バナジウム市場近況2024#5 小反落 上昇一服、中国不動産不況で需要の弱さ意識
2024年7月上旬までのバナジウム価格は小反落。五酸化バナジウムは5月末、鉄鋼向けのフェロバナジウムは6月半ばにピークを付け、その後は小幅ながらも下落基調にある。ただ、4月に付けた直近安値までは下落しておらず、下値も限られる。
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは6月20日に仲値$5.215/lbを付けた。5月30日には$5.32と3月半ば以来の高値を回復したが、そこを頂点にじりじりと下落。長期的には4月に$4.735と2016年末以来の安値を付けた後で、$5台は維持している。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムは6月27日に仲値$27.125/kgを付けた。4月下旬の$25.875を底に段階的に上昇し、6月13日に$27.6まで上げた。しかしここを頂点に小反落する展開。それでも$27台を維持している。
バナジウムは生産・消費ともに中国の比重が大きい。中国では5月までは経済指標の底堅さが意識され、冬までの鉄鋼業界の減産もあって鉄鋼硬化剤としてのバナジウムの供給ひっ迫感が強まった。しかし、6月に入り鉄鋼入札が失速しているとの観測が浮上。6月半ば発表の中国の1-5月の不動産開発投資がついに前年同期比で2ケタの減少になり、不動産市況の悪化に伴う鉄鋼やバナジウム需要の弱さが意識された。
関連記事: 中国経済、一段の悪化 1-5月不動産開発投資ついに2ケタ減 景況感や融資も悪い | MIRU (iru-miru.com)
Ferroalloynetは6月下旬の市場分析レポートで「下流のフェロバナジウム価格の弱さを受けて、上流の五酸化バナジウム価格も引き下げざるを得ないムードになっている」と指摘。「世界的な需要も弱く、業界全体に膠着感が広がっている」とも述べた。
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6月27日
バナジウムフロー電池(V205)の英インビニティ・エナジー・システムズ(Invinity energy systems)が6月27日に発表した2023年12月期決算は、最終損益が2200万ユーロの赤字と赤字額が前の期の1800万ユーロから拡大した。売上高は2200万ユーロと前の期の10倍に増えたものの、先行投資の損失がかさみ補いきれなかった。
プレスリリース: polaris.brighterir.com/public/invinity/news/rns/story/r7pnqjr
インビニティは2020年に英フロー電池のレッド・エナジーと同国のV205メーカーのアバロン・バッテリーが合併して設立した。エネルギー貯蔵向けのV205を主力とし、英国、カナダ、米国、中国、オーストラリアなど15カ国の82拠点で事業展開する。英国と米国の株式市場に上場している。
V205はエネルギー貯蔵用として注目が集まるが、スラグからの抽出には困難もあった。
関連記事: 元鉄鋼マンのつぶやき#9 夢のバナジウム その1 | MIRU (iru-miru.com)
関連記事: 元鉄鋼マンのつぶやき#10 夢のバナジウム その2 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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