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日本製鉄:USスチールの買収について説明会を開催

 12月19日12時、日本製鉄は、先日20時に発表したUSスチール買収についてハイブリッドで説明会を開催した。説明は森副社長が行った。説明に使われた資料はこちら

 

<概要>

〇「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」としてともに前進

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

〇ステークホルダーへの貢献

●株主

 ・USスチール株主に対して全額現金で一株当たり55ドル/株の対価を提供。プレミアム40%(対12/15株価39.33ドル/株)

 ・日本製鉄の連結収益力と成長性を高め、株主価値を最大化

●顧客

 ・世界最高の技術とものづくりの力を融合、世界中のお客様により良い価値を提供

  収益力に貢献でき、ユーザーにも貢献できる(詳細は後ほど)

●従業員

 ・従業員に対する既存のコミットメントを尊重

●社会

 ・USスチールのサプライヤー、ユーザー、地域社会や、ともに事業を行う人々との良好な関係を継続し、社会から信頼される一員として貢献

 ・脱炭素化と持続可能な社会の実現に向けて、世界の鉄鋼業界をリード

 

〇子会社化スキーム・・受け皿会社を作って買収するのは、欧米では一般的な手法

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

●買収対価:55ドル/株

●買収総額:14,126百万ドル(約2兆100億円)

 負債含む企業価値:14,868百万ドル(約2兆1,200億円)

買収資金は日本国内の金融機関よりコミットメントレターを受領済み

●スケジュール

 2023年12月18日 合併契約締結

 2024年3月ごろ USスチール社株主総会

 関係当局の許認可取得次第、クロージング(2024年(暦年)2Q又は3Q)

 

〇財務諸表への影響

●キャッシュフロー

 USスチール社株主総会決議、関係当局の承認取得、その他合併契約に定める前提条件が満たされた後、USスチール社株主に対して合併対価を支払う

●バランスシート

 合併対価支払い完了日以降の当社連結バランスシートに、 USスチールの資産・負債を連結開始

 ・総資産: +20,395百万ドル(約2兆9,000億円)・・・総資産13.7兆円の巨大な会社になる

 ・有利子負債:

  買収資金相当の有利子負債が増加 +14,126百万ドル(約2兆0,100億円)

  USSの連結有利子負債を連結   + 4,159百万ドル(約 5,900億円)    

        計          +18,285百万ドル(約2兆6,000億円)

 ・D/Eレシオ:買収実行により、約0.5⇒約0.9へ・・・一過性だとみている

以降、USスチールのEBITDAと負債削減により回復・・・目標は0.7以下、05に近づく

●損益計算書

 8月中旬頃までにクロージングできた場合⇒ 同社2024年度3Q決算より連結開始(USスチールの2024年7-9月期を連結)

 8月中旬頃~11月中旬頃にクロージングできた場合⇒ 同社2024年度4Q決算より連結開始(USスチールの2024年10-12月期を連結)

 USスチールの2003年1-9月期実績 税前利益は1,212百万ドル/年(約1,700億円/年)

税後利益 975百万ドル/年(約1,400億円/年)

 

<意義>

〇グローバルな広がりを持つグループへ

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※インドの拡張入れたら1億トン、1兆円が見えた!

 

〇本買収は同社グローバル戦略に合致

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※グローバル戦略の完成の域に入った。市場で規模では中国>インド>米国と世界第3位だが、米国は先進国であり、高級鋼板の需要が大きい。高級鋼板でシナジー効果が期待できる。とりわけハイテンで期待できる

 

〇米国鉄鋼市場の魅力

先進国で最大の鉄鋼需要があり、同社の技術力・商品力を活かせる高級鋼の需要が期待できる市場

●高水準の国内鉄鋼需要

・米国は先進国中で唯一人口が長期的に増加を継続

・安価なエネルギー、世界経済の構造変化を背景に、エネルギー、製造業等の鋼材需要分野における米国内回帰の動きが顕著

・インフラ投資法に基づく財政支出による鉄鋼需要増加

●輸出に依存しない国内需要中心の需給構造が出来上がっており、魅力的な市場

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※米国は保護主義なので関税25%と高い。また、中国品などはロッキー山脈を越えてこない。

 

〇両社の技術力を融合し新たな価値を創造

 補完的な部分と同社が優れている部分もあるので米国で(販売を)伸ばせる

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※子会社後、シナジーについて具体的に検討する

 

〇共通目標:2050年までの脱炭素に向けて

 両社の先端技術を融合、カーボンニュートラルへの取り組みを更に推進、世界の鉄鋼業界をリード(両社の手法は異なる)

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

<USスチールの強み>

〇概要

 自動車向けを含む薄板を中心とした、米国内有数の高炉・電炉一貫メーカー電炉能力増強計画を推進中

 鉄鉱石鉱山を保有し、高炉・電炉向けペレット・電炉向け型銑を自給

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※薄板と鋼管が中心・・・2,000万トン/年

※保有鉄鉱石鉱山で100%受給できる

 

〇強み

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※ブランド力が高いため、ブランドは維持していく

※製造資本と自然資本はバランスのよい構成になっている

※財務資本は現社長になって良くなっている

※現社長は人を大切にする「安全が大事」・・・話せば、必ずそこから話が始まる

 

●戦略投資推進状況

 原料工程から製品工程までの体質強化・能力増強投資が予定通りのスケジュール・予算で進捗中

 ・・・2024年以降、キャッシュを生んでくれる会社に

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

※Big Riverの無方向性電磁鋼板ラインは最新鋭、Big River2で能力倍増へ

 

●最先端の電炉ミニミル

 ・USスチールは2019年に最先端の電炉ミニミルBig River Steel を買収、2021年に完全子会社化

 ・無方向性電磁鋼板ラインが2023年10月に稼働、めっきラインが2024年稼働予定

 ・能力倍増に向けてBig River 2(電炉~薄板一貫ライン)を建設中

  敷地面積は東日本製鉄所君津地区の約2倍

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

●薄板事業収益力

 高水準のコスト・品質競争力で、安定的に収益を獲得・・・収益力が高く、品質も高レベルにある

出所:会社発表資料よりIRU作成

 

 同社の強み以下は(USスチール向けに作成した資料なので)参照

 

 

<主なQ&A>

Q、買収発表後に同社株価が下落して始まったが、マーケットは買収額の大きさや、エクイティファイナンスを危惧しているようですが・・・

A、買収の目安として生産能力1トン当たり1,000ドルと考えている。買収総額14,868百万ドルをUSスチールの生産能力で割り返すと743ドル・・・高いと思っていない。

  また、エクイティファイナンスは基本的に考えていないが、行ったとしてもダイリューション(希薄化)を起こさないように考慮する。また、財務は一時的に弱るが、2024年度から改善してくる。

 

Q、ユニオンが、買収に反対しているようですが・・・

A、AUWよりUSWは、きちんと話ができる。今は直接対話できないが、以前から接点がある。昔と違って会社をつぶしてまでもと考えていない。USスチールは1,000人のレイオフを行っているが問題なっていない。

 

Q、買収が続いていますが、今後の考え方は?

A、今回の買収で1億トン、1兆円が見えてきたので続かないとみている。今回の買収は過去最高の買収額でもあるので。

 

Q、独禁法など規制はクリアできるのか?

A、同社から米国向け輸出が、ほぼゼロなので問題と思う。また、海外資本についても、同盟国でない国に対する規制なので、問題はないと考えている

 

Q、今回の買収で、日本の鋼種に変化がでるか?

A、日米間の鋼材の輸出入も含め、今は考えていない。

 

A、今回の買収は単独で行ったのはどうしてか?

Q、いつもアルセロールミタルとJVを行うわけではない。今回は魅力的なので単独(相乗効果が期待できる)で行った

 

 

(IRuniverse 井上 康 )

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