ファナック(6954) 24/3Q3決算電話会議メモ ややネガティブ継続
24/3期予想を9.4%減収30.9%営利減に再度微増額調整も回復鈍く、25/3期回復も緩やか
株価4300円(1/26) 時価総額43132億円 発行済株千株1003073
PER24/3期DO予(32.8X)PBR(2.44X)配当還元率60% 配当利回りDO予1.8%
要約
・24/3Q3は10.5%減収22.1%営利減、受注17.5%減と在庫調整長引き受注減で低迷続く
・24/3期予想を再度微調整、9.4%減収30.9%営利減、受注21.2%減予想も回復鈍い
・25/3期はロボット、FAの回復期待も回復力鈍く収益性ではMIX悪化で利益伸び悩み
24/3Q3は10.5%減収22.1%営利減、受注17.5%減と在庫調整長引き受注減で低迷続く
1/26に24/3Q3決算発表、同日電話会議が開催された。24/3Q3は売上高1968億円(同期比10.1%減、Q2比0.5%増)、営業利益409億円(同22.1%減、同20.5%増)、経常利益490億円(同21.3%減、同10.2%増)、税引利益344億円(同24.5%減、同2.3%増)、受注高1655億円(同17.5%減、同2.1%減)と収益低迷が続いた。但しQ2比では在庫調整による利益改善が見られ、利益率が改善した。
地域別売上を同期比で見ると中国、国内、中国以外アジアが減少。中国は367億円(41.5%減)で、FAが94億円(47.2%減)、ロボット184億円(39.3%減)、ロボマシン81億円(42.1%減)とEV、スマホ、工作機械など全般に不振で低迷。一方、米国は601億円(13.5%増)、特にロボットが442億円(20.8%増)、サービス132億円(10.9%増)と自動化ニーズが旺盛、Q2比でも19.1%増と好調。欧州も425億円(10.5%増)で、ロボット219億円(17.1%増)、サービス96億円(18.5%増)が牽引、Q2比でも1.7%増と増収を確保している。
製品別では同期比較でロボット、サービスが増収となり、サービスは連続で過去最大売上更新となる。製品別最大売上部門のロボット(収益性では劣ると見られる)は976億円(2.5%増)で21/3Q3以降15四半期連続で前年同期比プラスを継続している。最大売上は米州で442億円(20.8%増)、欧州219億円(17.1%増)とEV関連需要が堅調、中国は184億円(39.3%減)とEV関連が急減、在庫調整が進んでいない。収益性が高いとみられるFAは413億円(同期比33.9%減、Q2比4.3%減)に。中国が94億円(同期比47.2%減、Q2比では17.5%増)と工作機械など設備投資低迷が継続も在庫調整が進みQ2がボトムに。国内も工作機械受注減で104億円(同期比38.1%減、Q2比3.7%減)と低迷続く。
受注は1655億円(同期比17.5%減、Q2比2.2%減)と3四半期連続で2000億円割れに。地域別では全地域同期比減、Q2比では欧米向けが増加した。製品別ではサービスを除き減少、Q2比ではロボットが拡大、FAは再度400億円割れに。
BBレシオは5四半期連続で1を割り0.84まで低下、下げ止まっていない。事業別ではロボットが0.77と中国などの不振で3期連続1割れ。FAは6四半期連続1割れ。ロボマシンも2四半期連続1割れに。
利益面では全体の減収影響に加え収益性の高いFAの大幅減収影響でMIX悪化が大きく、総利益率が2.0ポイント低下し37.7%、販管費負担も1.0ポイント上昇し16.9%となったことが影響。一方でQ2対比では未実現利益が増加しQ2比3.7ポイント上昇、Q2対比Q3の営利増70億円の中で未実現利益の影響が最大の増益要因となったとのこと。
24/3期予想を再度微調整、9.4%減収30.9%営利減、受注21.2%減予想も回復鈍い
会社側は24/3Q3累計収益を受け24/3期予想を再修正、売上高7715億円(10/31修正予想比77億円増額、9.4%減)、営業利益1219億円(同36億円増額、27.5%減)予想とした。
部門別、市場別予想の開示はないが、Q3、Q4受注が同レベルに止まると判断している。中国ではEV関連が一服しているとのこと。FA受注については在庫調整が進んだものの、中国の比率が高く受注も大きな改善は期待できないとのこと。ロボットは在庫調整が長引いており受注は一服、欧米も景気スローダウンを受けて伸びが期待できない。従来、ロボット工業会よりも受注の落ち込みが小さかったがQ2には工業会31.8%減に対しファナックは34.0%減、Q3も工業会28.6%減に対し同社は30.2%減と工業会並みの受注減となっている。但し人出不足、自動化ニーズがあり、同社はQ2ボトムで緩やかな回復を見込む。
当面、受注状況が改善しない見通しも、売上進捗率は多少上回り、会社再修正予想を多少上回る収益が見込める。なお利益面では為替前提をQ4が1$=135円としているが、円建て輸出が大半とみられ、円安による価格競争優位が市場の悪化で相殺されると見られる。
25/3期はロボット、FAの回復期待も回復力鈍く収益性ではMIX悪化で利益伸び悩み
25/3期はEV設備投資の見直等でロボットの受注伸び悩みが懸念されロボット受注の伸びが1ケタにとどまるとみられ、受注残高が適正化する中でロボット売上が伸び悩もう。実際、日本ロボット工業会の受注見通しも9000億円(6%増)程度の受注に止まり、大きな伸びとはならない見通し。FAも国内外での工作機械受注は底入れしたとみられるが、日本工作機械工業会予測が1兆5000億円とほぼ横ばい、しかも上期は底バイで下期の回復を見込んでおり、こちらも力強さに欠ける回復が懸念される。このため25/3期収益は下期からの回復に止まり、受注増加も売上は受注残高の減少影響で減収に止まるとみられる。但し工作機械の加工に特化した制御装置からスマートファクトリーに向けて一新した最新CNCシステムを発表、加工性能とエネルギー最適化を両立、工場全体のスマート化を担う。このため新たなニーズの取込みで下期にFA受注急回復はあり得る。ロボマシンはスマホの不調が続いており、射出成形機は23年12月の受注台数が20.4%減、14ヶ月連続減少と不振を脱却しておらず、同社シェアは保つも低迷が長引こう。ロボドリルもスマホの向けの低迷、工作機械工業会受注と同じ傾向で、受注回復は25/3期上期にずれ、売上は上期まで不振が続こう。なおサービスについては累積納入台数の増加から収益拡大が見込める。
全体として25/3期の成長が見えない状況で、サービス部門の伸び以外では伸びが期待できず、コスト削減で利益は横ばいを確保するに止まり、本格回復は26/3期にずれ込もう。
株価は受注低迷継続見通しを受け、10/30には年初来安値3603円を付けた。現在24/3期再修正予想EPS129.09円に対しPER33.3倍はプライム電機平均PER20.7倍に対し割高で、競合の安川29.5倍に対しても若干割高感があり、海外の制御機器メーカーのシーメンス16.6倍、ロボットのABB19.8倍に対しても割高感がある。来期も収益の伸びが期待できず、半導体製造装置メーカーと比較し劣るとみられ、ややネガティブ継続とする。
(H.Mirai)
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