新着情報

2025/05/01   鉄鋼需給(25年3月)
2025/05/01   輸出鋼材のスプレッ...
2025/05/01   日中ホットコイル輸...
2025/05/01   ミライラボ、中古E...
2025/05/01   日本製鉄:AM/N...
2025/05/01   アジアン廃プラマー...
2025/05/01   (速報)2025年...
2025/05/01   2025年4月フェ...
2025/05/01   2025年4月マイ...
2025/05/01   2025年4月レア...
2025/05/01   米中貿易摩擦緩和期...
2025/05/01   ニッケルブログ#2...
2025/05/01   原油価格の動向(4...
2025/05/01   アジアン廃プラマー...
2025/05/01   米ウクライナ、資源...
2025/05/01   元鉄鋼マンのつぶや...
2025/05/01   MARKET TA...
2025/04/30   第5回サーキュラー...
2025/04/30   大平洋金属:25/...
2025/04/30   共英製鋼:25/3...

南米ベネズエラ、一部鉱物資源の輸出を停止

 英国のP&I保険(船主責任保険)大手のノース・スタンダード(NorthStandard)の9月8日の発表によると、ベネズエラ鉱業公社(CVM)は、金、銀、コルタン、ボーキサイト、トリウム、スズ石、銅、ロジウムの輸出を即時停止したとの報道。但し、鉄、鋼、アルミニウム、およびそれら派生品の輸出は引き続き行われるとのことだ。

 

 同国では7月に大統領選が行われ大きな混乱が生じ、世界的な注目を集めたが、輸出停止の背景は当局のベネズエラ鉱業公社を始めどこからも公式発表がなく、明らかにされていない。1点明らかなのは、この措置が、追って通知があるまで有効とのことだけである。

 

 

ベネズエラの資源積出港

 

 同国の鉱物資源のほとんどはオリノコ川のオルダス港(Puerto Ordaz)とセルピエンテ海峡に位置する世界最大の浮体式鉄鉱石中継基地(ボカ・グランデII:Boca Grande II)から輸出されている。

 

 オルダス港に位置するオリノコ・アイアン社(Orinoco Iron)は、アメリカ大陸最大のホットブリケット鉄(HBI)メーカーで、この工場ではFINMET®技術を使用し、年間220万トンのHBIを生産している。ベネズエラ鉱業公社の発表によると、同国の資源輸出をする港湾施設は通常通り問題なく稼働しており問題はないとのことだ。

 

 

米国によるベネズエラ制裁

 

 ベネズエラ政府が一部資源輸出停止を断行した背景は明らかにされていないが、察するところやはり米国の制裁と関連があるようだ。米国財務省外国資産管理局(OFAC)は2024年4月17日、米国とベネズエラ間の石油・ガス・金の取引を6か月間限定で認めていた「一般ライセンス44(GL 44)」を取り消し、再度制裁を復活させた。制裁復活に伴い、ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)による輸出の道は断たれたが、特定ライセンスを所持し、米国向け輸出の大部分を担う米国石油会社シェブロン(Chevron)などには影響は出てないとの報道だった。

 

 米国は一般ライセンス44(GL 44)の更新条件として、2024年に公正な大統領選挙を実施するというバルバドス合意(2023年10月)の順守をベネズエラに求めていたが、ベネズエラ側が合意内容を履行しなかったと判断され、米国による制裁の復活に至った。

 

 米国は、更に、2024年9月12日、7月に行われたベネズエラ大統領選挙で民主的プロセスを妨害したとしてマドゥロ大統領とその関係者16人にビザ(査証)制限等の制裁を科すと発表した。

 

 

違法採掘が横行するベネズエラ

 

 ベネズエラの政治・経済状況が改善せず悪化する中、同国ではギャングやゲリラ等の非合法組織、準軍事組織が跋扈し同国の貴重な鉱物資源、ボーキサイト、コルタン、ダイヤモンド、そして特に金の採掘支配をめぐって争いを繰り広げているのが現状のようだ。憂慮すべきは違法採掘で、周辺環境への大きなダメージに加え、周辺住民と採掘に従事する工夫の健康被害を大きな社会問題となっている。

 

 違法採掘された金などは隣国のブラジル、コロンビア、ガイアナ等に持ち出され違法に国外輸出されるアマゾン川支流を使った闇ルートが存在するようで、ベネズエラと周辺地域に重大な安全保障上の脅威となっている模様だ。

 

 

最後に

 

 今回のベネズエラ政府の禁輸措置も米国の制裁に対する対抗措置と考えると、今まで両国間で繰り広げられてきた政治的・外交的手段の応酬の繰り返しのように見える。数日前もベネズエラで米軍人数名がマドゥロ大統領暗殺計画に関与したとして拘束されている。金鉱山の違法採掘には同国政権の関与があるとの報道も一部あり、また国連を始めNGOも同国で活動している中でも、同国が慢性的に抱える政情不安、貧富の差、汚職体質等々、改善への道は険しいようだ。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る