チタン原料市場近況2023年9月 やや活気戻る、原材料高で加工品も価格昇を期待
2023年9月のチタン原料市場では、多くの製品で新規受注が始まり、主に中国国内でやや活気が出てきた。メーカーの在庫消化が済んで原材料コストが高い状況が続いていることから、二酸化チタンやスポンジチタンなどの加工物は価格上昇への期待感も強まっている。
チタン精鉱
過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US$/ton)
国際チタン精鉱価格は8月下旬から横ばい。中国の経済状態に対し様子見を決め込みたい輸入業者がなお多い。今後は供給量が増えてくると予想されることから価格下落圧力はあるが、現時点では膠着状態にある。
中国国内のチタン精鉱市場は高水準で推移し、このうち板渓地域のチタン精鉱46%の主流の見積もりは多くが1トン=2250元を超えた。下流メーカーのコスト圧力が影響した形で、大手の攀鋼集団による新規注文価格は前週から30元程度上昇した。板渓地域以外では2220〜2240元を維持している。
二酸化チタン
過去3か月間の酸化チタンの価格推移(ルチルTI02 93%min Gob China)(US$/ton)
国際二酸化チタン価格は9月に入り仲値で1トン=2200ドルに上昇し、ちょうど1年前の水準に戻している。中国国内の二酸化チタン市場がやや活発になったことが背景にある。多くの中国メーカーが早期注文や新規注文を受けており、今後の需要に対する見積もりが強まっている。中国のルチル型二酸化チタンの主流市場価格は1トン1万5800~1万6600元 アナターゼ型二酸化チタンの主流市場価格は1万4000元~1万4800元が中位層になっている。
チタンスラグ
上昇基調にある。中国国内では、雲南省地域の酸性チタンスラグの新規注文価格が9月に入り1トン=150元上昇し、四川省地域では同約200元上昇した。チタン精鉱価格が上昇し、チタンスラグ企業の調達コストが増加した一方、二酸化チタン企業の稼働率が高く需要が安定していることが追い風となっている。
多くの高チタンスラグ工場は受注受け入れに積極的だ。トレーダーの間では、当面は足元の市場全体は安定しているとの見方が多い。
スポンジチタン
過去3か月間のスポンジチタンの価格推移(99.7% Ti China)($/Kg)
国際価格は下げ止り。中国国内では上昇基調にある。土木製品スポンジチタン1#の主流の取引価格はすべて1トン=5万元以上に上昇し、一部の企業の新規注文価格は5万3000〜5万5000元まで上がった。市場は徐々に安定しており、下流の需要は着実に増えて在庫も消化が進んでいる。
四塩化チタン
過去3か月間の四塩化チタンの価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)
底堅く推移しているものの単位当たり6000元台の低空飛行に変わりはない。中国北東部のある工場は、9月に入り塩素価格の上昇や供給の減少などを受けて四塩化チタンの価格を約7200元に引き上げたが、他の工場がそれに追随するには至っていない。
フェロチタン
過去3か月間のフェロチタンの価格推移(Ti 70% EU)($/Kg Ti)
国際価格はロシアから割安なフェロチタンが供給され、弱含んだ状態が続いている。一方、中国国内では9月に入り、多くの製鉄所が相次いでフェロチタンの入札を開始した。製鉄所は在庫消化が進み、新規入札を実施できる状況になっている。同業間競争の激しさから価格の上値は限られるが、下値もしっかりしている。
(IR Universe Kure)
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