韓国バッテリー火災、問われる安全 日本でも頻発、消火は難題も「考える時期」
韓国・ソウル近郊の華城にあるリチウム電池製造工場で6月24日に発生した工場火災は、死者が23人に上る大惨事となった。リチウム電池を出火原因とする火災では、2022年にポルトガル沖で起きた電気自動車(EV)運搬船の船舶火災が記憶に新しい。日本でもごみ収集場での火災が頻発するなど、リチウム電池が生活に浸透するにつれ、火災の発生も増えている。
■消火マニュアルや管理基準なく
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外電などの報道によると、韓国の火災現場となった工場には約70人が働いており、多くが外国人労働者。犠牲者も17人が中国籍、1人がラオス席だった。工場では、約3万5000個のリチウム電池を保管しており、1つの電池から連鎖的に爆発が起き、急速に燃え広がったとみられている。
工場には消火マニュアルや避難経路の整備、電池の保管管理基準などがなかったとの指摘があり、今回の火災をきっかけに韓国社会ではリチウムバッテリーに対する安全意識が高まりそうだ。
■日本でも頻発 ごみ収集や充電中に出火も
2023年までのリチウム電池火災状況
(出所:東京消防庁)
日本でも、工場以外の生活の場面を含めて、リチウム電池火災は頻発している。2023年末には、同年の東京都内でのリチウムイオン電池由来の出火件数が160件余りと過去最多となったと伝わった。2024年に入ってからは、2月にJR池袋駅に停車していた山手線内で、乗客の所持していたリチウムイオンバッテリーから出火。6月に入っても、栃木県でバッテリー充電中に出火したとの報告があるなど、リチウムイオン電池由来の火災は増えている。
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また、前述のポルトガル奥の船舶火災は日本の商船三井の船だった。
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■材料により異なる消化方法、「被せる防火ブランケット」の発売も
リチウム電池由来の火災の難しいところは「水で消せない」ところだ。6月25日付の韓国の朝鮮日報は今回の火災に関し、「乾電池・携帯電話から電気自動車・軍用装備までさまざまな所に使われているバッテリーの主な原料はリチウム、ニッケル、マンガン、炭素などがだが、それぞれ使用する材料が少しずつ違う。材料によって火災の様相や排出する毒性の物質にも差がある」と指摘する。
さらに、「高温・高圧などの原因により短時間で爆発して火災につながる『熱暴走』時はバッテリーの内部物質がそれぞれ異なる化学反応をする。この違いのために消火作業時に水が使えるのか、それとも砂を使うべきなのかなど、消火方式の差が大きい。普段からバッテリーの特性ごとの火災マニュアルを備えていなければ初期対応は遅れざるを得ない」と問題点を挙げた。
では、対策はどうすればよいか。朝鮮日報は専門家の意見として、「長期的に見れば、バッテリーメーカーが『火災の危険性』に関して現在よりさらに多くのバッテリー情報を消防当局に公開し、消防当局もバッテリーのタイプ別対応マニュアルを作成しなければならない」とする。
東京消防庁は「取り扱い説明書の熟読」「分解しない」「地域のごみ分別の確認」などを呼びかける。
(出所:東京消防庁)
一方、ボイラーや水処理器を手掛けるアミスタ(大阪府)は6月18日、被せるだけで消化できるEV火災向け「防火ブランケット」の輸入販売を始めた。韓国のフエルテム(HUERTEM)社の製品で、韓国内で特許を取得した「HighSlica特殊防炎コーティング」技術を使用。約1800度から2000度の高温にも耐えることができ、EV火災時の最高温度1600度にも対応可能という。
プレスリリース:特許技術取得!EV対応の防火ブランケット日本初上陸 | 株式会社Honjo stateのプレスリリース (prtimes.jp)
生産・加工・処理を含めた各企業はもちろん、個人も含めて、バッテリー電池への認識を改める時期に来ている。朝鮮日報は漢陽大学の宣良国(ソン・ヤングク)教授の言葉として「これまでバッテリー機能と産業だけに集中してきたが、安全に対してさらに関心を注がなければならない時期になった」と伝えた。
(IR Universe Kure)
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