2024年5月のチタン原料市場は上値の重い展開となっている。4月に上昇基調だった後だけに、5月に入ってからは値動きの鈍い展開が目立つ。世界の製造業の回復ピッチが今一つである一方、原材料である鉱石価格の高止まりが原料入手意欲を鈍らせ、全体に様子見気分が広がっている。

 

チタン精鉱

 

過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)

 

　チタン鉱石は小動き。3月末に乗せた仲値$400/tonを挟み小幅な値動きが続いている。4月11日に$405を付けたが、その後の4月25日に$397.5に下げるなど上値が重い。

　中国専門メディアのFerroAlloyNetによると、国際的な鉱山所有者は主に古い顧客との定期的な取引にとどめており、価格の変動に結び付かない状況を生んでいる。ベトナムやオーストラリアなど主要生産国の輸出は当局制限などにより限られているが、需要もそれほどは伸びず、ひっ迫感は薄い。供給不足分をロシア産が補っている現状もあるようだ。

　長期の水準としては、2021年4月から$400前後で高止まりしている。

 

　ルチルは2023年4月から値動きなし。

 

過去3か月間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)(us/ton)

 

二酸化チタン

過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)

 

　チタン原材料全体の9割近くを占める塗料向けの二酸化チタンも上値の重い展開。3月29日に仲値$2400/tonと心理的節目の$2400台に乗せたが、4月18日には$2380と再び節目を割り込んだ。5月初旬には$2310まで下げている。世界の製造業需要が今一つで川下業者の様子見気分が根強く、膠着的なムードが強い。

　鉱石価格の高止まりも原材料の購入に二の足踏ませ、二酸化チタン価格の押し下げ要因になっている。中国の上海有色網(SMM)は4月末発表の最新レポートで、二酸化チタン価格について「市場の様子見センチメントが強いため、短期的には軟調に推移する可能性がある」と予想した。

 

チタンスラグ

　やや弱含んでいる。FerroAlloyNetによると、中国では国産の酸性チタンスラグの供給は比較的十分で、特に新規注文において企業間の価格競争が起きつつあるという。

 

チタンスポンジ

 

過去3か月間の一般産業向けスポンジチタン価格の推移( China)($/kg)

 

　金属チタンはほぼ横ばい。中国の一般産業向けは5月9日に$7.422/kgを付けた。既に2023年12月以来4か月ぶりの高値圏にあり、一段と上値を追う動きは鈍い。

　FerroAlloyNetによると、中国のチタンスポンジメーカーは早期注文の処理と新規注文の安定獲得に成功している。在庫はあるがそう多くはなく、全体に堅調なムードだという。

 

　航空機向けスポンジチタンは2023年1月から横ばい。

 

過去3年間の航空機向けスポンジチタン価格の推移($/kg)

 

四塩化チタン

 

過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)

　唯一、段階的に上昇した。4月11日に仲値RMB6600/mt、4月18日にはRMB6700と相次いで節目を超え、2023年8月以来の高値水準を回復した。ただ、5月に入ってからは値動きがない。

 

 フェロチタン

 

過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)

 

　3月14日に$7.55/kgと2023年6月以来の高値水準に付けた。その後4月中旬に一時的に$7.5に下げたがすぐ元の$7.55に値を戻した。しかし一段の上値を追う動きは乏しく、5月に入ってからも動きはない。

　FerroAlloyNetによると、5月に入り中国の製鉄所がフェロチタンの入札を開始し、中低品質のチタンフェロチタンの新規受注の見積もりが増加している。ただ、ほとんどのフェロチタンメーカーは早期に安値で販売することはせず、新規注文を安定して受け付ける方向で調整しているようだ。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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