週刊バッテリートピックス 「政府予算案DX向け2兆円」「EU規制開始」など
2023年8月22-27日のバッテリー業界では、政府予算案に占めるバッテリー関連の予算拡大や、ラップのクレハの電池材料の生産増加などが話題になった。EV向けを見据えた生産拡大が続く一方、EUが規制を始めるなどバッテリーを取り巻く環境を整えようとする流れもある。
<国内>
●政府、蓄電池などGX向けに2兆円超 2024年度予算案
日本政府は8月23日、首相官邸でGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議を開き、2024年度予算の概算要求案を示した。次世代原発の研究開発支援や蓄電池などの生産支援において、複数年にわたるGX関連分野での必要予算を2兆円超と見積もった。
日本政府ホームページ: GX実行会議(第7回) (cas.go.jp)
令和5年8月23日 GX実行会議 | 総理の一日 | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)
●ラップのクレハ、車載向け電池の正極材材料を増産へ
梱包材のクレハは8月22日に自社ホームページ上で、車載向けリチウムイオン二次電池(LiB」)の中核部材である正極材に使うフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)の生産設備を増強すると発表した。同社の福島県いわき市の工場に約700億円を投じ、年産8000トンの生産増加を可能にする。完工は2026年3月の予定。
クレハは家庭用品「NEWクレラップ」で知られる樹脂企業だが、世界的な電気自動車(EV)の普及を背景としたLiB需要の増加を受け増産に踏み切った。PVDF はLiB用バインダーおよび一般産業用エンジ ニアリング・プラスチックとして使用されているという。
●ホンダ系J-MAX、中国でCATL向け工場建設か
ホンダ系部品メーカーのJ-MAXが、車載電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)向け電池ケースの新工場を中国に建設するもようだ。8月23日の日本経済新聞朝刊が伝えた。
既存工場の増強分も含めると投資額は約80億円。2025年稼働を目指すという。
●「水素電池自転車」の公道実験が開始 山梨県
半導体製造装置メーカーの日邦プレシジョン(山梨県韮崎市)や山梨大学などは8月21日、水素を使った燃料電池を載せた電動アシスト自転車の公道での実証実験を開始した。同様の実験は日本初。
燃料として使用するのは、太陽光発電の電力で水を電気分解させ、製造段階で二酸化炭素を排出しないで作成された水素。この水素を充塡(じゅうてん)した小型ボンベを電動アシスト自転車に積み、燃料電池で発電して走行をサポートする。ボンベにフル充填した場合、バッテリー搭載の一般的な電動アシスト自転車の2~3倍にあたる約100キロメートルのアシスト走行が可能だとしている。
山梨県などはこの「水素自転車」を5台用意し、今後約2年間にわたりレンタルサイクルサービスも展開している道の駅富士川を拠点に、観光客や一般利用者向けに無料で貸し出す。公道で利用した場合の水素使用量や、使い勝手などを検証する考えだ。
<海外>
●リサイクルのアメリカン・バッテリー・テクノロジー、ネバダ州でリチウム採掘促進
米バッテリーリサイクルのアメリカン・バッテリー・テクノロジーは8月22日に自社インスタルガムで、「ネバダ州トノパーでの3回目のリチウム掘削を開始した」と発表した。
トノバーのリチウム資源は、米国で最大の既知のリチウム資源の1つとして特定されている 。同社は米国内でのサプライチェーン(供給網)強化と高品質なリチウム採掘を目指すとしている。
●EU、バッテリー規制開始 「電池パスポート」実装など義務付け
欧州連合(EU)は8月17日、バッテリー製品の原材料調達から設計・生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定するバッテリー規制を発効した。欧州経済領域(EEA)で販売されるEV用電池および産業用電池は今後、カーボンフットプリントの申告と表示、電池の情報を電子的に記録した「電池パスポート」の実装、欧州での回収・リサイクルなどが義務づけられる
今回の規則は自動車用、産業用、携帯型などEU域内で販売される全てのバッテリーが対象。カーボンフットプリントの申告義務や、リサイクル済み原材料の使用割合の最低値導入、廃棄された携帯型バッテリーの回収率向上や、原材料別再資源化率の目標値導入などを盛り込んでおり、サプライチェーンの見える化・強靭(きょうじん)化を通じて、域内の重要原材料の確保や戦略的自律を目指す。
●ベトナムEVのビンファストが米上場、最新モデルは米国展開
ベトナムの新興EVメーカーであるビンファストは8月15日、米ナスダック市場に上場した。終値で計算した時価総額は850億ドル(約12兆円)を超え、米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォードを上回った。ベトナム企業の米上場は初めて。
同社は、電動で330マイルを走行できる「VF9」などの最新モデルを2022年から米国で展開している。
(IR Universe Kure)
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