ヴァ―レ、非鉄事業の分離上場を検討 一部株主は鉄鋼事業を嫌気し持ち株売却か
ブラジル資源大手ヴァ―レの周りがざわついている。非鉄金属事業を分離して株式市場に上場させる計画があると伝わった。一方で、同社の株主の1人が保有株の売却を検討しているとも伝わる。各事業への評価がヴァ―レをゆすぶっている模様だ。
■26年末にも銅・ニッケル子会社上場か
英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は9月27日、同社が9月26-27日に開催したオンラインイベント「FT Mining Summit」で、ヴァ―レの非鉄金属子会社ヴァ―レ・ベースメタル(VBM)のマーク・クティファニ会長が、「2026年末か2027年初頭の株式市場への上場を検討している」と話したと伝えた。「資産価値を一段と高めるのが目的」という。上場先や具体的なタイムスケジュールなどは明かさなかった。
VBNは銅とニッケルの採掘事業を主業務とし、2023年夏に鉄鉱石事業から分離された。創業に当たり、発行済み株式の10%をサウジアラビアのマナラ・ミネラルズに売却した。同社は今後10年間にブラジル、カナダ、インドネシアでの重要鉱物事業250億〜300億米ドルを投資し、銅の年産量を90万トンと現在の3倍に、ニッケルを30万トンと2倍にそれぞれ増やすことを目標とする。
■当局の関与多い資源企業は出資先として不評
一方、米BNNブルームバーグは同じ9月27日、「ブラジル複合企業のコーザンが、保有するヴァ―レ株の一部または全部を売却することを検討している」と伝えた。コーザン側の債務返済が目的でヴァ―レの事業内容が直接の原因ではないが、コーザンの株主にはヴァ―レへの投資はかねて不評だったという。
コーザンのヴァ―レにおける持ち株比率は4.1%。2022年にヴァ―レ株を購入した。ただ、ヴァ―レには資源事業という性格上当局からの指導が入りやすい上、情報漏洩などのトラブルもあったため、コーザンの株主は当初から出資に反対する姿勢が強かった。コーザンの経営陣がヴァ―レの経営に関与するとの提案も結局無視され、嫌気するムードに拍車をかけた。
ブルームバーグによれば、もしヴァ―レ株をすべて売却した場合、売却額は22億ドル億ドル程度になる見通しだ。
■鉄鉱石-×、銅・ニッケル-〇
直接にはつながりのない2つの出来事だか、1つ言えることは、ヴァ―レにとって「鉄鉱石=重荷、非鉄金属=期待」ということだろう。コーザンの株主がヴァ―レへの出資に抵抗感を示した背景には、鉄鉱石事業が足を引っ張るヴァ―レの事業内容への警戒があったとも伝わる。
実際には、ヴァ―レが8月に発表した2024年1-6月期決算は鉄鉱石価格の持ち直しで63%の増益となっている。しかし、米新興市場向けナスダック市場に上場する株価は9月末時点で11.68ドルと年初から3割安い水準にあり、鉄鉱石の持ち直しは評価されていない。ヴァ―レにとっては非鉄金属、特に銅と、ニッケルを中心とした卑金属事業が今後の要になってきそうだ。
(IR Universe Kure)
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