銅先物、1万ドルで下値固め 投機買い強まる、中国需要鈍く上値は限定か
5月10日のロンドン金属取引所(LME)で、銅の3か月先物価格は$1万0063/tonと4月30日以来10日ぶりに節目の1万に乗せた。1万ドルの水準で下値を固めた様相が強まっている。ただ、中国景気の回復が本格化したとの見方は少なく、実需が鈍い中で投機買いが押し上げている面もありそうだ。
■供給減懸念も実需も鈍く
過去3か月間のLME銅価格の推移($/ton)
5月10日の銅相場の上昇は、予想を超える米新規失業保険申請数を受けた米年内利下げ観測が直接の材料となった。5月15日発表予定の4月の米消費者物価指数(CPI)が低下するとの予想も多く、インフレが収まったとの見方から米国が利下げに踏み切るとの期待は強まっている。
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銅は構造的な供給懸念を抱える。パナマの銅鉱山の閉鎖や中国の減産で供給が細るとの警戒が根強い。ただし、需要も回復したとは言いがたい。銅需要の大きな中国経済は回復の足取りが鈍く、「不動産のデータがなお弱く、固定資産投資は結局のところ2020年から横ばいで民間の部門の伸びはほとんどない」(金融アナリスト川上敦氏)との指摘は多い。
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短期的にも中国での銅需要は低迷した。上海有色網(SMM)が伝えた5月3-9日の銅精錬状況は、労働節(メーデー)の大型連休が重なったこともあり、精錬企業の稼働率は5割程度にとどまった。これは2023年の同期間に比べ5%ほど低い水準と言い、短期にも中長期にも中国需要は弱めと言えるだろう。
■「みんな銅事業に向かっている」
実需が弱い中、足元の銅価格の上昇は投機的な面が強まりつつある。非鉄金属を扱う外資系商社の日本支社幹部は5月13日のIR universeの取材に対し、「今は銅が儲かるので、みんな銅事業に向かっている」と話した。
5月13日付のmining.comも、「銅を含む卑金属の最近の上昇は、利益を逃すという投資家の恐れにかかっている」との外資系証券の見方を伝えた。この証券会社は先行きの金属価格について、投機買いに支えられた上昇であるため「下落のリスクがある」と指摘したという。
SMMも、週刊レポートで5月13日の週のLME銅の予測レンジを「$9800-1万0100/ton」とした。しばらくは1万ドルをわずかに上回る水準での足踏みが続きそうだ。
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(IR Universe Kure)
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