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オハラ(5218)  半導体関連特殊ガラスで巻き返しへ

 キヤノン、富士フイルム、セイコーエプソンなどを主要顧客とする光学用特殊ガラス大手のオハラが23/10期決算及び新規3ヵ年中期経営計画を発表した。23/10期は直近会社計画に対して未達と厳しい決算となった。今24/10期はi線半導体露光装置向け高均質光学ガラスやフォトマスク用石英ガラスの半導体関連をエレクトロニクス事業がけん引役に営業増益転換を計画。新規の3ヵ年計画では営業利益の目標を27億円に設定、年率18%強の成長を目指す。

 

前23/10期は営業25%減益に

 23/10期決算と新規3ヵ年中期経営計画を12月14日に発表した。売上高は28,123百万円、前年比0.6%減、営業利益2,233百万円、同25.0%減となった。会社は3Q決算時に売上高を280億円、営業利益を25億円に下方修正していたが、その直近計画をも下回り厳しい実績となった。2Qまでは営業増益基調であったが、3Q以降に光事業が中国市場の需要減速による在庫調整に入り稼働率低下となり、原材料や燃料費にコストアップなどから収益が悪化。4Qはその基調が強まり営業利益が103百万円と前四半期比81.3%減と急ブレーキがかかった。

 

 そうした中で、エレクトロニクス事業は売上高12,320百万円、前年比8.0%増、営業利益2,274百万円、同24.9%増とFPD・半導体装置・材料企業の多くが減収減益、計画の下方修正をするなかでは大健闘となった。2Q~3Qの貯金が寄与しており、4Qのエレクトロニクス事業の営業利益も337百万円と前年同期比36.8%減となった。売上は好調を持続しており、半導体の在庫調整、設備投資の先送りの影響はない状況にあるが、8月が夏季の定期修理の時期にあったことの影響が大きいとみられる。

 

半導体露光装置向け特殊ガラス、フォトマスク向け石英が好調

 エレクトロニクス事業はOLED製造装置向けに使用される極低膨張ガラスセラミックス、i線半導体露光装置向け高均質光学ガラス(レンズ)や構造材、フォトマスク向け石英ガラスが業績のけん引役なっている。前23/10期ではOLED製造装置向け極低膨張ガラスセラミックスは低調な動きとなり、FPD向けのフォトマスク用石英ガラスも伸び悩みとなったが、半導体製造装置向けの特殊ガラスの売上は前年比20%超の高い伸びとなり、半導体フォトマスク用の石英ガラスの売上も同8%前後の増収と健闘したと推察される。

 

 i線半導体露光装置向け高均質光学ガラスはレガシー半導体、CMOSセンサーやパワー半導体向けの旺盛な設備投資需要に支えらおり、特に車載用のCMOSセンサーやEV向けのパワー半導体がけん引役に今後は市場拡大に弾みがつくとみられる。同社はそのトップ企業を顧客としており収益拡大に向けての見通しは明るい。半導体フォトマスク向け石英ガラスは国内メーカーが撤退した後の活況であり、同社の高稼働率の好環境を享受している。国内の半導体フォトマスメーカーの能力増強計画もあり、今後もフォローの風を受ける公算が高い環境にある。

 

今下期から業績回復し

 24/10期の期初計画では1—2Qは6.6%減収36.6%減益の計画も、下半期らの回復しから通期では売上高285億円、前年比1.3%増、営業利益27億円、同20.9%増の増収増益を計画する。光事業が上期までは2億円の営業損失となるが、通期では3億円の営業黒字転換を見込む。エレクトロニクス事業も上期中は石英ガラスの減速となるも半導体製造装関連の特殊ガラスの好調でカバーするも固定費負担増などから上期の営業利益は12億円、前年同期比6%の減益見通しであり、通期では売上高141億円、前年比14.4%増、営業利益26億円、同14.3%増を計画する。

 

 今期の会社計画は光事業の在庫調整や原燃・材料高や新規の熔解窯などの投資に伴う減価償却負担から慎重な計画にあり、上振れの可能性もあろう。

 

中期計画では年18%の営業利益成長を計画、蓄電池材料を新規のドライバーへ

 会社は今24/10期~26/10期の新中期経営計画を公表した。23/10期を最終とする前中期経営計画はコロナの影響や成長ドライバーとした新製品のスマホ筐体向けの耐衝撃・高高度のクリアガラスセラミックスの「ナノセラム」の不発もあり、計画した営業利益30億円には未達となった。

 

 新中計では26/10期に売上高320億円以上(今後3年間の年率成長率+4.4%)、営業利益37億円以上(同+18.3%増)、ROE6.5%以上(23/10期は3.4%)を目標とする。業績成長の取り組みとしては光事業の収益改善、安定化が課題となる。監視カメラ、車載センサー用などの新規用途やレンズ加工品の高付加価値製品の拡販と従来計画からの延長性での動きとなるが、外部との連携による価値創造や新規受注の獲得などの新規戦略が加えられた。成長ドライバーは半導体向けを中心としたエレクトロニクス事業となり、26/10期には売上高160億円(今後3年間の年率成長率+9.1%)、営業利益30億円(同+9.7%)を計画する。高均質光学ガラスの加工工程の処理能力の向上、石英ガラスの生産設備増強により、半導体露光装置向け製品の供給能力拡大に対応する。新規の成長ドライバーとしてリチウムイオン蓄電池・LiB向けの添加剤「LICGC PW-01」を掲げる。

 

 「LICGC PW-01」はLiBの正極材の添加剤(温度特性や性能の向上に寄与)として量産を開始しており、今後は半固体蓄電池、全固体蓄電池の材料としての開発を進め、年商10億円から20億円を目指す。長期的には金属リチウム空気電池やナトリウムイオン電池の材料としての開発を進める構えだ。

 

 ナノセラムの場合もそうであったが、需要が見込むとなるとその製品のコスト競争力や新規投資と固定負担による収益貢献のバランスがポイントとなる。この添加剤の開発は長期に亘っており、全固体電池の採用計画を持つトヨタの開発プロジェクトにも参加した経緯があることが大きな下支えとなっている模様だ。

 

<Appendix>

 同社は光学用ガラスの老舗メーカーであり、カメラレンズなどの光学ガラスの光事業、特殊ガラスと石英ガラスからなるエレクトロニクス製品の2事業からなる。一眼レフカメラなどで使用するハイエンド光学用ガラスで世界シェア45%前後にありHOYA(7741)と並び首位。また、エレクトロニクス製品ではOLEDやi線露光装置用の高均質光学ガラスなど主力製品であり、天体望遠鏡の反射板用特殊ガラスも手掛ける。石英ガラスでは半導体フォトマスク用を主体にFPD向けフォトマスク用も供給する。主要顧客はキヤノン、富士フイルム、セイコーエプソンなどであり、海外生産比率も過半を越えている。

 

<業績動向>

 

 

 

(叶 一真)

 

 

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