Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.84 ロシア向け禁止措置後の中古車輸出(3):排気量の小さい中古車は?
前回の記事(vol.83)では、ロシア向けの自動車輸出の禁止措置後の数量の5割超を占める1000cc超1500cc以下と、2割程度を占める1500cc超2000cc以下(ともにガソリンエンジン車)の中古車輸出台数を確認した。輸出禁止後の中古車輸出台数において3番目、4番目に多い品目は、660cc超1000以下、660cc以下(ともにガソリンエンジン車)である。今回はこれら排気量の小さい中古車の数量を確認する。
まず、660cc超1000以下のガソリンエンジン車(統計品目番号:8703.21.925)から見る。この品目の全体におけるシェアは17%(2023年9月~12月)、14%(2024年1月~6月)であり、1500cc超2000cc以下のガソリンエンジン車と比べると若干低い程度のシェアである。
図1はこの660cc超1000cc以下のガソリンエンジン車の中古車のロシア向け輸出台数を月別に示したものである。これを見ると、前回見た2品目とは異なり、2023年8月の時点で既に前年の数量を上回っている。ただし、2023年8月の数量は、7月と比べると大幅に減少しており、対前年比(116%)も7月(266%)よりも大幅に低い。これらからこの品目においても多少なりとも禁止措置の影響はあったとみることはできる。
それ以降は徐々に数量を増やし、2023年10月には禁止措置前の水準を超えている。さらに2024年も好調を継続しており、4月には2.7千台を記録している。5月、6月は若干減少しており、対前年比も下げており、勢いが弱まっている。
図 1 ロシア向け中古車輸出台数の月別推移(660cc超1000cc以下のガソリンエンジン車)
出典:財務省貿易統計より作成
図2は、4番目に多い660cc以下のガソリンエンジン車(統計品目番号:8703.21.915)のロシア向け中古車輸出台数の月別推移を示したものである。これはいわゆる軽自動車になるが、ロシア向けの全体におけるこの品目のシェアは9%(2023年9月~12月)、8%(2024年1月~6月)である。
ここでもやはり2023年8月に大幅に数量を落としており、対前年比も76%となっている。その後は徐々に数量を伸ばし、2023年9月から直近の2024年6月までの全ての月で前年を上回っている。最も多いのは他の品目と同じく2024年4月であるが、禁止措置以前の2023年7月の水準には到達していない。
図 2 ロシア向け中古車輸出台数の月別推移(660cc以下のガソリンエンジン車)
出典:財務省貿易統計より作成
以上をまとめると、禁止措置によりその対象外の品目にシフトすることは確認された。しかし、全体的にシフトには相応に時間を要し、禁止措置直後は対象外の品目で輸出が可能であっても大きく減少した。船積みの影響や禁止措置前の駆け込み輸出の反動など様々な要因は考えられる。
その後は品目により微妙に傾向が異なるが、いずれも徐々に増加した。全体の半分を占める1000cc超1500cc以下は、2024年になって禁止措置以前の数量を超えるようになった。660cc超1500cc以下は2023年の段階で禁止措置以前の水準を超えた。一方で、全体的に2024年4月をピークとして5月、6月はやや減少している。これが7月以降にどのように動くかである。
図3は各月の12か月移動平均の推移を示したものである。12か月移動平均は該当する月を含む12か月分の中古車輸出台数の平均を示す。各月について前年と比べて増加しているものは、図3では上昇傾向を示す。これにより前年と比べて増加している品目やその程度がよくわかる。
図 3 ロシア向け主要中古車輸出台数の12か月移動平均の月別推移
出典:財務省貿易統計より作成
(次回は全ての仕向地におけるロシアの立ち位置を確認する)
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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