 北米航路では、インフレの影響と消費の冷え込み、在庫増加で荷動きの回復が遅れている。前述の日本海事センターによる6月のコンテナ荷動きデータは、アジアから米国向けのコンテナ荷動きが国別、地域別、品目別で軒並み減少傾向にあることを示している。

 

 今後の見通しについて船社各社は、在庫が減らない限り、厳しい状況が続くとみているようで、関係者の見通しは依然として慎重な印象だ。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

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