コバルト市場近況2024#6 低迷、LG12ドル台定着 供給過剰が大幅拡大の恐れ
2024年6月のコバルト市況は低迷している。ベンチマークとなるLGコバルトは仲値$12/LB台での推移が定着し、低空飛行から抜け出せない。2023年から構造的な供給過剰が価格の重しとなっていたが、2024年は過剰規模が大幅に拡大するとの懸念も浮上している。価格反発の兆しは見えない。
■24年の供給過剰、23年の6倍に悪化か
LGコバルトの仲値は6月6日に$12.55を付け、その後も同水準で推移している。5月9日に$13を下回った後もずるずると下落が続いた。
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
国際業界団体のCobalt Instituteは、5月14日に発表した中国の2024年のコバルト市場レポートで、2024年の世界のコバルト供給を前年比28万200トン、需要は21万6700トンと予測した。4月30日時点の1-3月期の世界市況の簡易レポートでは、供給は前年比11%増の24万5000トン、需要は同14%増の22万6000トンとしていたが、供給を上方修正し、需要は下方修正した。このため、差し引きでの供給過剰量も5月14日予測で6万3500トンと、4月末時点予想から算出される1万9000トンから大きく増えることになった。2023年は1万4200トンの供給過剰で、規模は2015年以降で最大だった。
世界のコバルト需給バランスの推移
(出所: Cobalt Institute)
■LME一段安、HGも勢い乏しく
LG以外のコバルトも元気のなさが目立つ。国際価格であるLMEコバルトは6月17日時点で$26.830/tonを付けた。2019年夏以来およそ5年ぶりの低水準となる。5月23日に一段安となり、節目の$27を割り込んだ。この日は前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で参加者が強いインフレ警戒の姿勢を示していたことが明らかになり、米利下げ期待が後退。この日の金属相場が全面安となった流れが波及した。その後も同水準から這い上がれずにいる。
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
HGコバルトは6月13日に$15.5/LBを付けた。6月6日の$15.375から小幅に上げたが、節目の$16を下回る水準が続き。本格反発となるかは見極めづらい。2023年9月以来の安値水準となる。
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
電池向けの硫酸コバルトは横ばい。5月23日に仲値RMB3万1000/mtに小反発したが1週間しか続かなかった。5月30日からは、再び4月半ばからの水準であるRMB3万500で推移している。
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
■Topics
5月27-30日
リサイクルの国際業界団体であるBIR(Bureau of International Recycling)は5月27-30日、デンマークのコペンハーゲンで、国際会議「2024年国際リサイクルコンベンション(BIR World Recycling Convention & Exhibition)」を開催した。最終日にはEV用電池のリサイクルに関する講演があった。
関連記事:2024BIR inコペンハーゲン#5 E-scrap、LIB.CRMについて議論される | MIRU (iru-miru.com)
5月23日
ロイター通信は5月23日、「中国の国家食糧・物資備蓄局(National Food and Strategic Reserves)が、今後数か月以内に最大1万5000トンのコバルトを購入する計画がある」との複数の消息筋からの情報を伝えた。
関連記事:中国備蓄局、コバルト1万5000トンの購入計画か 12ドル台程度で、外電報道 | MIRU (iru-miru.com)
5月13-14日
Cobalt Instituteは5月13-14日、米ニューヨークで創立30周年の記念イベントと国際会議を開いた。2024年のコバルト市況見通しが話し合われたほか、中国によるコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)での採掘状況なども紹介された。
ホームページ:Cobalt Congress 2024 Presentation - Cobalt Institute
(IR Universe Kure)
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