五酸化ニオブ価格が10年ぶり高値 モリブデンや金属ゲルマニウム、アンチモン…高まる希少鉱物の存在感
希少鉱物の1つであるニオブ価格が上昇している。五酸化ニオブは6月13日に高値$54.3/kgと2013年9月以来およそ10年9か月ぶりの高値を付けた。近年、電気自動車(EV)の車載電池向け材料として多様な希少金属が注目される中、ニオブをはじめとする一部の金属に思惑的な買いが入っている面があるようだ。
■EVバッテリー、ニオブなどさまざまな金属使う試み
過去15年間の五酸化ニオブ価格の推移(Nb2o5 99.5% $/kg)
五酸化ニオブの急伸については「あまり流通する鉱物ではないので、大口の買いが入ったのかもしれない」(金属研究機関の関係者)との声があった。ネットメディアの亜州金属網(Asian metals)は6月17日付の週刊レポートで「需要が強くなっている」と指摘した。
五酸化ニオブに比べ流通の多いフェロニオブは底堅い動き。それでも6月13日に$46.7/kgを付け、2023年3月以来の高値圏にある。
過去3年間のフェロニオブ価格の推移(Nb66%, Si3% max $/kg)
ニオブは、腐食に対して高い耐性を持つ希少で柔らかい灰色の延性遷移金属。産地はブラジルが大部分で、北米や欧州でも一部産出される。用途は鉄鋼添加剤が9割。このうち五酸化ニオブは高屈折率レンズの光学ガラス添加剤として用いられることが多い。使用される産業は航空宇宙、自動車、建設業界と幅広く、近年は特に半導体や精密機器、そしてEV電池材料として注目されている。
例えば、ニオブ企業のニオブ・テクノロジー・アンド・アプリケーションズは2023年12月に、ロンドンのブラジル大使館で、ニオブベースの電池について紹介する国際会議を開いた。
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EV電池材料としては、現在主流のリチウム、コバルト、ニッケルのほかにニオブ以外にもさまざまな希少鉱物を材料とする試みが続いている。現在の3金属だけでは中長期の需要拡大に対応しきれない上、リチウム電池由来の火災が相次ぐなど問題も多いためだ。
6月19-20日に MIRU、REIA、JOGMECが行ったコラボレーションイベント「レアアースシンポジウム in Tokyo」でも、Green Magnetic Materials Group のグループリーダーであるHossein Sepehri Amin氏が、ジスプロシウムやシリンなどを原料とした永久電池のデザインを提案した。
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■金属ゲルマニウム9年ぶり高値、アンチモンは過去最高値更新中
他の金属の一部も値上がりが目立つ。例えば金属ゲルマニウムは6月20日に高値$1945/kgと2015年4月以来、約9年2か月ぶりの高値を付けた。中国が2023年夏に輸出規制の対象とした直後は目立った動きがなかったが、2024年に入り急激に上昇している。
金属商社ハヤカワカンパニー副社長の西野義幸氏は4月のmiruによるインタビューで、、「規制発表直後は在庫があったうえ、光ファイバーの需要が落ち気味だった。しかし、2024年に入り、在庫消化が進むにつれて需給バランスの崩れが意識されはじめ、じりじりと値上がりしている」と話していた。
過去15年間の金属ゲルマニウムの推移(99.99% china)($/kg)
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モリブデン価格も2023年9月以来の高値に上昇している。これは銅の副産物なので、銅相場の上昇につれ高している面が強い。軍事用などの使途も注目され、景気動向に左右されにくいディフェンシブ性も選好されている。
過去1年間の酸化モリブデン($/lb)とフェロモリブデン($/kg)価格の推移
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ちなみに国内のモリブデン新切れ価格は過去最高値圏にある。
過去15年間のモリブデン新切れ価格の推移(JPY/kg)
アンチモンは過去最高値を更新中。6月13日からは高値$2万3000/tonで推移している。 圧倒的に希少な鉱物で先行きの品薄懸念が強い一方、太陽光発電向けの需要が堅調との観測が価格を下支えする。
過去20年間のアンチモン価格の推移(99.65% China)($/ton)
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各々、背景に多少の違いはあれど、EV向け電池をはじめ太陽光発電、半導体を含む軍事用などの新事業の分野で希少金属の存在感が高まっていることが共通している。その存在感は現時点では期待の範囲を出ないことも多いが、先回りして購入する層が増えており、価格押し上げ要因になっているもようだ。
(IR Universe Kure)
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