Fe Scrap Watch2024#18 2025年のスクラップ業界は再び冬の時代

今年も残すところあと1か月弱。。振り返れば今年前半はカーボンニュートラル狂騒で鉄スクラップは下がらない、と
筆者も含めて舞いあがっていた。しかしそれはノーマルな経済状況で、鉄鋼需給も安定していれば、という前提のもと。
今年後半は中国の鉄鋼輸出の洪水にさいなまれ、国内鉄鋼は減産減産。海外向けスクラップの需要も伸び悩みで今は為替の円安に支えられている状況だが、来年はどうなるのか?
まず結論からいえば、スクラップ業界にとっては過酷な1年になるだろう。
相場的にはH2でトン4万円台は維持されたとしても、需要は伸びない。発生量は少ない。国内での取り合いで疲弊。。
今年も扱い量の減退で業績を落としているスクラップ企業が続出。前年比で2=3割扱い量を落としている、とよく聞くが、場合によっては5割近く
落としているところもある。そこにはヤード問題で揺れる?中国系の躍進、台頭がある。
相場は水もの。。ゆえにスクラップ業界の3TOPであるTRE、エンビプロ、イボキンの決算をみても、産廃扱いが多いTRE(つまりはタケエイの仕事)の決算が最も良い。
株価で見てもTREの1651円に対してエンビプロは441円と大幅な差が開いている。
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(TREとエンビプロHDの株価推移)
今年のH2市中実勢の推移は以下
(国際鉄鉱石価格と国内H2市中実勢相場の推移)
(東鉄宇都宮H2価格とH2市中実勢の推移)
今年のH2は2月と7月にトン5万円の大台に乗ったが、7月下旬から急落して現在に至る。
輸出向けは以下がベトナムの鉄スクラップ(HMS)輸入相場と為替の推移。
(ベトナムの輸入スクラップ相場と為替円ドルTTS相場の推移)
ベトナムの輸入スクラップ相場は7月頭のトン400ドルが天井。その後は下落。今は370ドルの相場がついているが買い意欲は高くない。為替の円安でそこそこの相場は維持できている。
しかし中国のビレット含む鉄鋼製品輸出が月間1000万トン、年間で1億トンを超えるような状況ではアジアでの鉄鋼供給過剰は改善するには時間がかかるとみられる。
この中国品の影響で日本の鉄鋼メーカーの大幅に輸出低減を余儀なくされている。仮に中国鉄鋼製品に日本がAD関税をかけたとしても、輸出市場で戦えないとやはり今年のような減産基調は続くとみる。
東京製鐵は今年目標としていた400万トンには全く及ばない。厳しい2024年だったといえよう。来年も同じようなマーケットが続くことになる。
各国が保護主義に走り、AD合戦になり、グローバル経済が終焉、地域経済に移行したとして、やはり日本、韓国は中国の脅威にさらされる。
韓国はすでにその影響を受け、現代製鉄でもPOSCOでも一部の鉄鋼生産工場を閉鎖。韓国は中国製品へのAD関税をかけていない。政治亭な配慮かと思われるが、中国製品はかなり流入している。中国の製品流入を止められない。この韓国の姿が明日の日本だとしたら。。。
鉄鋼の減産は続く。国内でのスクラップ発生は不振。スクラップ流通でも変化はある。
新断系の工場発生は動脈系のメーカーが吸い上げる構図が強まっている。サーキュラーエコノミーの推進で。
解体系は海外資本、つまりは中国系や中東系の方々が先にとっていく。H2やH3の扱いは圧倒的に中国系が多いのではないだろうか?
そのはざまで利益を圧迫されているのが日系のスクラップディーラー、である。」それではなかなか利益が出ないこともわかる。厳しい時代だ。
来年の鉄スクラップ市場は今よりも良くなることはない、ということだけは明確に言える訳です。
(IRUNIVERSE YT)
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