東京ガスと王子製紙 苫小牧工場における純国産e-メタン製造の共同検討を開始
5月9日、東京ガス株式会社(社長:笹山 晋一)と東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(社長:小西 康弘、以下「TGES」)は、王子ホールディングス株式会社(社長:磯野 裕之)、王子製紙株式会社(社長:船田 髙男)と、王子製紙苫小牧工場における再生可能エネルギー由来のグリーン水素と回収したCO2によるe-methane*1(以下「e-メタン」)の製造に向けた共同検討開始に合意したと発表した。
王子製紙苫小牧工場で検討するe-メタン製造の流れ
e-メタンは、排気ガス等から回収したCO2と、再エネ由来の電力による電気分解で生成した水素の合成によって作られる。燃焼してもCO2排出が実質ゼロとなるエネルギーであり「G7エネルギー・環境大臣会合の共同声明」*2において「e-メタンの様なカーボンリサイクル燃料が脱炭素に向けて重要となり得る」ことが記されている。
e-メタンの大量生産には再エネ電力やCO2の安価かつ安定的な調達が必要。そのため、現在は調達の条件が整った海外の製造拠点から日本へ輸送するプロジェクトが先行しているが、将来の普及拡大に向けては、国内製造拠点の探索・整備も不可欠だ。
各社は、苫小牧工場が有する再エネ電力を用いて製造したグリーン水素と、同じく苫小牧工場で発生・回収したCO2の合成による純国産*3e-メタンの製造、およびその活用について共同で検討を行う。再エネ電力は既存の水力発電設備*4や今後設置を検討する太陽光発電設備により発電し、CO2はパルプ製造工程で副生される黒液*5を燃料とする黒液回収ボイラ*6からカーボンニュートラルな燃料由来のCO2として分離・回収する。
また、e-メタン製造手法を技術進展に応じて柔軟に選択する(例:ハイブリッドサバティエ技術等*7)ほか、水素製造の過程で副次的に発生する再エネ由来の酸素*8の有効活用も検討していく。
2030年までに、苫小牧工場へ数十m3/h級のe-メタン設備の導入を目指すとともに、2030年以降には設備を1,000m3/h級(一般家庭2万世帯分に相当)へ拡大することも見据えている。
2050年までにネット・ゼロ・カーボンを目指す王子グループと、e-メタンや水素製造をはじめとする最先端の脱炭素技術を保有する東京ガスグループは、熱エネルギーの脱炭素化*9の実現に向け同検討を推進するとともに、これに関わるメーカー各社、近隣企業、自治体と協業パートナーの輪を広げることも視野に、脱炭素社会の実現に向け取り組みを加速していくという。
*1:グリーン水素(H2)等の非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタン。天然ガスの代替燃料として使用可能。e-methane利用に伴いCO2が排出されるが、原料CO2はもともと大気中に放出されているためCO2は増加しない。
*2:G7サミット(首脳会合)に関連して開催される閣僚会合の一つ。2023年4月に札幌で開催。
*3:国内で作られたグリーン水素および国内で回収したCO2により製造する。
*4:王子製紙の所有の水力発電。苫小牧工場の開設に先立ち1910年に竣工した千歳第一発電所(出力25,800kW)ほか4箇所
*5:木質チップから製紙原料であるパルプを製造する際に副生される液体。木質チップ由来のため再生可能エネルギーと位置付けられ、燃料使用に伴うCO2排出は温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)上の算出対象外。
*6:黒液を燃料として使用するボイラで燃焼時にパルプ製造過程で再利用するナトリウム成分(ソーダ成分の薬品)の回収も行う。
*7:ハイブリッドサバティエ技術等の詳細はこちらhttps://www.tokyo-gas.co.jp/letter/2023/20230928.html
*8:再生エネルギーで水を電解した時に発生する酸素。
*9:グリーン水素やe-メタン等の活用などを通じ、CO2排出量を実質ゼロとみなせる。
(IR universe rr)
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