中国のニッケル銑鉄&鉱石価格動向(24年8月第2週) まちまち 銑鉄上昇、鉱石下落
2024年8月第2週の中国のニッケル銑鉄とニッケル鉱石価格はまちまちの展開となっている。銑鉄価格は、インドネシアに競り負ける形で原材料輸入費が高騰した結果を反映し、上昇している。一方、長引く中国の景気減速懸念と取引のオフシーズン入りを背景に、ニッケル鉱石価格はほぼ5年ぶりの安値圏に落ち込んでいる。
■フィリピン産が増産のインドネシアへ
過去3ヶ月間のニッケル銑鉄価格の推移(NPI content 10-15% China)(RMB/Nickel/MTU)
中国のニッケル銑鉄価格は8月1日に高値RMB1000/MTUと、6月下旬以来ほぼ1ヶ月半ぶりにRMB1000の大台を回復した。特に中品位のニッケル銑鉄材料を巡り、インドネシアでの銑鉄需要が増えたためだ。同国では豪雨の影響で一時生産が滞っていたのが回復し、かねてからの増産も相まって材料不足に陥った。フィリピン産のニッケル銑鉄材料が供給不足で高値購入を進めるインドネシアに流れた結果、中国のニッケル銑鉄工場は「原材料の価格上昇を受動的に受け入れざるを得なかった」(Ferroalloynet7月31日レポート)。結果として、製品価格としての中国での銑鉄価格も値上がりした。
ただ、中国景気の先行き不透明感が根強い中、中国国内の銑鉄需要は依然として鈍い。中国国家統計局が7月31日に発表した中国の7月の製造業景況感指数(PMI)は49.4と3か月連続で好不況の境目となる50を下回った。
中国PMIの推移
(出所:中国国家統計局)
一方、中国のニッケル鉱石価格は8月1日に仲値$70/tonを付けた。2119年9月以来およそ4年11か月ぶりの安値圏にあり、$70の節目割れが懸念されている。
中国国内でのニッケル鉱石の供給自体は安定しているとの見方が続いている。ただ、需要の弱さに加え、取引自体も少なく、オフシーズンの様相が強い。
過去3ヶ月間のニッケル鉱石価格の推移(1.8min CIF China)($/ton)
中期には、6月までの中国のニッケル生産は増加していた。ただ、需要が改善したとは言い難く、9月まではオフシーズンの色合いが続きそうだ。
関連記事中国 24年上半期 ニッケル&ステンレス市場の回顧と展望 | MIRU (iru-miru.com)
■ニッケル精錬価格は中国内外で節目割れ
過去3か月間のLME($/ton)とSHFE(RMB/ton)のニッケル価格の推移
精錬ニッケル価格は小幅に下落している。ロンドン金属取引所(LME)でのニッケル価格は8月7日に現物$1万6075/tonを付けた。上海先物取引所(SHFE)のニッケル価格は8月7日に現物でRMB12万9390/tonとなった。どちらも5月下旬に直近高値を付けた後、ずるずると下落する展開が続く。
中国の景気不安の長期化に続き、8月5日の日本株暴落の要因となった米国の景気減速懸念が精錬ニッケル価格の重荷となっている。日々の為替動向などで小反発する場面はあるものの、LMEは下値支持線と見られていた$1万7000を、SHFEもRMB13万のラインをそれぞれ下回る水準で推移している。
関連記事: LME Weekly 2024年7月29日-8月2日 米景気減速懸念でカッパー4週続落 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/05/02 2025年4月LMEニッケル相場の推移一覧 米中貿易摩擦懸念が後引き、大幅反落
- 2025/05/02 バナジウム市場近況2025#5 上値重い、最終需要の回復に懐疑ムード、膠着感も
- 2025/05/02 硫酸ニッケル輸入Report#76 2025年 3年ぶりに増加基調 安価な中国からの輸入拡大
- 2025/05/02 インドネシア 1~3月のニッケル製品輸出量は350万トンに
- 2025/05/01 2025年4月フェロアロイの平均推移(月平均)
- 2025/05/01 ニッケルブログ#20 EU競争力指針-ニッケル産業からの意見
- 2025/04/30 大平洋金属:25/3期業績見通し修正し、新中計を発表、フェロニッケルから新規事業へ転換
- 2025/04/30 欧州からの風:2025 April「EU使用済自動車規則案:揉めるプラスチック再生材含有ターゲットの行方は?」
- 2025/04/30 2025年2月チタンスクラップ輸出入統計分析 輸出は数量・金額ともに2カ月連続前月割れ
- 2025/04/30 2025年2月シリコマンガン輸入統計分析 3カ月ぶり減少2万トン大幅割れ 累計も前年割れ