中国当局は2月4日、タングステンやビスマスなどの輸出規制を含む対米報復措置を発表した。このうち金属については同日から対象鉱物の輸出について、国内業者に対し国務院の管轄部門の審査申請を義務付ける。各地の関係者の受け止めをまとめた。

 

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■中国側…「軍事用が主で民間業者は影響を受けない」

　まずは輸出認可の申請者となる中国側の反応はどうか。上海有色網(SMM)は2月5日のレポートで、「規制の中心は従来と同じく軍事用のタングステン製品であり、総輸出額の10%-20%しか占めていない」との業界関係者の意見を紹介。「民間のタングステン製品の約80%-90%がこの政策によって大きな影響を受けない可能性が高く、全体的な影響は限定的だ」との見方を示した。

　また、中国は2月4日まで春節(旧正月)連休だったため、「まだ業務を再開したばかりの企業が多く、政策の詳細を待ったり影響を分析したりしている最中だ」(SMM)とも指摘した。

 

■米国側…タングステンバーは輸入規制済み、カーバイドは規制対象が限定か

　次に国際市場の反応を紹介する。タングステンは中国が世界の8割を生産する。

タングステンの生産・供給状況

(出所:JOGMEC)

 

　しかし、中国は既に2005年ごろから国内需要の高まりを受けてタングステン鉱石の輸出を制限してきた。このため、西側諸国は既に10年以上にわたり、リサイクル品の利用やベトナム産の活用といった独自のサプライチェーン(供給網)の構築を進めてきた経緯がある。

　加えて、米国は既に2025年1月からタングステンバーなど一部の中国産タングステン製品への輸入関税を25%に引き上げた。この引き上げを巡っては、一部に75％まで引き上げるとの提案もあったと伝わるほどで、米国自体はタングステンを生産していないものの、中国産タングステンに対し、かなり強気の姿勢を示してきた。

 

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　ロイターによると、「米国のタングステン消費の約6割はタングステンカーバイドで、建設、金属加工、石油・ガス掘削などに利用される」という。今回の中国の輸出規制では、タングステンカーバイドは一部で対象外となっている。

 

中国商務省のプレスリリース 　参考1-(一)3: 商务部 海关总署公告2025年第10号 公布对钨、碲、铋、钼、铟相关物项 实施出口管制的决定

 

■長期値上がり見込み株価上昇、品質改善に期待も

　以上のように、子細に見れば米中両国とも自国他国への決定的な打撃は巧妙に回避している感もあり、現時点では関税合戦はジャブといったところ。関係者の間でも「想定よりも控えめ」(SMM)との冷静な受け止めが主流だ。

 

　しかし、タングステン価格の長期の上昇期待は根強い。春節連休明けの初日となった2月5日の上海株式市場で、タングステン生産大手の厦門タングステン株は一時19.97元と、前営業日比2.7%上げた。終値は値を縮めたが、2月6日も1％を超えて上げている。これまでのガリウムやゲルマニウムと同じく、規制によりタングステン価格が長期的に上昇するとの見方が根強い。

 

(出所:上海証券取引所)

 

　中国ではそもそも、タングステン供給には先細り感が強まっていた。鉱山開発が限られている上、産出される鉱石の品質低下も問題視され、中国の鉱石価格は供給ひっ迫感から高止まりしている。

 

過去15年間の中国タングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt)

 

　SMMも「輸出規制は低品質タングステン製品の輸出減少につながる」と指摘。政争の具になるだけではなく、中国国内タングステン産業の改善につながるとの効果も期待していた。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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