レアアース市場近況2024#20 ネオジム上昇、中国のレアアース管理条例や景気対策で
2024年10月中旬~10月下旬のレアアース市況は鉱種によって明暗が分かれている。軽希土類の金属ネオジムや中希土類の金属テルビウムは上昇基調となった。中国当局が10月1日からレアアース管理条例を施行し供給ひっ迫感が出た一方、中国の景気対策が最終製品の需要喚起期待につながった。ただ、中重希土類の一部はなお上値が重い。
■中国、レアアース管理を厳格化
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が日次で発表しているレアアース価格の平均値は10月21日に174.7と、前週末10月18日の173.1から上昇した。10月に入ってからはおおむね170台前半で堅調に推移している。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
中国国務院(政府)は6月29日、「レアアース(希土類)管理条例」を10月1日付で施行すると発表していた。採掘、製錬、分離、金属製錬、総合利用、製品流通、輸出入など同国のレアアース産業全般に適用し、産業全般を国家とその下部組織である地方政府の管轄下に置く。施行開始日の10月1日は国慶節の休暇中だったため、市場では、連休明けの10月初旬から、施行により管理が厳格化されることから需給のひっ迫につながるとの懸念が次第に強まった。
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一方、中国当局は9月下旬から10月半ばにかけて、断続的に不動産などを中心とした景気刺激策を打ち出した。10月18日発表の中国の2024年7-9月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4.6%成長と成長率は4-6月期の4.7%から鈍化した。一段の景気対策が打ち出されるとの期待が強まり、景気回復によってレアアース需要も回復するとの思惑が浮上している。
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■ネオジム一時1月以来の高値、テルビウムも5ヵ月ぶり高値圏
軽希土類の代表格である金属ネオジムは上げ幅を広げた。10月10-17日に仲値$76.75/kgまで上げ、1月以来10か月ぶりの高値を回復した。10月17日には$74.75に小幅に下げたが、下値は堅い。
ネオジムは磁石向け需要が圧倒的に多い。上海有色網(SMM)は 10月18日付のレポートで、磁石向けレアアースの値動きについて「大手磁石メーカーの数回にわたる入札があった」と指摘。10月のピークシーズンを迎え取引が活発化しているが、採掘企業と取引先との価格交渉も激しさを増しているとした。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムもネオジムと同調した動き。10月10-16日に仲値$1055/kgと5月以来およそ5か月ぶりの高値を付けた。10月17日に$1025に小幅に下落したが、勢いは十分だ。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
■ジスプロシウムさえない、ランタンは横ばい
一方、中重希土類でも重希土類寄りの金属ジスプロシウムはさえない。10月17日に仲値$308/kgを付けた。2019年11月以来ほぼ5年ぶりの安値水準となる。SMMは中国の中重希土類市況について「9月末までにミャンマー産鉱石の輸入が大幅に増加した」と説明。最終製品の需要も弱いままで、「中国の一部地域では減産も発生している」と指摘した。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
金属ランタンは9月12日から横ばいが続いている。既に2005年夏以来18年超ぶりの安値水準にあり、値上がり要因も乏しいが、さらに売り込む動きも出にくい。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
<Topic>
10月18日
中国・天津市で10月15-18日に鉱業関連のイベント「第26回中国国際鉱業大会」が開かれた。会期中にトルコと中国が希土類元素などの重要鉱物に焦点を当てた鉱業分野での協力に関する覚書を交わした。
●10月16日
環境省が第1回の「ヤード環境対策検討会」を開催した。
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●10月14日
中国税関総署発表した中国の2024年1-9月の貿易統計で、レアアース輸入総額は前年同期比28.1%減と、減少率は1-8月の29.9%減から縮小した。輸入量は23.7%減で、減少率は1-8月の22.6%減から拡大した。1-9月のレアアース輸出総額は40.4%減で、減少率は1-8月の40.2%減からやや拡大した。輸出量は6.4%増で、増加ピッチは1-8月の6.4%増から横ばいだった。
関連記事:中国レアアース輸入額28.1%減 1-9月、国内市場の回復基調で単価上昇 | MIRU
●10月3日
訪米したインドのピユシュ・ゴヤル貿易相と米国のジーナ・レイモンド商務相は重要鉱物を含む多様な分野における協力について覚書を交わした。
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(IR Universe Kure)
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