レアアース市場近況2024#16　持ち直し、秋のシーズン再開に期待

2024/08/20 18:02

　2024年8月中旬~8月下旬のレアアース市況は反発している。中国の内需不振への警戒から多くの鉱種が値下がりしてきたが、7月下旬に底を打った。その後は大部分で持ち直している。8月の金属取引のオフシーズンが終盤に近付き、シーズン再開への期待が高まりつつある。

■中国のレアアース指数、160台で安定

　中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が日次で発表しているレアアース指数は8月19日に164.5を付けた。前日の164.1から小幅に上昇。7月下旬の153を底に反発基調で、8月半ばからは160台で安定している。

　上海有色網(SMMは)8月16日付のレポートで、「中国の一部地域では猛暑でレアアース企業が採掘を中止した」と指摘。供給減の一方でシーズン再開に向けた受注が増え始めていると述べた。

中国レアアース指数の推移

(出所: 中国稀土協会)

　ただ、中国経済全体では弱さが目立つ。中国国家統計局が8月15日までに発表した2024年7月の主要経済指標は全体に弱さが目立った。不動産不況の改善が見られず、銀行融資が急減するなど内需の不振をうかがわせるデータが多かった。

■ミャンマーの生産停止で中重希土類上昇

　中国価格指数の底打ちを受け、8月に入り多くの鉱種の国際価格も小反発している。電気自動車(EV)の車載電池材料として注目が高い金属ネオジムは8月15日に$67.75/kgを付け、5月下旬以来の高値水準に戻した。7月初旬まで$61.5に下げて節目の$60割れが危惧されたが回避し、安心感も広がっている。ただ、EV需要自体の失速感は根強く、上値はなお重い。

金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)

　金属ジスプロシウムと金属テルビウムも同じ値動き。金属ジスプロシウムは8月15日に仲値$326/kgに上げた。金属テルビウムも同日、仲値$915/kgと節目の$900台を回復した。ともに7月初旬の水準に戻した。SMMによれば、8月はミャンマーの中重希土類の生産が中止されたため、供給が細った面がある。

金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)

金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)

■ランタンは一段安

　超硬向け需要が多い金属ランタンは、8月8日に$3.35/Kgと一段安となった。既に2005年夏以来18年超ぶりの安値水準にあるが、なお下げ余地があった。中国を中心に製造業の低迷は続き、中堅商社幹部からも「超硬工具向け金属の需要はさほど良くない」との声があった。

金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)

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●8月12日

　ウクライナと米国がレアアース分野で協力する可能性が浮上している。キーウを訪問した米国上院議員のリチャード・ブルメンソールとリンゼイ・グラハムの両氏は8月12日、訪問後の共同声明で「ゼレンスキー大統領は、ウクライナが所有する1兆ドル以上のレアアース鉱物に関して、米国との戦略的合意を得ることに興奮し、コミットしていた」と発表した。

　声明では、「もしウクライナから米国へのレアアース供給が実現すれば、米国は敵対国への依存度を下げることができる」とも述べた。

プレスリリース(グラハム氏):Graham, Blumenthal Statement on Visit to Ukraine - Press Releases - United States Senator Lindsey Graham (senate.gov)

8月5日