電気・電子・EVバッテリー委員会(EEEVB)新たに登場――BIR・EEEVB委員会

欧州を拠点とした世界的なリサイクル業界団体であるBIRが10月22~24日の日程で開催した「World Recycling Convention & Exhibition」(アブダビ)が終了した。24日の最終セッションには新たなBIRのグループ「電気・電子・EVバッテリー委員会(EEEVB)」が登場。以前は「E‐SCRAP委員会」として知られていたが、業界の変化を反映して誕生した。
同日のEEEVBセッションでは、新会長の Josephita Harry氏(米国パンアメリカン・ジンクLLC営業担当副社長)が議長を務めた。代表団を歓迎し、彼女は強調するために新しい名前を繰り返した。
「お気づきでしょうか。スクラップや廃棄物という言葉は使っていない。非常に小さな名称の変更だが、私はこれを非常に大きな一歩だと考えている。重要な素材をリサイクルし、再び社会に戻すという我々の仕事の重要性を認識する方向への、非常に大きな一歩だと考えている」。
最初のプレゼンテーションは、バッテリーのリサイクルに由来するブラックマス製品についてであった。S&P Global Commodity Insightsのシンガポール・オフィスの編集者兼シニア・プライシング・スペシャリストであるLeah Chen氏が講演した。
同氏は、シュレッダー処理から生成されるブラックマスが、リチウムやコバルトなどの貴重な金属を含むことを説明した。現在、業界で使用されているブラックマスを処理する2つの主な処理方法として湿式冶金または乾式冶金がある。
同氏は、EUの重要原材料法や米国のインフレ抑制法が電池リサイクルの重要な推進力であると指摘した。一方、日本では国内リサイクルシステムが開発され、韓国では自動車大手の現代自動車が大手電池メーカーと民間企業連合を結んでいる。「中国では 約57のバッテリー製造・リサイクル企業が参加する『ホワイトリスト』がある」と彼女は言う。「大手メーカーは、このリストに載っている企業としか仕事をしないと公言している。リストに載るための資格は非常に厳しいものである。例えば、マンガン、コバルト、ニッケルの合計回収率は98%以上でなければならない」とも。
同氏によると、リチウムイオン電池のリサイクル率はわずか5%程度だが、彼女の分析チームは、2030年までにリチウムの15%がリサイクル電池またはスクラップ由来になるだろうと予測している。ニッケルで12%、コバルトも44%がそれら由来になり、様々な製品から抽出されるようになると予測している。
ブラックマスの3分の2近くは、現在主流となっているNMCまたはLFPバッテリーから得られることになる。同氏によると、S&P Global Commodity InsightsのPlattsは年初に中国とヨーロッパのブラックマス9種類の価格の配信をはじめ、9月にはアメリカの4種類の配信も始めた。
2人目のゲストスピーカーであるインドのEcoreco会長兼マネージング・ディレクターのBK Soni氏は、次のように指摘した。
世界の電気・電子機器の売上高は約3兆7,500億ドルである。世界の電気・電子機器廃棄物発生量7,500万トンのリサイクルにかかるコストは750億米ドルである。一方、回収されたコンテンツは1,500億米ドルに相当する。
「では、なぜ生産者はいまだに販売額の2%をEPR(Enterprise Resources Planning:企業が持つ4資源「ヒト・モノ・カネ・情報」を有効活用する考え方やシステムを指す)システムに投入し、モデル全体が適切にリサイクルされるようにすることをためらうのか?」と同氏は聴衆に問いかけた。10kgの廃棄物を回収するのにかかる費用は10ドルであり、「わずかな投資」で健康、安全、環境の改善が保証されると指摘した。
「先進国が完全にリサイクルするのは費用対効果が悪い。発展途上国が先進国並みのリサイクルを行うには、さらに何年もかかるだろう。私自身は、2030年までに世界の電子機器廃棄物の50%はリサイクルされるだろう。なぜ100%ではないのかという疑問が生じるかもしれない」。
それは、商品の回収コストと回収される商品の価値との間に「実行可能性のギャップ」があるからだとソニ氏は言う。市場を創出するためには、そのための実行可能なEPRスキームが不可欠であると主張した。
BIRの貿易・環境担当ディレクターであるAlev Somer氏は、バーゼル条約の間近に迫った変更について説明した。
この条約は、電子廃棄物の越境移動を対象としている。2025年1月1日以降、条約締約国191カ国の国境を越えて移動するすべての電子廃棄物は、厳格な管理手続きの対象となる。政府は、他国からの電子廃棄物の輸入を希望するかどうかを決定する。これは事前インフォームド・コンセント(PIC)として知られている。
Somer氏は、リサイクル業者は事前にPICの手続きの準備をする必要があるとアドバイスしたが、彼女は次のように述べた。
このシステムは、世界的に統一されたものでも、電子化されたものでもない。また、BIRはバーゼル事務局やOECDに対して、国境を越えた取り決めを簡素化するよう働きかけている。「私たちは電子化され簡素化されたPIC手続きを持つことがいかに重要であるかというメッセージを、ビジネスサイドから発信すべき」。「バーゼルの作業部会で検討中だが、結論が出るまでには数年かかるだろう」と付言して、最後を締めくくった。
今回の「World Recycling Convention & Exhibition」にはメディアパートナーとしてIRUNIVERSE代表の棚町氏が出席し、現地の状況を報告している。
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(IRuniverse G・Mochizuki)
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