マンガンに揺れるラトビア アフリカ産ロシア向けの経由地、制裁強化で打撃警戒
バルト3国の1つであるラトビアが、マンガンの対ロシア輸出を巡って揺れている。きっかけは欧州連合(EU)が計画する対ロ貿易制限の強化。ラトビアはマンガン鉱石やアルミニウムのロシア向け輸出の通過地域に当たり、制裁強化による物流分野への打撃懸念が浮上している。
■鉄道会社にマンガン輸送の新規契約を避けるよう要求
(google mapより)
ネットニュースのferroAlloynetは3月28日、ラトビアの国営鉄道事業者であるラトビア・ジェルツセルシュ(LDz)の評議会と管理委員会が、系列の物流会社であるLDz Cargoに対し、「制裁対象となり得る貨物について、ラトビア領土経由の鉄道輸送の新規契約を避けるよう求めた」と伝えた。LDz幹部は、「マンガン鉱石や類似の貨物が、EUの制裁リストに掲載される可能性があるため」と説明したという。
EUは3月22日に提出した首脳会議への草案で、ロシア産とベラルーシ産の穀物への高関税を課すとともに、周辺国を経由したロシアへの兵器材料の輸出を禁止することを盛り込んだと伝わっていた。EUのラトビア代表はこれに際し、ラトビア川の姿勢として「原材料の通過禁止対象をマンガン鉱石と酸化アルミニウムに拡大する」と表明したとされる。
■カラハリ砂漠→ラトビア→ロシア
マンガンは粗鉄生産に必須の材料であるうえ火薬などの兵器の材料になる。中国産が多いが南アフリカのカラハリ砂漠に大型鉱山があり、ここにロシアの新興財閥(オルガリヒ)で西側諸国からの制裁対象になっているヴィクトル・ヴェクセルベルグ氏が権益の約半分を保有する企業UMKが採掘に携わっている。
ラトビアはロシアのウクライナ侵攻前から、こうしたアフリカ産マンガンのロシアへの輸出の経由地だった。マンガンは同国のリガ港とベンツピルス港を経由してロシアに運ばれていたほか、鉄道輸送でも輸出されていた。それが侵攻によって事情が変わってしまった。
ラトビアはEUの対ロ制裁に参加しているものの、ロシアがウクライナに侵攻した2022年、なぜか経由量が急増してしまったという。これをうけて慌てたEUのラトビア代表がEUの計画提出を前にマンガン輸送の制限方針を示したのが真相のようだ、
しかし、実際に通過禁止が実現した場合、ラトビア経済への打撃は少なくない。報道によれば、ラトビア経済に起こりうる損失は、港湾使用料で数百万ユーロ、鉄道で1000万ユーロ以上と推定されている。
■ロシア側の混乱も逆風
ラトビアのマンガン貿易は、ロシア側からも逆風にさらされている。
ロシア当局は3月までに、ロシア最大のマンガン鉱石受取人であるチェリャビンスク電気冶金工場の国有化を決めた。元の所有者で世界的なビジネスマンの1人であるユーリ・アンティポフ氏が2月下旬に詐欺の容疑で当局に拘束されたためで、ロイター通信の2月の報道では、ロシアの検察は同氏の拘束前から同工場を含むアンティポフ氏保有の3施設の国有化を目指していたという。
ラトビアの物流関係者の話として伝わったところでは、チェリャビンスク電気冶金工場向けのマンガンに関しては既に最後の貨物がラトビア国境を超え、ラトビアとこの工場の貿易関係は途絶えた。
戦闘が長引く中、ラトビアを含む周辺国には直接間接の影響が続き、それが刻々と変化してもいる。
(IR Universe Kure)
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