パナソニックエナジー 米レッドウッドと廃LIBから高純度ニッケルを抽出 28年までに
パナソニックホールディングスは、EVの使用済みバッテリーから鉱物をリサイクルして新しいバッテリーを製造する計画で、再生材料を使用したセルが同等のコストと性能を持つシステムの構築を目指すとしている。そのために、子会社のパナソニック・エナジーは米国を拠点とする新興企業レッドウッド・マテリアルズと協力し、2028年までに使用済みバッテリーから高純度ニッケルを抽出する。
パナソニック エナジーの渡邊 庄一郎最高技術責任者(CTO)は「枯渇の危機にある資源を確保し、資源採掘段階から生産までの二酸化炭素排出量を削減できる」と語る。
パナソニックの電気自動車用バッテリーの正極材の約9割を占めるニッケルに注力する一方、コバルトやリチウムのリサイクルも検討する。
このプロジェクトは米国ネバダ州にあるレッドウッド工場で行われる。レッドウッドは現在、同州にあるパナソニック・エナジーの工場で発生した不良バッテリーやスクラップから材料を回収し、他社に供給している。
両社は今後、使用済み電池から高純度ニッケルを回収し、パナソニック エナジーに供給する技術に取り組む。
「使用済みバッテリーには鉱石に比べて資源が高濃度に含まれており、精錬に必要なエネルギーは少なくなります。資源価格によっては、リサイクルされたバッテリーの方が安くなる可能性があります」と渡辺氏は述べ、同社はバッテリーを「野心的な規模」でリサイクルしたいと付け加えた。
パナソニック エナジーは、早ければ2028年にもリサイクル材料と新たに採掘された材料を使って同じコストで電池を製造できるようにしたいと考えている。
リサイクル会社と提携して資源を再利用することは、EV バッテリー業界で増加傾向にある。
今年2月、中国のリサイクル会社GEMは、メルセデス・ベンツとバッテリーのリサイクルで提携したと発表した。
名古屋大学客員教授の佐藤登氏は、「世界中の電池メーカーやリサイクル会社が、使用済み電池から重要な鉱物を安価に抽出する技術の開発を競っている」と述べた。同氏は、企業がリサイクルされた重要な鉱物を新品の鉱物よりも30%安く製造できれば、「EV用バッテリー市場での勝利に向けた大きな一歩となるだろう」と述べている。
欧州連合は2026年に企業に対し、バッテリーの材料がどこから来たのか、どれだけリサイクルされたのか、生産時にどれだけのCO2が排出されたのかなどの情報を記録する「バッテリーパスポート」システムの導入を義務付ける計画だ。米国とインドも同様の措置を検討している。
日本は、リサイクル技術やリサイクルしやすい電池の開発を支援し、2030年までに国内での電池リサイクルシステムの確立を目指している。
リサイクルへの移行には地政学的な側面がある。
EV産業を強化している中国は、世界の重要な鉱物とレアアースの供給量の多くを管理している。
Fortune Business Insights によると、EV バッテリーを含む世界のリチウムイオン電池リサイクル市場は、2022 年の 32 億 2000 万米ドルから 2030 年までに 148 億 9000 万米ドルへと 4 倍以上に増加すると予想されている。
日本の商社である丸紅は、使用済みEVバッテリーから正極材をリサイクルするために米国のリサイクル会社に5,000万ドルを投資している。 同社は「環境負荷低減と経済安全保障の観点から、リサイクルを伴うサプライチェーンの構築が重要なビジネスチャンスにつながる」としている。
(IRUNIVERSE/MIRU)
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