バナジウムのブッシュヘルド、中核加工工場を売却 価格低迷で財政難に
バナジウムの世界的メーカーである南アフリカのブッシュヘルド・ミネラルズは5月7日、自社ホームページ上で、南アにある加工工場を売却すると発表した。売却額は最大で4060万ドル(約63億円)。同社は「この売却が成立しなければ事業救済を申請するほかに道はなかった」と釈明した。
売却先は南アの金融グループなどにより組成された投資ファンドであるサウザン・ポイント・リソーシズ・ファンド(Southern Point Resources Fund、SPR)。ブッシュヘルドはこの工場の生産を担保に、SPRからの援助として新たに900万ドル受ける。このうち300万ドルは5月3日に既に支払われ、残りの600万ドルを6月末までに段階的に受け取る見通しだ。ブッシュヘルドは2023年秋にもSPRから810万ドルの資金援助を受けていた。
ブッシュヘルドは世界の主要なバナジウム加工施設のうち2つを所有するバナジウム大手として知られる。ロンドン株式市場の新興企業向け市場であるAIM市場に上場している。今回の売却対象となったヴァンケム加工工場では、フェロバナジウムを中心に五酸化バナジウムやバナジウム化学物質などの処理・生産を手掛け、同社の中核工場の1つだった。
しかし、他の投資家からの資金調達がうまくいかなかったうえ、バナジウム価格の低迷で業績が悪化した。この加工工場を巡っては運営子会社を含めて権益の一部売却も進めたが、手続きが滞り、窮地に陥った。
フェロバナジウム価格は2018年に大きく値上がりしたが、その後は長期で低迷している。Mining.comによると、ブッシュヘルドは2019年にヴァンケム加工工場を買収したという。
過去10年間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
プレスリリース(英語):polaris.brighterir.com/public/bushveld_minerals/news/rns/story/rgp2m3r
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(IR Universe Kure)
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