中国のニッケル銑鉄&鉱石価格動向(24年6月第2週)銑鉄半年ぶり高値も伸び悩み
2024年6月第2週の中国のニッケル銑鉄とニッケル鉱石価格は伸び悩んでいる。ニッケル銑鉄(NPI)価格は供給ひっ迫と需要拡大期待から5月に上昇し、半年ぶりの高値圏にある。ただ、6月に入ってからは6月8-10日の端午節の連休を前に様子見気分が強まり、伸び悩んでいる。一方の鉱石価格は4月から動きがない。
■6月は端午節で様子見
過去3ヶ月間のニッケル銑鉄価格の推移(NPI content 10-15% China)(RMB/Nickel/MTU)
ニッケル銑鉄価格は5月30日に仲値RMB1010/MTUと2023年11月末以来およそ半年ぶりの高値を付けた。インドネシアのニッケル鉱石生産の承認が遅れる中、5月には銑鉄材料としてのニッケル鉱石の供給がひっ迫するとの懸念が強まった。一方で5月発表の中国の経済指標が底堅かったため需要改善期待も強まった。
しかし、上海有色網(SMM)の6月6日のリポートによると、5月の実際の需要は思ったほど伸びず、また6月に入ってからはインドネシアの状況に対しても様子見を決め込むムードが強まった。Ferroalloynetによれば、高品質NPIでは足元で値下げの兆候も出ているという。
過去3ヶ月間のニッケル鉱石価格の推移(1.8min CIF China)($/ton)
一方、中国のニッケル鉱石価格は横ばい。4月4日に仲値$72/tonを付け、2か月以上に渡り同水準で推移している。水準としては2020年夏以来の安値圏。中国国内でのニッケル鉱石の供給自体は充足しているとの見方が続いている。取引自体も少なく、在庫は積み上がり気味という。
■ニッケル精錬価格は上昇も上値限定
精錬ニッケル価格は下落基調となっている。ロンドン金属取引所(LME)でのニッケル価格は6月8日に現物$1万7950/tonを付けた。上海先物取引所(SHFE)のニッケル価格は6月7日に現物でRMB14万3086/tonとなった。どちらも5月下旬に直近高値を付けた後、買い一服感から下落に転じている。LMEは5月29日に$2万を、SHFEは3月3日にRMB15万の節目をそれぞれ割り込み、ともに4月中旬の水準に戻している。
過去3か月間のLME($/ton)とSHFE(RMB/ton)のニッケル価格の推移
中国国家統計局が5月31日に発表した中国の製造業景況感指数(PMI)は49.5と好不況の境目となる50を下回った。繁忙期にもかかわらず中国国内の銅在庫が増加しているとも伝わり、中国景気の先行き不透明感とそれに伴うニッケル需要の先細り懸念が強まっている。6月7日発表の米雇用統計が強含み、ドルが他国通貨に対して上昇したことも国際金属相場の下落につながり、ニッケル価格にも流れが波及した。
(IR Universe Kure)
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