「不適正ヤードへの対応」に注力――日本鉄リサイクル工業会、4年ぶりの新年会開催

木谷会長
日本鉄リサイクル工業会は11日都内のホテルで、4年ぶりとなる「令和6年 新年会」を開催した。挨拶に立った木谷謙介会長は、現在「4つの取り組みの方向性に基づき活動を行っている」と述べ、2つを工業会内部の取り組み「➀会員企業の現状・課題の把握」「②把握した課題における方策と検討」、残り2つを対外的な取り組み「③鉄スクラップの国内循環促進について行政・関連団体と協議」「④鉄スクラップ業界の社会的認知度と向上」と整理、その推進に意欲を示した。また工業会として注力するテーマとして「不適正ヤードへの対応」も挙げた。
木谷会長は冒頭、年初に発生した能登半島地震の被災者へのお見舞いの言葉とともに、早期復興への期待を表明した。
地域社会に様々な波紋を投げかけている不適正ヤードへの対応については、工業会内部に昨年5月、「適正ヤード推進委員会」を設置したことを挙げた上で、「経済産業省のみならず警察庁の皆様にもご協力を頂きながら、スクラップヤードの適正化に向けて全国各地の状況報告あるいは各地の行政の対応について情報共有をするとともに、今後の取り組みについて議論を深めている」と言及した。また「今年も引き続き(適正ヤード推進委員会)を開催して1日も早く不適正なヤードがなくなるという方向に向けて動いていきたい」とした。
この後、来賓として経済産業省製造産業局金属課金属技術室の川村伸弥室長、普通鋼電炉工業会の渡辺敦会長、日本鉄源協会の野口祐二副会長が順に挨拶した。
川村室長は、アフターコロナにより活気を取り戻した経済情勢、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化・中東紛争の激化など激動する国際情勢にも触れながら、2023年の鉄スクラップ市況について、「スクラップ価格は約5万円前後まで高騰し、比較的高い水準で推移した」と振り返った。その上で、昨年3月の成長志向型の資源自律経済戦略の策定、工業会をはじめとした鉄鋼産業団体関係者が参画する産官学パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ(CPs)」の立ち上げなどを挙げ、鉄スクラップ産業の振興に向けた同省の直近の取り組みに言及した。
川村室長
次に挨拶に立った渡辺会長も、適正ヤード推進委員会について触れた。「違法な業者については、行政や関連団体と一緒に連携を強化して取り組んできた」と23年を振り返り、「多くの鉄鋼メーカーは、違法な業者のヤードから出るスクラップを受け入れないという姿勢を表明した。不適正ヤード問題に対し工業会とメーカーが同じ時期に同じ方向を向いた取り組みを始めた。これは非常に意義深いことで、今年もしっかり進めてまいりたい」とした。
渡辺会長
野口副会長は、経産省が昨年末に公表した鋼材需要見通しについて言及し、「23年度の粗鋼生産の見通しは8,810万トンで、前年を若干上回る見通しとなった。これは皆さんのご協力あってのこと」と強調。カーボンニュートラル社会実現に向けたCO2排出量削減を巡って「鉄鋼原料としてのスクラップの重要性が増している。現状のリサイクルの強化や新しい仕組みの導入・検討などを今後しっかり進めていく必要がある」と語った。
野口副会長
(IRuniverse G・Mochizuki)
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