レアアース市場近況2024#19 小動き、中国連休で動き出づらく 景気刺激策に反応限定
2024年9月下旬~10月上旬のレアアース市況は小動き。中国が国慶節(建国記念日)で10月1-7日に連休となり、中国需要が多い鉱種を中心に動きが出にくかった。中国当局は連休直前に預金準備率引き下げなどの一連の景気刺激策を打ち出したが、レアアースの国際市況への反応はいまのところ限定的だ。
■中国指数は9月に上昇も尻すぼみ
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が連休前の9月30日に発表した9月のレアアース指数の平均値は174.6と8月の163.3から上昇した。7月下旬の153を底に反発。ただ、9月9日の182をピークに勢いは続かず、尻すぼみの展開だった。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
中国当局は連休直前に預金準備率引き下げなどの一連の景気刺激策を打ち出し、銅相場などには一定の押し上げ効果があった。ただ、レアアースの国際市況の反応は鈍い。
関連記事: 国慶節を控え中国政府が一連の大規模景気刺激策発動へ、銅は1万ドル超え | MIRU (iru-miru.com)
■テルビウム4ヵ月ぶり高値、ネオジムも小幅高
動きが出にくい中で、中重希土類の金属テルビウムが気を吐いている。10月3日に仲値$1033/kgと6月上旬以来の高値を付けた。光ディスクや蛍光体に用いられる材料で、根強い先行きの需要継続期待が価格を支えている。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
電気自動車(EV)の車載電池材料として注目が高い金属ネオジムも小幅高。10月3日に$75.25/kgと9月10日以来の高値を回復した。9月12-18日の$73.25を底にじりじりと値を戻しているが、上値の重さも目立つ。
上海有色網(SMM)は 9月27日付のレポートで、磁石向けレアアースの値動きについて「原材料価格の高騰と既存取引先からの引きが堅調であることを理由に生産企業は価格を釣り上げようとしているが、最終製品の需要がそこまで回復していない中、調達に慎重な取引先も多く、価格交渉が激しくなっている」と指摘した。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
■ランタンとジスプロシウムは横ばい
一方、金属ジスプロシウムと金属ランタンは動きなし。金属ジスプロシウムは9月19日から、金属ランタンは9月12日からそれぞれ横ばいが続いている。金属ジスプロシウムは8月末から仲値$316/kgを挟む展開。金属ランタンは2005年夏以来18年超ぶりの安値水準にある。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
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●9月26日
オーストラリア中堅資源のアストロン・コーポレーション(Astron Corporation)は9月19日、自社ホームページ上で、米鉱業大手のエナジー・フューエルズ(Energy Fuels)との間で、豪南東部ビクトリア州のレアアース・ミネラルサンドプロジェクトを巡る合弁契約手続きを9月26日に完了すると発表した。両社は1月に合弁の覚書を交わしていた。
関連記事:Donaldレアアース・ミネラルサンドプロジェクト開発へ 豪Astron社と米Energy Fuels社のJV | MIRU (iru-miru.com)
●9月25日
レアアースリサイクルを手掛けるカナダのサイクリック・マテリアルズ(Cyclic Materials、加オンタリオ州)は9月25日、自社ホームページ上で、「米マイクロソフトや日立製作所が参画する投資ファンドから、5300万ドル(約77億円)の資金を獲得した」と発表した。
関連記事:加サイクリック、米マイクロソフトなどから77億円を調達 日立もファンドに参画 | MIRU (iru-miru.com)
●9月25日
Mining.comやScience Alartといった外電は、死火山などの鉄分の多いマグマにより多くのリアアースの含有が見込めるとの論文を報告した。実験室での模擬実験で実証されたという。
(IR Universe Kure)
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