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ヴァーレ社とアス港、グリーン・スチール生産のメガハブ開発へ

 ブラジルの総合資源開発企業のヴァーレ(Vale S.A.)は、リオデジャネイロ州サンジョアン・ダ・バッラにあるアス港(Açu)で、直接還元法によるホットブリケットアイアン(HBI)生産のための一大拠点(メガハブ)開発する覚書をアス港と締結したと本年9月に発表した。リオデジャネイロ市から北東に319キロの位置にあるアス港は、2014年10月の開港以来、原油や鉄鉱石を扱う中南米最大で民営の資源・工業港としての地位を確立している。

 

 ギリシャの海運メディアであるSAFET4SEAによると、このメガハブ構想は、ヴァーレが鉄鉱石ペレットを供給、アス港の工業団地内に設置される鉄鉱石ブリケット工場がそれを直接還元法によりHBIを製造し、温室効果ガス(GHG)排出量の極めて少ないグリーン・スチールの製造をめざすというもの。

 

今回の協定の狙い

 今回の構想は、アス港と現地の研究者の協同研究の成果を考慮した取り組みであり、溶鉱炉の負担を大幅に軽減するホットブリケットアイアン(HBI)を使用し、既存の高炉や製鉄所などは現状のまま使用し、よって温室効果ガス排出量を削減、鉄鋼製造の生産性向上を目指す。現在、HBI は主に電炉で使用されており、このタイプの炉で HBI を使用すると、ブラジルの製鉄業界の脱炭素プロセスへのスムーズな移行が可能となる。

 

 ヴァーレとアス港との協定は、ブラジルにおいて低炭素鋼製品(加工と溶接がし易い)を生産する一大工業団地構想でもあり、ヴァーレはすでに中東の3カ国(サウジアラビア、UAE、オマーン)で同様の工業団地の設置に着手している。

 

 「国内でのユニークな港湾インフラ、戦略的な立地、ブラジルで最も競争力のある価格での天然ガス供給体制を備えたアス港が、ヴァーレ社と協力して国内外の鉄鋼の脱炭素化に貢献するユニークな特徴を兼ね備えていると信じている。」とアス港のCEO、ホセ・フィルモ氏は述べている。

 

 ブラジルは世界で最も重要な鉄鉱石と鉄鋼生産国の一つであり、ヴァーレはこの市場の中心的企業。高炉での HBI の使用により、温室効果ガス排出量を約25% 削減でき、サプライチェーン全体ではさらに大幅な削減が可能となるため、2030 年までに排出量を大幅に削減する目標に大きく貢献できる。

 

ヴァーレとは

 ブラジルの総合資源開発企業で、鉄鉱石、ペレット、マンガン、合金、金、ニッケ ル、銅、カオリン、ボーキサイト、アルミナ、アルミニウム、炭酸カリウムの生産・販売に従事。ブラジルに拠点を置き、鉄道、港湾ターミナル、鉱物運搬船を保有・運営する。特に自社保有・運航の40万トン級大型船である鉱石運搬船、ヴァーレ・マックス(Valemax)は日本にも何度か入港したことがある。

 

アス港とは

 ブラジルで唯一の民営港で、総額200億レアル(約3,000億円)の民間投資により建設され、今後10年間ではさらに同程度の投資が計画されている。この資源・工業港は、効率性、環境、イノベーションを柱に建設され、2014年から操業を開始、すでにブラジルで3番目に大きい鉄鉱石の民間ターミナルを有し、ブラジルの石油輸出の30%を担い、ラテンアメリカ最大の熱電発電パークを建設中で、世界最大のオフショア支援基地をも擁している。臨海工業団地を含めたアス港の総面積は130平方キロ、そのうち自然保護地区を除いた事業用地は90平方キロと、米国ニューヨーク市マンハッタン島の面積の1.5倍にも相当する。

 

 開発・運営に当たるのはプルーモ・ロジスティカ(Prumo Logistica S.A.)で、米国に拠点を置くエネルギー・インフラ投資会社EIGグローバル・エナジー・パートナースが91.7%、アラブ首長国連邦のアブダビ政府投資会社ムバダラが6.9%を出資する国際企業だ。

 

直接還元法

 直接還元法とは、鉄鉱石を固体のまま還元し、その後「電炉」に移して溶解する方法で、「高炉」法と比較してCO2の発生量が低く、鉄鉱石の還元と溶解を一貫して行うため、エネルギー効率が高いという特徴がある。日本では鉄鉱石に石炭由来の原料をまぜて酸素をとりのぞく高炉法が主流で、国内粗鋼生産の7割を占める。米国などでは鉄くずを溶かして作る電炉法が主流。自動車向けなど高い品質が要求される鋼材を大量に生産するには高炉が向くといわれている。

 

直接還元鉄(DRI)とホットブリケットアイアン(HBI)

 この分野をリードする神戸製鋼所(KOBELCO)のサイトによると、鉄鉱石を高炉に比べ低温で、天然ガスなどをもとに製造された還元ガスや石炭などの還元剤により直接還元する製鉄法により得られたものが直接還元鉄(DRI)。その難点は、再酸化しやすく、空気や水、特に海水に触れると発熱・発火することで、屋外保存や長距離の海上輸送には不向きで、プラントを製鋼設備に隣接して建設するという立地上の制約があり、この問題を解決するために開発されたものがホットブリケットアイアン(Hot Briquetted Iron、熱間成形還元鉄)。

 

HBIの画期性

 このブリケット技術の開発によって大量かつ長距離の輸送、屋外での長期保存が可能となり、製鋼設備に隣接せずともプラントを建設することができるようになった。

 

 HBIの開発は海上輸送ができるという点では画期的で、2000年以降においてDRI、特に粉状の海上輸送中の爆発火災による人命が犠牲となったYthan号の事故(2004年)などがあり、国際海事機関(IMO)も関連の安全基準の見直しを度々行ってきている。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

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