週刊バッテリートピックス 「EV電池スマートユース協議会が発足」「CATL工場火災」など
2024年9月30日~10月6日のバッテリー業界では、電池資源の海外流出防止を視野に入れた「EV電池スマートユース協議会」の発足が大きな話題だった。秋のシーズンを迎え展示会などのイベントも多い。海外では米国がブラジルなどとエネルギー分野で協調。韓国や中国でバッテリー火災への懸念も広がった。
<国内>
●マクセル、布哇のイベントで全個体電池について講演
マクセルは10月4日、自社ホームページ上で、「10月9日にハワイコンベンションセンターで開催の国際会議『PRiME 2024』で、全固体電池の長寿命化に関する研究成果について発表 する」と明かした。
プレスリリース:マクセル|「PRiME 2024」内にて「全固体電池の長寿命化について」発表 10月9日にハワイコンベンションセンターで実施 (eir-parts.net)
●「CEATEC2024」10月15-18日開催 幕張メッセで、デジタルイノベーション展示会
幕張メッセ(千葉県幕張市)でデジタルイノベーションの総合展示会である「CEATEC2024」が10月15-18日に開催される。
公式ホームページ:CEATEC 2024(シーテック)Toward Society 5.0 公式サイト
PR Timesなどが10月3日までに伝えたところによると、中堅機械の西川精機製作所(本社:東京都江戸川区)が「燃料電池搭載 特定小型原付モビリティ」を出展する。国立研究開発法人の産業技術総合研究所(産総研)はパネルディスカッションに参加するとともに、新会社「AIST Solution」 の事業内容を紹介する。
●「EV電池スマートユース協議会」発足 電池資源の海外への流出防止へ
民間シンクタンクの日本総合研究所は10月2日、ホームページ上で、「EV電池スマートユース協議会」が同日発足したと発表した。環境省とも連携し、EV電池を再利用する仕組みを確立する。環境への負荷を軽くするとともに、電池資源の海外への流出を防ぐ。
プレスリリース:「EV電池スマートユース協議会」設立のご案内 (jri.co.jp)
●住富金属鉱山、再利用LIB性能確認 2030年までに全個体電池向け正極材量産へ
住友金属鉱山は10月2日、自社のリチウムイオン二次電池(LIB)リサイクルのパイロットプラントで回収した中間物を再利用したLIB用正極材について、「天然資源由来のものと比較し両者が同等であると確認できた」と発表した。
関連記事:住友金属鉱山、リサイクルリチウムを使用した電池正極材評価で性能確認 | MIRU (iru-miru.com)
住友金属鉱山を巡っては、10月5日付の日本経済新聞が「全固体電池向けの正極材を2030年までに量産する」とも伝えた。
●「トヨタバッテリー」発足 「プライムアースEVエナジー」を改名
トヨタ自動車は10月1日、車載電池の製造子会社「プライムアースEVエナジー」の社名を「トヨタバッテリー」に変更した。豊田章男会長は静岡県湖西市の新居工場で同日開いた出発式で、「電動化に向け、全ての要素部品を内製化するという大宣言だ」と話した。
プレスリリース:トヨタバッテリーへの社名変更を記念し、「出発式」を開催 | トヨタバッテリー株式会社 (toyota-battery.com)
<海外>
●米国、ブラジルなどとクリーンエネルギーで協調 バッテリーにも補助金
米国は10月に入り、立て続けに各国とのクリーンエネルギー分野での協調を発表した。米エネルギー省(DOE)は10月4日にオーストラリアと、10月2日にブラジルとの協調をそれぞれ発表した。
ブレスリリース: United States and Brazil Expand Clean Energy Cooperation | Department of Energy
DOEは9月20日には同国のバッテリー産業に対する30億ドル(約4461億円)規模の支援方針を発表した。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、これに伴い、ミシガン州のEVバッテリー製造関連施設4社に補助金を支給する見通し。支給額は合計3億5,500万ドル。対象企業はレベックス・テクノロジーズ、ミトラ・フューチャー・テクノロジーズ、ナノグラフ、キャボットの4社。
●米ハリケーン、バッテリー火災の要因に
米南部で10月4日までに死者200人以上を出した大型ハリケーン「へリーン」では、高潮や洪水で水に浸かったEVなどのLIBが発火する被害も相次いだ。
関連記事:Americas Weekly 37 ハリケーン「へリーン」が電気自動車火災を招く リチウムイオン電池の脆弱性露呈 | MIRU (iru-miru.com)
●米自動車部品イートン、電動車両向けスイッチの生産に進出
米自動車部品のイートンが、電動車両向けバッテリー構成スイッチ(BCS)の開発と販売を開始する。ビジネスワイヤが10月3日に伝えた。かねて提携関係にあるドイツのバッテリー管理ソリューション会社ミュンヘン・エレクトリフィケーションと共同で実施する。
●韓国、航空機内でのバッテリー火災が増加 LG電子が防火素材開発
韓国国土交通省が同国議員に10月3日に通知した資料によると、2020年以降に同国で発生した航空機内でのバッテリー火災事故は13件だった。2023年は6件、2024年1-8月には既に5件と、コロナ禍後の航空需要の回復に連れてバッテリー事故も増えている。
韓国ではEVバッテリー火災の頻発も深刻化しており、官民挙げて対策に取り組む。例えば、LG化学は1マイクロメートルという薄さで、熱暴走を検知すると電流の流れを効果的に抑制できるリチウムイオン電池用新素材を開発したとしている。
●フィリピン、初のLFP工場
フィリピンで初めてのリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)の大型工場が、9月30日に開所した。
関連記事:フィリピン、初のLFP大型工場 ルソン島に豪中資本で、新エネルギーに期待膨らむ | MIRU (iru-miru.com)
●中国CATL工場で火災
車載電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の福建省の工場で、9月29日昼に火災が起きた。会社側によるとこの火災による死傷者はなく、会社の経営への影響も軽微。
関連記事:中国CATLの福建工場で火災 米テスラにバッテリー供給か、「高温静止室」火元? | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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