【年末企画・バナジウム】 2年連続で下落、五酸化8年ぶり安値 企業も業績悪化
2024年のバナジウム価格は下落した。五酸化バナジウムは12月下旬時点で2023年末に比べ16.7%安となった。フェロバナジウムも11.1%値下がりした。年間での下落は2年連続。中国景気の低迷が続き、鉄鋼の添加剤としての需要が戻らなかった。
■中国の「鉄鋼の冬」が直撃
過去1年間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
五酸化バナジウムは1月初旬に仲値$6.075/lbを付けたのを年間の最高値に、じり安の展開だった。$5を挟んでの攻防が続き、10月には$4.555まで下げた。2016年11月以来およそ7年11か月ぶりの安値水準となる。
中国では、鉄鋼最大手の宝武集団トップが「鉄鋼の『厳しい冬』は、予想よりも長く、寒く、困難になる可能性が高い」と話したと伝わった通り、鉄鋼業の不振が続いた。
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中国当局は9月下旬から景気刺激策を相次いで打ち出した。しかし金融市場での操作が中心で、バナジウムの使途の中心である不動産建材向け鉄鋼の需要回復には直接は結び付かず、先行きの需要回復への期待がしぼんだ。
過去1年間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
鉄鋼向けのフェロバナジウムはやや下落ピッチは穏やかだったが、やはり年後半のさえなさが目立った。年間高値は3月2日の仲値$29.025/kg。安値は8月末の$25台前半で、2020年末以来の安値を付けた。高値の時点でも$30の上値を突き破れなかった。
■加ラルゴ赤字拡大、南アのブッシュヘルドは工場売却
バナジウム価格の低迷は、世界のバナジウム生産企業の業績を直撃した。カナダのバナジウム生産大手ラルゴが11月12日に発表した2024年1-9月期決算は、売上高が前年同期比35%減の1億ドル、最終損益は3700万ドルの赤字で、赤字額は前年同期の1900万ドルから拡大した。
また、5月にはバナジウムの世界的メーカーである南アフリカのブッシュヘルド・ミネラルズが南アにある中核工場を売却すると発表した。同社は「この売却が成立しなければ事業救済を申請するほかに道はなかった」と釈明した。
関連記事:バナジウムのブッシュヘルド、中核加工工場を売却 価格低迷で財政難に | MIRU
■鉄鋼以外の用途拡大に期待
ただ、足元ではレドックスフロー電池などのバナジウム使用電池への期待は根強い。3月の展示会「BATTERY JAPAN 〜 第16回 [国際]⼆次電池展[春] 〜」では、住友電工が事業に注力するとの方針を語った。
関連記事:住友電工 レドックスフローバッテリーは日本国内、欧州で展開していく方向 | MIRU
バナジウムを取り巻く状況は、過去40年ほどの長期スパンで見ればかなり変わった。もちろん、現在でも鉄鋼の添加剤としての使途が主で、これは中国経済が好転しない限り当面は改善が期待しにくい。しかし、電池向けをはじめとする別の用途が広がり需要が拡大すれば、価格にも押し上げ要因となりそうだ。
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(IR Universe Kure)
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