日本トムソン(6480) 24/3HI決算メモ ニュートラルからややポジティブへ変更
24/3期半導体不振等で大幅減額し18.7%減収63%営利減予想も25/3期以降収益急拡大へ
株価563円(12/6) 時価総額439億円 発行済株73501千株
PER(24/3DO予14.2X)PBR(0.56X)配当DO予19円 配当利回り:3.4%
・24/3H1は17.1%減収53.0%営利減と半導体製造装置、マウンタ向け不振で大幅減額着地
・24/3期想定以上の半導体不振等で大幅減額修正し18.7%減収63.0%営利減予想
・25/3期半導体向け再拡大、EV含め一般機械向け設備投資も回復し収益急回復期待
24/3H1は17.1%減収53.0%営利減と半導体製造装置、マウンタ向け不振で大幅減額着地
直線運動用軸受大手で半導体製造装置、電子部品実装装置向け等に強味。24/3HIは売上高284.81億円(会社計画比13.19億円減額、17.1%減)、営業利益20.40億円(同6.60億円減額、53.0%減)、経常利益30.07億円(同2.07億円増額、50.6%減)、税引利益15.86億円(同2.14億円減額、62.2%減)、受注高220.91億円(37.1%減)、生産高262.05億円(21.1%減)と円安差益で経常利益は増額も全体で大幅収益悪化に。
地域別で欧州を除き減収、日本は134.97億円(期初計画比11.03億円減額、17.7%減)とマウンタ需要が減退、米国は41.28億円(同1.28億円増額、10.5%減)と精密機械、医療機器向けが減退も為替でカバー、中国は41.09億円(同7.91億円減額、29.3%減)と全般に設備投資低迷で冷え込んだ。アジア他は32.55億円(同0.55億円増額、20.6%減)とシンガポール、台湾、韓国向けが減少、唯一欧州は34.90億円(同3.90億円増額、2.5%増)と一般産業向けが堅調で円安もあり微増に。
業界別では直販分が142.73億円(14.5%減)で、エレクトロニクス向けが41.98億円(33.5%減)とマウンタ、半導体製造装置向けが低迷、その他一般機械は72.70億円(4.2%減)と医療機器、ロボット向けが低調、市販海外代理店向けも142.05億円(19.5%減)と輸出の減少影響、国内外の設備投資減退影響で在庫調整の影響も大きく全般的に低調に推移した。但し金額は小さいが輸送用は12.55億円(10.4%増)と自動車産業の生産回復が寄与し増収に転じた。
利益面では減収影響が22.04億円と大きく、稼働率低下による原価率の悪化5.59億円などの減益要因があり、円安効果3.61億円も、大幅減益が避けられなかった。
24/3期想定以上の半導体不振等で大幅減額修正し18.7%減収63.0%営利減予想
上期の減額を受け、また下期も半導体、電子部品の回復の遅れ、中国の景気減速影響などを加味し、24/3期会社予想を大幅に減額修正した。24/3期は売上高555億円(期初計画比65億円減額、18.7%減)営利35億円(同30億円減額、63.0%減)、経常利益47億円(同20億円減額、55.2%減)、税引利益28億円(同17億円減額、62.5%減)予想とした。下期だけでは売上高270.19億円(同51.81億円減額、同期比20.3%減、上期比5.1%減)
、営業利益14.60億円(同23.40億円減額、同期比71.5%減、上期比28.4%減)予想となる。四半期推移でも24/3Q1が同期比12.9%減収、44.4%営利減、23/3Q4比9.5%減収、47.2%営利減、24/3Q2が同期比21.0%減収、59.5%営利減、24/3Q1比4.9%減収、4.0%営利減と前期比でも減収減益が止まっていない。24/3Q3がボトムとなるも生産調整などもあり、売上は会社想定に止まろう。実際、電子部品実装機(チップマウンタなどは足元も台数ベースで30%減、輸出金額でも30.6%減とボトムから回復していない。また日本の半導体製造装置販売(3カ月移動)では23年9月が同月比21.6%減と最大の減少率となっており、10月暫定でも17.1%減と厳しさが継続している。なお日本工作機器工業会統計による直動軸受生産金額推移では2023年10月は同月比43%減となっており、底這い状態が続いている。
但し、受注については24/3Q1が108.50億円(同期比39.2%減、前期比11.3%減)、24/3Q2は受注が112.41億円(同期比34.8%減、Q1比3.6%増)と受注はQ1でボトムを付けた模様で、受注についてはQ4に回復が見込まれよう。
地域別予想では日本が272億円(期初計画比29億円減額、15.4%減)と、マウンタ、半導体製造装置、工作機械、ロボットなどの不振、自動車生産の回復の遅れなどが影響する見通し。海外は283億円(同36億円減額、21.6%減)予想。中国が73億円(同37億円減額、38.8%減)と海外の減額分の全てを占める。上期以上に不透明感が増している状況とのことで、一段の落ち込みを想定している。北米は82億円(8.9%減)と医用、精密向けが不振も円安効果で計画並み。欧州は67億円(同3.71億円増額、0.4%増)と医用向けが堅調も円安効果が大きい。全体を通じ、最大仕向け先の中国での設備投資低迷、在庫調整の遅れなどの影響が大きい。
利益面では減収影響が大きく48.23億円、稼働率低下に伴う原価率アップで15.48億円、減収でも人件費アップなどで販管費削減効果が薄く販管費のプラス効果はほぼないと見込み、為替円安効果が4.38億円のプラスのみを増益要因として見込む。現状、為替は想定より多少円安に推移、但しTHKなども大幅減額しており、競争激化も影響があるとみられ、大きなプラス影響にはならないと判断、会社減額並みの収益に落ち着くとみられる。
25/3期半導体向け再拡大、EV含め一般機械向け設備投資も回復し収益回復期待
半導体関連の需要拡大から、2021年5月に作成した“中計2023”について、3カ年平均営業利益目標を平均45億円から平均70億円以上と大幅に上方修正した。しかし昨今の半導体生産、電子部品生産の低迷を受け、24/3期減額修正予想35億円で累計営業利益187億円にしかならず、中計平均70億円に対し8億円未達予想となる。
本格回復は25/3期上期にずれ込む見通しで、同社受注も本格回復は25/3期にずれ込もう。但し同社は今後の需要急回復に対応するため能力増強体制の計画は変えておらず、24/3期は23/3期比倍増の50億円の設備投資は実行予定。
11/28に発表されたWSTAの最新半導体市場予測では、2023年が9.4%減の5201億ドル、2024年は13.1%増の5884億ドルと2022年の5741億ドルを抜き、過去最大の生産となる予測を出した。この背景には生成AI関連やパワー半導体の爆発的な拡大、加えて在庫調整が完了しつつあるメモリも急回復、とりわけAIサーバーなどでHBM、DDR-5の本格普及なども寄与する見通しとしている。このため、半導体製造装置においても2025年は過去最高の生産額が期待される状況から、同社収益も改めて26/3期に向けて半導体関連は最高更新を目指す動きとなろう。なおマウンタについても5Gスマホ、車載関連での需要、更に部品の微細化、高速実装ニーズも高く、同市場も急回復が見込まれる。その他、ロボットでは多関節化でクロスローラ軸受の拡大、医療機器向け等の拡大などで軸受事業も23/3期並みに回復が見込める。全体として26/3期には再度売上高700億円にチャレンジを期待する。
足元、株価は23/3期減額修正会社予想EPS39.56円に対しPER14.2倍となっており、減額修正となってもプライム機械平均PER16.8倍に対し割安で、同様に減額修正のTHKの22.6倍、黒田精工の21.4倍に対しても割安感がある。中計累計営利に届かない予想となったものの悪材料は織り込んだと判断する。25/3期は収益が回復すると見られ、半導体市場の2024年最高額更新予想も出たこともあり、PBR0.56倍でしかも自社株取得も実施中(8/9決議、上限217万株、11/30現在32.2万株取得済み)。株価の下押しリスクは小さいとみられ、半導体生産回復で受注拡大が想定されることから、ニュートラルからややポジティブへ戻したい。
(H.Mirai)
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