「中国鉄鋼の厳しい冬は予想以上」宝網トップ、先行き悲観 現地報道
広東省ステンレス材料および製品協会が8月18日に伝えたところによると、世界鉄鋼最大手の中国の宝武集団の胡望明主席は同社の上半期の従業員会議で「業界の先行きについて鉄鋼の『厳しい冬』は、予想よりも長く、寒く、困難になる可能性が高い」と話した。価格低迷が続く中国の鉄鋼業界の不透明感が一段と強まっている。
報道によれば、胡主席は1-6月期の中国鉄鋼業界について「2023年の同時期と比較しても、経営環境は困難を増した」と指摘。「足元の業界状況の特徴である『長期サイクル』、『削減』、『構造調整』が鮮明化している」と話した。
中国の鉄鋼「デフレ輸出」が国際問題化して久しい。源の中国では不動産不況や製造業不振の長期化で鉄鋼需要が減退し、鉄鋼価格の下落を招いている。中国の高炉銑鉄価格は8月15日に仲値RMB2950/mtと、2020年9月以来ほぼ4年ぶりの安値を付けた。
過去5年間の中国の高炉銑鉄価格の推移(L8-10-)(RMB/mt)
価格下落の波は世界に広がり、鉄鋼業界の川上から川下まで席巻している。鉄鉱石価格も足元で2021年秋以来およそ3年ぶりの安値水準にある。
過去5年間の鉄鉱石価格の推移(60%Fe$/ton CF ChinaQindao)($/dryton)
8月14には独鉄鋼のティッセン・クルップが4-6月期の最終赤字を発表するなど、影響は外資にも広がる。宝武集団の中間決算発表はまだだが、上場子会社の宝武の1-3月期の純利益は一時的要因を除いた実質で6%の減益だった。1-6月期も厳しい内容が予想されている。
一方、元凶の中国の不動産開発投資は1-7月に前値同期比10.2%減と減少率は1-6月期から悪化した。7月に入っても不動産不況には好転の兆しが見えず、下期の鉄鋼業界の見通しは悪い。
中国の不動産開発投資の推移
(出所:中国国家統計局)
(IR Universe Kure)
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