岡本工作機械製作所(6125)25/3Q1期決算メモ ポジティブ継続
25/3期10.4%減収41.3%営利減予想とファイナルポリシャー急減響くが26/3期回復期待
株価3545円(8/13) 時価総額231億円 発行済株6703千株
PER24/3期DO予(9.0X)PBR(0.6X)配当(25/3予)160円 配当利回り4.6%
要約
・25/3Q1は減収影響が直撃し36.3%減収、営業赤字転落、受注も20.6%減と低迷継続
・Q14不振も高水準の受注残から25/3期予想を変更せず10.4%減収41.3%営利減予想堅持
・三井物産資本参加で半導体関連を核に28/3期売上高690億円、営利110億円目指す
25/3Q1は減収影響が直撃し36.3%減収、営業赤字転落、受注も20.6%減と低迷継続
8/8に24/3Q1決算が発表され、売上高77.16億円(36.3%減)、営業損失3.51億円(同期比18.2億円減少市赤字転落)、経常損失4.43億円(同19.49億円減で赤字転落)、税引損失億円(30.5)、税引利益9.46億円(13.1%増)と収益失速となった。受注も75.66億円(20.6%減)、受注残389.57億円(27.8%減)と受注も低迷継続となった。
事業別では工作機械事業が売上高58.08億円(11.1%減)営業損失3.40億円(同期比3.33億円悪化し赤字拡大)、受注63.96億円(15.9%減)、受注残141.61億円(26.1%減)。今回から四半期報告書が廃止となり、地域別開示が無く(短信で状況のみ開示)情報開示が後退したが、国内は金型向け工作機械、ロボット向け歯車ともに売上、受注が低迷、海外は米国が門形平面研削盤など低迷し売上・受注とも減少、欧州は売上が減少も、受注はEV関連、半導体関連向けに研削盤が増加、中国は売上がEVリチウムイオン向けに増収も、受注は景気減速で減少したとのこと。なおBBレシオは1.10と23/3Q1の1.16以来の1超え。利益面では減収影響や原材料の高止まりなどで赤字拡大に。
半導体関連事業は売上高19.08億円(65.9%減)、営利3.02億円(82.9%減)、受注11.69億円(39.1%減)、受注残243.47億円(28.8%減)。売上面では豊富な受注残高があったものの、ファイナルポリシャー(FP)の納入がユーザーの生産調整による投資計画先送りで売上献上が進まず、新規受注は国内外でパワーデバイスや高周波通信デバイス向けグラインダーやポリシャーなどの受注獲得も、主力のFP受注が低迷、大幅減継続に。利益面では減収影響が大きく大幅減益を余儀なくされた。
25/3期10.4%減収41.3%営利減予想と前期受注低迷影響で上期大幅低迷響き回復は下期に
25/3Q1でFP販売がユーザーでの生産調整による投資計画の先送り等で売上が大きく減少したものの、全体の受注残高が389.57億円、とりわけグリーンフィールド向けの受注残高が多く残っている半導体関連で243.47億円、(25/3期売上予想134億円に対し2年10ヶ月分)ある。また工作機械も146.10億円は約半年分の受注を確保しており、25/3期会社予想を据え置いた。H1,H2予想も変更せず、25/3H1が売上高200億円(同期比18.9%減)営利7億円(75.9%減)、25/3H2は売上高250億円(同期比2.1%減)、営利29億円(同期比10.1%減)予想。25/3期は売上高450億円(10.4%減)、営利36億円(41.3%減)、経常利益36.億円(42.7%減)、税引利益36億円(42.7%減)を変更せず。
6/17の説明会では部門別売上、営利予想は工作機械事業が売上高316億円(0%増)、営利13億円推定(共通費調整後、3%減)、調整前営利20億円推定(1%減)、半導体関連事業が売上高134億円(28%減)、営利23億円(共通費調整後、52%減)、調整前営利29億円推定(46%減)予想で、現状も変更なしとみられる。工作機械事業の内訳開示はないが、工作機械受注が工業会予測でほぼ横ばい予想で、歯車、鋳物とも回復が鈍く横ばい予想のイメージ。半導体関連が売上高134億円(27.9%減)予想は受注残高が豊富も、グリーンフィールド投資が先送りとなっており、売上寄与は25/3H2から26/3期にまたがり、減収減益予想としたとみられる。7/8取材では25/3期受注は総額350億円程度と想定、内訳は工作機械事業が270億円(横ばい)、半導体関連が80億円(38%増)のイメージ。
現状、工作機械術受注は工業会実績で5月、6月、7月と3カ月連続で前年同月比増となっている。現在、半導体製造装置の設備増強などの動きが強まっており、今後、ロータリー研削盤や大型平面研削盤の受注増加が見込まれ、工作機械受注も本格的に回復が見込める。このため、会社想定の売上・受注横ばい予想並みの数字が見込まれる。また半導体関連装置事業受注は、300mmウエハの在庫がピークを付けた模様も、SUMCOの24/12Q2収益に対し24/12Q3収益予想は4.5%減収、EBITDAで横ばい基調に止まっており、本格拡大は25/12期にずれ込むとみられ、同社受注本格回復も26/3期にずれ込もう。なおSiC向けグラインダー受注などは増加が見込めるも寄与度が小さく、全体を牽引するには物足りず、半導体関連受注も会社想定の80億円程度に止まるとみられる。全体として25/3Q1が大きな収益悪化となっており、25/3H1はQ1の影響をカバーできずに未達成が懸念され、下期は一部筆頭株主となった三井物産の提携効果加わりQ1の落ち込みをカバーし、全体で会社計画並みの収益を確保すると見られる。
三井物産資本参加で半導体関連を核に28/3期売上高690億円、営利110億円目指す
同社は5/22に三井物産との間で資本業務提携を行い、著しい成長が見込まれる次世代半導体市場の成長を捉え、調達資金98億円を技術開発等、次世代機開発、自動倉庫建設、大和工機の半導体関連の生産性向上に向けた投資に振り向ける。新中計数値目標は28/3期に売上高690億円、営業利益110億円、配当性向45%、事業別では半導体関連事業が売上高270億円(25/3期予想比2.0倍)、工作機械関連420億円(同33%増)と、中核を半導体関連事業とした。この新中計は、従来「ビジョン2030」で目標とした31/3期に売上高700億円、営業利益115億円目標をほぼ3期前倒し達成する意欲的な中期経営計画となっている。
半導体事業はSiC向けFPのシェア維持、次世代機の新規開発、具体的にはSICウエハ加工プロセスの高度化、化合物パワー半導体(SIC、GAN等)対応機の拡充、通信SAWデバイス向け(LT/LN:タンタル酸リチウム/ニオブ酸リチウム)難削材ウエハ対応のポリシャー、グラインダーの開発、技術開発等の新設とショールーム刷新、売上高300億円を支える生産体制の構築を行う計画。売上高270億円目標に対し、共通費控除後営業利益で61億円を目指す。売上増の内訳は次世代材料向けが100億円増、シリコンウエハ向けはシェア維持を見込むとしている。特にパワー半導体向けのポリシャー需要は27/3期に伸長が見込まれ、グラインダー需要も同様の需要が期待される。実際はAIサーバー需要などでチップあたりのウエハ使用面積が拡大、微細化のための追加投資も含め、新たに300mmウエハへのGF投資が具体化するとみられ、半導体関連受注は再度急拡大が期待される。
また同社はSi貫通電極ウエハの超平坦・金属汚染フリー・薄膜化加工のための研削技術も実用化(2024年7月までJSTが延長支援)の成果発表を控えている。同新技術は、裏面からSiウエハを研削しCuのSi貫通電極を露出するための全自動薄化加工装置に関するもの。現在はSi貫通電極導入に伴うコストの増加と歩留りの低下が課題となっているが、新技術ではSi/Cu同時研削技術と残留金属低減処理技術に加え、薄化ウエハの厚みムラの低減など等の性能向上と安定性の改善、及一連の工程を統合して全自動化した300mmΦウエハ全自動薄化加工装置が実現できる。従来のエッチングやCMPを多用した方法に比べて、装置コスト、工程数を低減し、歩留まりを大きく向上できるだけに、次世代HBMや3D半導体の拡大で中期的に大きなインパクトがあるとみられる。
工作機械事業では研削盤についてEV関連でリチウムイオン電池製造装置向けの長尺超精密平面加工向けやモーターコア製造用連装金型向けの超精密平面加工向けに大型超精密門形平面研削盤などの拡大が期待される。半導体製造装置・電子部品製造装置向けではセラミックス等の難作材加工向けに精密ロータリー研削盤の拡大も見込める。また工作機械事業で改めて伸びが期待出来るのが岡本工機の歯車事業。25/3期に歯車生産能力が約3割増となり歯車だけで売上100億円超の生産能力を持つ。足元で産業用ロボットの生産減退影響を諸に受けているが、岡本工機は世界NO1のファナックを主力ユーザーとしており、26/3期からの再拡大が期待される。また従来機種に加え、いわゆる協働ロボットではファナックCRシリーズ向けに関節部分の変減速向けに納入、今後、ハーモニックドライブ向けでは非ファナック向けでも拡大が期待される。さらにEV化で歯車の静音化ニーズが高まっており、岡本工機の精密歯車へのニーズが高まる可能性がある。既に日系2社に納入実績を持ち、HEV、PHEVを含め次世代自動車向けも加われば更なる売上拡大も期待される。このように工作機械事業も平面研削盤を中心に半導体、EV関連向けの拡大、加えて歯車ビジネスが拡大で、中計計画の達成が可能とみられる。
全体として26/3期には半導体生産が過去最高を更新する中で半導体関連事業が25/3期の期ずれ分もあり、過去最高を更新するとみられる。また工作機械事業も半導体製造装置向けロータリー研削盤、EV用2次電池製造向け、次世代自動車モーターコア金型向け超精密門型平面研削盤などの拡大、歯車事業の再拡大が見込まれ、26/3期収益は24/3期収益水準まで回復が見込める。また半導体関連受注がグリーンフィールド投資の再開、化合物半導体関連の拡大が続く見通しで、28/3期中計予想の達成が期待される。
同社株価は先端半導体関連で上昇し3/7には21年9月高値7200円に迫る6860円と年初来高値を更新したが、5/14の決算発表で25/3期大幅減益予想が開示され大幅に下落、さらに5/22の三井物産への第三社割り当て増資で株式の希釈化、PBR1以下での割り当てなどの批判も受けさらに株価が下落、8/5には市場暴落の中で高値から半値以下の3105円まで売られ、8/8発表の25/3Q1収益が営業損失だった事で反発できずに推移している。現在、希釈後25/3期会社予想EPS373円に対しPER9.5倍は東証スタンダード機械平均PER11.4倍に対し若干割安となっている。今後の株価は悪材料を織り込み、PBR0.6、配当利回り4.6%となり下値は限定的と見られる中で、三井物産の参画でIR活動の進展、先進的な技術材料の開示情報も増えるとみられ、先端半導体関連銘柄として再評価されると判断、企業体制変革を期待しポジティブ継続としたい。
(H.Mirai)
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