週刊バッテリートピックス 「AESC米上場か」「出光興産が電池企業と協業」など
2023年10月22日-29日のバッテリー業界では、出光興産の電池スタートアップ企業との協業や、マクセルの大容量固体電池の開発などが目を引いた。中国系企業の米国進出意欲は根強く、AESCの上場準備や国軒高科の工場新設なども話題だった。中国の黒鉛輸出規制の余波が続き、関連の話題も多かった。
<国内>
●中国系車載電池のAESC、米上場を準備か
中国系車載電池のAESC(本社:神奈川県座間市)が米国での株式公開に向け準備を進めている模様だ。米ブルームバーグ通信が10月29日、同社が最近、10億ドル(約1500億円)の資金調達ラウンドを完了したと伝えた。シンガポールでも資金を調達しており、米上場の足掛かりにするとの観測が浮上している。
AESCの前身は日産自動車とNECなどが設立した「オートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)」。2019年に中国の再生可能エネルギー関連企業のエンビジョングループ(遠景科技集団)が買収し、現在はエンビジョングループが80%、日産が20%出資している。10月にはベルギーのユミコアから電池材料供給契約を取り付けたばかりだった。
関連記事: AESCとユミコア、EVバッテリー正極材の長期供給契約を締結 | MIRU (iru-miru.com)
●マクセル、大容量の円筒形全固体電池を開発 1月からサンプル出荷
マクセルは10月26日、200mAhの大容量化を実現した円筒形全固体電池を開発したと発表した。6月から量産しているセラミックパッケージ型全固体電池の25倍の容量があり、主電源用途でも適用が可能という。2024年1月下旬からサンプルを出荷する予定だ。
プレスリリース: マクセル|主電源用途でも適用可能な円筒形全固体電池(PSB23280)を開発 (eir-parts.net)
●出光興産、EVスタートアップのFOMMと協業検討
出光興産は10月26日、バッテリー交換式電気自動車(EV)を手掛ける電気自動車(EV)スタートアップのFOMM(横浜市)と協業を検討すると発表した。ガソリンスタンドをEVのメンテナンスや蓄電池の積み替え拠点として活用することを目指す。
関連記事: 出光興産とFOMMがバッテリー交換式EV事業の協業検討を開始 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●中国バッテリーの国軒高科、米ミシガン州で材料工場を建設へ
中国のバッテリーメーカーである国軒高科(ゴティオン)は10月26日、上場する深圳証券取引所で、米国ミシガン州にEV向け電池の材料工場を新設すると発表した。投資額は23億6400万ドル(約3500億円)で、2031年末までに工場建設を終える。
ゴティオンはかねて米イリノイ州に20億ドル規模のリチウムイオン電池工場を新設すると伝わっていた。ミシガン工場は、イリノイ工場に材料を提供するとみられる。
ゴティオンが10月28日に発表した2023年1-9月期決算は、純利益が前年同期の2.1倍に増加。売上高も51%増と絶好調だった。
関連記事: 週刊バッテリートピックス 「日カナダEV材料供給で覚書」「住友商事が蓄電所」など | MIRU (iru-miru.com)
関連記事: 国軒高科の米国電池工場が間もなく設立される | MIRU (iru-miru.com)
●韓国サムスンSDIと現代自、欧州事業で協業へ
韓国電池大手のサムスンSDIは10月23日、自社ホームページ上で、同国自動車大手の現代自動車との間で欧州事業に関しEV向け電池の供給契約を結んだと発表した。両社が電池供給契約を結ぶのは初めて。
契約期間は2026年から2032年までの7年間。サムスンSDIのハンガリー工場で生産した電池を現代自動車の欧州市場向けEV用に供給する。契約の規模は明らかにしていない。
サムスンSDIは既に欧州でステランティスやBMWなどに電池を供給している。10月26日に発表した2023年7-9月期の連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が4960億ウォン(約550億円)と前年同期比12.3%減少した。
●中国の黒鉛規制発表、余波続く
中国商務省と税関総署は10月20日、「輸出管理法」などに基づいて、12月1日から黒鉛の関連品目について、輸出を許可制にすると発表した。EV向け電池材料を狙った規制と見られるだけに、関係者の間ではこの週も影響などを探る動きが相次いだ。
ただ、足元の黒鉛価格は小動き。市場では「規制を緩和している部分もある」と冷静な見方も聞かれる。
関連記事: 中国 ガリウム、ゲルマニウムに続いて電池用黒鉛も輸出許可制に 日本に入ってくるのか? | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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