ベトナム、レアアース原産物の輸出禁止を検討か 副首相が方針、埋蔵量は世界2位
ベトナムのチャン・ホン・ハー副首相は6月4日、国会での質疑応答で、「レアアース(希土類)原産物の輸出を禁止することを検討すべきだ」との考えを述べた。インドネシアが2020年にニッケル鉱石の輸出を止めたのは記憶に新しいが、資源国の間では単純な資源輸出が先進国による搾取につながるとの懸念が根強い。
■「大国に支配される」のはもうごめん
ベトナムの地図と主な鉱山
(出所:JOGMEC)
ベトナム・ネットなどの現地英紙が6月6日までに伝えた。報道によると、ハー副首相はレアアース市場について「大国に支配された複雑な市場だ」と指摘。政府は天然資源環境省と関連省庁に対し、レアアースの埋蔵量を評価するための調査を実施し、市場の需要と供給に基づいて開発の原則を決定するよう指示したと詳述した。
ハー氏はまた、「レアアース原産物を輸出せず、レアアースの需要がある産業部門の発展を促進し、より持続可能な需給を確保する必要がある。これは投資を誘致するチャンスでもある」とも話したという。
■埋蔵豊富も採掘システム確立されず
ベトナムはレアアース埋蔵量では中国に次ぐ規模を誇る。特に北部の山岳地帯であるライチャウ省、イェンバイ省、ラオカイ省などに多く埋蔵している。しかし、開発と加工を結びつける包括的なシステムは確立されておらず、国が独占的な技術秘密を持っているため、レアアース生産量は年間1000トン程度と中国に遠く及ばない。
世界のレアアース埋蔵・生産量
(出所:JOGMEC)
国会答弁では、半導体などレアアースを使用した製造業の振興方針も他の高官らから示されたという。インドネシアはニッケル鉱石の禁輸措置の導入後、中国企業などを加工向けに誘致し、今年5月にはロンドン金属取引所(LME)に関連の金融商品を上場するに至った。インドネシアの成功を横目に、他の東南アジア諸国にも負けじの気概がにじむ。
関連記事:LME、インドネシア精錬ニッケル商品の上場承認 鉱石から加工へ産業転換、中国後押し | MIRU (iru-miru.com)
資源争奪に大国の思惑が交錯する中、資源国側にも思惑は高まる。単純な資源輸出国として利用されるのではなく、製造業振興へと段階を引き上げようとの意欲が強まっている。
(IR Universe Kure)
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