LME、ニッケル事件から回復 24年出来高は事件前の水準に、在庫も増加
ロンドン金属取引所(LME)は、2022年春に起きた中国企業のショートスクイーズ(空売り締め上げ)に端を発するニッケル相場乱高下事件から回復したと言えそうだ。2024年の取引の出来高は事件前の水準に増え、在庫も増加するなど取引の舞台として再び信頼されている。2025年は香港での倉庫機能拡大に注力し、中国関連の取引を増やす方針だ。
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■1日当たり出来高、24年は水準上げ 事件後の3万ロット→7万ロットに
ロイター通信は1月7日、LMEのマシュー・チェンバレン最高経営責任者(CEO)が「2024年のニッケル出来高が66万4698ロットと前年比59%増え、事件前の2021年の水準に戻した」と明かしたと伝えた。
実際、2024年は1日当たり出来高(ADV)の回復が顕著だった。LMEの月次データでは、同年1月のニッケル先物ADVは5万5845ロットだったが、12月には7万305ロットと水準を上げた。LMEのニッケルADVは、事件直後の2022年4月に4万ロット台まで落ちていた。
同様の傾向は年明け以降も続き、1月のADVは6万越えが続く。1月13日は10万9171ロットと活発だった。
最近のLMEニッケルのADV推移
(出所:LMEホームページ)
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LMEニッケルは在庫も増えている。2024年12月のLMEニッケルの在庫は16万536トン。2023年に一時3万トン台まで沈んだが、2021年夏の水準に回復している。一時は「金属取引所としての地位も揺るがす」と言われたニッケル事件だったが、乗り越えたと言えそうだ。
過去5年間のLMEニッケル在庫の推移
■「香港に倉庫」金属取引の活発化も追い風
ロイター通信は1月14日には、「LMEは香港をアジアのハブ倉庫として機能させる準備の最終段階に入った」と伝えた。2025年の初期にも計画が実現化し始めそうという。LMEの親会社である香港取引所集団(HKEX)はかねてLMEの中国窓口として香港の重要度を拡大する方針だったが、香港は地価が高くて倉庫を置くことが難しい上、LMEの規定である「倉庫は金属の純消費地に置く」に符合せず、実現してこなかった。
しかし、香港は世界最大規模の金属消費地である中国に隣接しているほか、ニッケルを含む工業用金属の取引回復も追い風となり、計画が進展しているとみられている。
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(IR Universe Kure)
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