Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.85 ロシア向け禁止措置後の中古車輸出(4):仕向地全体におけるロシアの立ち位置
Vol3.からの続き。2023年8月にロシア向けの自動車の輸出禁止措置がなされ、同年後半のロシア向けの中古車輸出台数は減少した。それにもかかわらず、この年の全体の中古車輸出台数は154.3万台となり、統計で示されるようになった2001年以降で過去最多を記録した。2024年になりその勢いがどうなったかである。今回は全体の動きを確認したい。
図1は、全体の中古車輸出台数の月別推移である。これを見ると2023年は全ての月で前年を上回っていた。2024年もしばらくはそれが継続していたが、5月、6月になり前年を下回るようになっている。対前年比では、2023年7月が142%と最も高く、8月、9月が130%程度、11月以降は110%から120%程度と下降している。2024年5月、6月の対前年比はそれぞれ99%、82%である。2024年7月以降がどうなるかだが、仮に前年の数量を足し合わせると年間合計で159万台となり、過去最多を更新する。
図 1 中古車輸出台数の月別推移(バス、乗用車、貨物車の合計)
出典:財務省貿易統計より作成
2023年の年間合計を仕向地別に見ると、最も多かったのがロシア向けであり、全体におけるロシアのシェアは14%である。それにアラブ首長国連邦、ニュージーランド、タンザニア、モンゴルが続き、それぞれのシェアは13%、7%、5%、5%となっている。
前回までの記事で示したように、ロシアでは輸出禁止措置がされた後、輸出量は減少した。そのため、2023年9月から12月までの4か月の合計ではアラブ首長国連邦が最大の仕向地となっている。しかし、この期間でもロシアは2番目の仕向地であった。
この傾向は2024年に入ってもしばらく続き、月別に見ると1月から3月はアラブ首長国連邦向けが最も多かった。ところが、4月から6月はロシア向けが最も多くなっており、最大の仕向地に返り咲いている。2024年1月から6月までの合計では、アラブ首長国連邦、ロシアのシェアはそれぞれ14%、12%となっており、それが今後どうなるかである。なお、それ以外の仕向地はモンゴル(8%)、ニュージーランド(6%)、タンザニア(4%)の順で多い(カッコ内は2024年1月から6月までの合計のシェア)。
図2は、上記で示した5か国について中古車輸出台数の12か月移動平均の推移を示す。12か月移動平均は、該当する月を含む12か月分の中古車輸出台数の平均である。これを見ると、ロシアは2023年7月をピークとして下降し続けており、直近は2022年10月の水準になっている。対照的にアラブ首長国連邦は上昇し続け、2024年2月にロシアを抜き、首位となっている。他にはモンゴルも上昇傾向ある。直近はモンゴルを除いた4か国が下降しており、この傾向がどうなるかである。
図 2 主要仕向地別中古車輸出台数の12か月移動平均の月別推移
出典:財務省貿易統計より作成
注:主要仕向地は2023年の中古車輸出台数の上位5か国
(次回は韓国、中国向けの動向を紹介する)
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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